クリエイターズバンク TOP 
1万8000人の登録クリエイターからお気に入りの作家を検索することができます。
WORKS
文学・文芸 > 小説
9
View3
Fav1
Commentそのお店は図書館に行った帰り道、公園に寄り道しようと坂道を上っていたときに私の視界を過ぎった。
「歯の専門店」
歯磨き粉を探していた私は、図書館で借りた本を抱えたまま、木製の扉を押して店内に入った。
カランカランと小気味良い音をたてながら入口のベルが揺れた。
いらっしゃいませ、と奥の方から女性の声が聞こえた。
店内の壁一面には歯磨き粉、歯ブラシ、フロス、とにかくありとあらゆる歯にまつわる商品が並べられていた。
しばらくすると色の白い華奢な女性が綺麗な歯を見せて笑顔で声をかけてきた。
「どれでも好きにお試しくださいね」
そう言われて改めて見回すと全ての商品に見本が設置してあった。
私はずらりと並んだ歯磨き粉とそれぞれに書いてある手書きの説明文を真剣に眺めた。
一見して100種類近くあるような歯磨き粉から自分に合うものを探すのは骨が折れる作業だと思い、女性に相談した。
女性は虫歯予防の効果が高く、ホワイトニングにもなるという歯磨き粉を勧めてくれた。
歯磨き粉にしては少し割高だったが、これだけ歯の綺麗な女性が勧めるのだからと、その歯磨き粉を購入した。
「ありがとうございました」
と紙袋に入れられた歯磨き粉を手渡され、お店の外に出ると空が暗く、重たい雲が立ち込めていた。
雨が降って来るだろうと思い、急ぎ足で坂を下っていると、ぽつぽつとおおぶりの雨水が降ってきた。
降ってきたと思うが早いか、途端に土砂降りの雨になっていた。
私は走って家に帰った。
ずぶ濡れのままバスルームに駆け込んでシャワーを浴びてでてくると、早速歯磨き粉を試してみようと思った。
しかし、紙袋が見当たらない。本を入れた鞄の中も探したがやっぱり見つからない。
外は土砂降りで今引き返す気にもなれず、いずれ出てくるだろうと諦めた
一週間経っても見付からなかったのでまたお店にいってみることにした。
図書館の先の公園に向かう坂道を上っていった。
歯の専門店は見付からなかった。公園までの坂道にはマンションや一軒家などしか見付からなかった。
どこかに消えてしまったみたいだった。歯の綺麗な女性も一緒に消えてしまったみたいだった。
とうとう私は歯磨き粉を手に入れることが出来なかった。
歯の店
by あかり
そのお店は図書館に行った帰り道、公園に寄り道しようと坂道を上っていたときに私の視界を過ぎった。
「歯の専門店」
歯磨き粉を探していた私は、図書館で借りた本を抱えたまま、木製の扉を押して店内に入った。
カランカランと小気味良い音をたてながら入口のベルが揺れた。
いらっしゃいませ、と奥の方から女性の声が聞こえた。
店内の壁一面には歯磨き粉、歯ブラシ、フロス、とにかくありとあらゆる歯にまつわる商品が並べられていた。
しばらくすると色の白い華奢な女性が綺麗な歯を見せて笑顔で声をかけてきた。
「どれでも好きにお試しくださいね」
そう言われて改めて見回すと全ての商品に見本が設置してあった。
私はずらりと並んだ歯磨き粉とそれぞれに書いてある手書きの説明文を真剣に眺めた。
一見して100種類近くあるような歯磨き粉から自分に合うものを探すのは骨が折れる作業だと思い、女性に相談した。
女性は虫歯予防の効果が高く、ホワイトニングにもなるという歯磨き粉を勧めてくれた。
歯磨き粉にしては少し割高だったが、これだけ歯の綺麗な女性が勧めるのだからと、その歯磨き粉を購入した。
「ありがとうございました」
と紙袋に入れられた歯磨き粉を手渡され、お店の外に出ると空が暗く、重たい雲が立ち込めていた。
雨が降って来るだろうと思い、急ぎ足で坂を下っていると、ぽつぽつとおおぶりの雨水が降ってきた。
降ってきたと思うが早いか、途端に土砂降りの雨になっていた。
私は走って家に帰った。
ずぶ濡れのままバスルームに駆け込んでシャワーを浴びてでてくると、早速歯磨き粉を試してみようと思った。
しかし、紙袋が見当たらない。本を入れた鞄の中も探したがやっぱり見つからない。
外は土砂降りで今引き返す気にもなれず、いずれ出てくるだろうと諦めた
一週間経っても見付からなかったのでまたお店にいってみることにした。
図書館の先の公園に向かう坂道を上っていった。
歯の専門店は見付からなかった。公園までの坂道にはマンションや一軒家などしか見付からなかった。
どこかに消えてしまったみたいだった。歯の綺麗な女性も一緒に消えてしまったみたいだった。
とうとう私は歯磨き粉を手に入れることが出来なかった。
published : 2014/01/30
