金谷ゆうき

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千葉県
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  • 東京学生映画祭

    日大闘争を起こそうとした件で、両親は大学へ呼ばれ、僕は処分を喰らった。

    そして、さらに僕は友達から真剣に怒られた。

    そんなことをしても結果的にはめんどくさいことにしかならないし、両親がかわいそうだし、僕が学校を退学になったら学校がつまらなくなる。
    だから、そんなことはやめろ、と。

    僕は、めんどくさいことになってもいい。それが楽しいんだ。
    両親!? クソ喰らえ!
    僕は君に何もしてあげれていない。
    だから俺が退学になったところで、君には何も影響は無いよ。
    俺がいなくなっても、いつもどおりの楽しい学校生活が送れるさ、と彼女に言い返そうとした。

    だけど今回は言い返すのは止めておいた。



    彼女とは将来結婚しようと話している。
    もちろん冗談でだ。

    だが遅かれ早かれ将来的に僕らは本当に結婚してしまいそうな気がする。最近、頻繁にそう思うのだ。
    それは僕をものすごくおかしな気分にさせる。

    別に彼女との結婚は嫌ではない。
    むしろ光栄だ。
    結婚に対する価値観も似ているし、それ以外にも似ている部分がたくさんある。 僕は彼女を幸せにできる自信があるし、彼女もきっと僕を幸せにしてくれるだろう。

    だけど、僕は彼女を



    4月に東京学生映画祭というものが行われる。
    僕らはそれに向けて映画を作って出すことになった。
    僕は3日で脚本を書き上げた。
    そして、それを彼女に見せた。
    彼女からは、かなりの駄目だしを喰らった。

    彼女には僕の作品のよさがわからないんだ。
    僕の映画の定義『映画で映画をつくってはいけない』ということを教えてやろうと思った。
    映画で映画を作ってはいけないというのは、映画を作るにあたって演出っぽくなってはいけないということだ。
    映画では“自然”な演出が僕の中では要求されているのだ。
    実際にありそうなことを映画にすべきであって、やりすぎた演出などは思想自体から排除すべきなのだ。

    そういったことを彼女に教えてやろうとした。
    だが、そこは逆らわずに彼女に駄目だしされた部分を素直に書き直すことにした。



    学校の掲示板に『8mm映写機、差し上げます』という紙が張られていた。
    僕らはその張り紙を見つけたとき、とても喜んだ。
    8mmで映画を撮ろうとしていて、それを映写する機械がタダで手に入るからだ。
    僕らは記載されていた電話番号に電話した。
    僕の携帯は壊れていて通話することができない。
    だから彼女の携帯を借りて、僕が電話をした。

    電話をすると、声からして50代か60代くらいの男の人が出た。

    僕はその男に用件を話すと、その人は「少し前に来た人にあげちゃった」と言った。
    僕らは一足遅かったのだ。
    そして男は「申し訳ないのだが、掲示板にまだその紙が張られているのなら、剥がしておいてくれないか?」と言った。

    僕らは張り紙を剥がし、粉々にちぎって、学校の屋上からばら撒いた。
    それらは、まるで桜が散っているようであった。



    日大を潰そうとした件で僕は何も成長しなかった。
    子供にもならなかった(なれなかった)し、あいにく大人にもならなかった。

    だが彼女のお説教のおかげで、僕の中で何かが変化しはじめた。

    少しずつではあるが何らかの変化がはじまったのだ。

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  • 青春

    3限に映画特講1の授業があった。

    教室はものすごく人で溢れていた。
    僕は空いている席を探していると、奇遇にもそこで演劇学科の子と久しぶりに再会した。

    その人とは高校の時からお互いなんとなくではあったが知っているような仲だった。

    教室の後ろにちょうど席が二つ空いていたので僕らはそこへ座った。

    授業が始まっても僕らは久しぶりの再会に感極まって長く話していると、先生に静かにするよう注意された。

    僕はしばらく静かにする事にした。
    僕は眠ってやろうともしたが、それすらもやる気を喪失させるほど、つまらないうえにくだらない授業であった。
    僕はこの授業に出席するのは初めてであり、ロダンの地獄の門を想像させるような最悪の授業を受講登録してしまった事にとても後悔した。

    「なんでこんな授業をとっちゃったんだろうね」
    と僕らは互いに自問していた。

    「最近、すごく忙しくて飲みに誘いたいんだけど誘えないんだよ」と彼女は言った。
    「じゃあ今から飲みに行かない?」
    僕は言った。
    「えっ、今から?」
    「うん、今から」
    彼女は僕の唐突な発言に少し驚いていた。
    そして彼女は言った。
    「いいよ」

    僕らは立ち上がり授業をまともに聞いている真面目な人たちを後にし、教室から抜け出した。

    書を捨て、町へでた。

    午後1時など当然飲み屋はやっておらず、僕らは喫茶店に入った。

    そこで僕らはウィスキーを注文した。
    それと、その店ならではというビッグパフェというものを1つ注文した。
    その名のとおり、それはものすごく大きなパフェだった。
    はじめは2つ注文したのだが、店員にすごく大きいけど大丈夫かと言われ1つだけ注文する事にしたのだ。


    僕らはそこでいろいろな話をした。
    高校時代の話、それと恋愛、音楽、ルパン三世やドラえもん、そしてこれから互いに進むべき場所について。

    彼女は大学を卒業したら演劇とは断つと言った。

    僕はそれを聞いてものすごく悲しかった。
    「じゃあなんで大学で演劇を学んでいるの?」と僕は聞いた。
    「高校で演劇部だったし、入るときは少し興味があったから」
    「将来の夢は?」
    「アパレル関係に就きたいと思ってる。 服飾とか好きだし」
    と彼女は言った。
    そして「どう思う? 退いた?」と彼女は付け足した。
    「いや、すごく良いと思う」と僕は言った。


    僕らは店を出た。
    そして別れた。
    彼女は6時から演劇の稽古があるといって学校へ戻っていった。

    外はとても暑かった。
    今日は最高気温が28℃になると言っていた。
    この蒸し暑い空気と頭上一面に広がる青色の空に、僕はものすごく感謝した。

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