あかり

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あかり

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THE END

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THE END

by あかり

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    そんな状況で、母を待っていた。
    一杯二百円の安い珈琲を飲みながら本を読んで時間を潰していた。しかし、目の中に異物が入っているようで落ち着かない。私の眼球の表面を小さな虫が這いまわっているんだと思い、手鏡で確認するが何も見つからない。
    目を瞑っていれば痛みも違和感もない。物語に集中できず、煙草に火をつけた。
    目の中の誰かに邪魔をされぬよう、目を閉じたまま大きく煙を吸い込んだ。煙はゆらゆらと私の体内に吸収され、肺へ染み渡り、胃や腸までも犯していった。
    チリチリと音が聞こえて、髪が燃えたのかと目をあけると、斜め後ろでEがポテトチップスをむさぼっていた。紛らわしさに辟易しながらも、私は懸命に毒素を充満させていった。
    一本目の煙草を吸いきってもまだ時間があったので、物語の続きを始めようとページを開いた。
    古い本だから、書き込みが多く、そのページはいろいろな太さや字体のNの字で埋め尽くされていた。
    一つの単語を読むごとにNの字が邪魔をして。ストーリーがややこしくなっていった。もしかしたら、私の目が原因かもしれないと、満足に読み進むこともせず目を閉じ、また煙草に火を灯した。
    深く染み渡る発がん物質を残さずに体内へ吸引しながら、目を閉じて別世界へトリップしそうな脳を懸命につなぎとめていた。
    なんと穏やかで素晴らしい暇つぶしなんだろうと、くつろいでいると
    「寝てるの?」
    と声を掛けられた。
    薄目を開いて飛び込んできたD氏の横っ面を思い切り引っ叩いてしまった。
    私は悪く無いと思う。 THE-END-

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    そんな状況で、母を待っていた。
    一杯二百円の安い珈琲を飲みながら本を読んで時間を潰していた。しかし、目の中に異物が入っているようで落ち着かない。私の眼球の表面を小さな虫が這いまわっているんだと思い、手鏡で確認するが何も見つからない。
    目を瞑っていれば痛みも違和感もない。物語に集中できず、煙草に火をつけた。
    目の中の誰かに邪魔をされぬよう、目を閉じたまま大きく煙を吸い込んだ。煙はゆらゆらと私の体内に吸収され、肺へ染み渡り、胃や腸までも犯していった。
    チリチリと音が聞こえて、髪が燃えたのかと目をあけると、斜め後ろでEがポテトチップスをむさぼっていた。紛らわしさに辟易しながらも、私は懸命に毒素を充満させていった。
    一本目の煙草を吸いきってもまだ時間があったので、物語の続きを始めようとページを開いた。
    古い本だから、書き込みが多く、そのページはいろいろな太さや字体のNの字で埋め尽くされていた。
    一つの単語を読むごとにNの字が邪魔をして。ストーリーがややこしくなっていった。もしかしたら、私の目が原因かもしれないと、満足に読み進むこともせず目を閉じ、また煙草に火を灯した。
    深く染み渡る発がん物質を残さずに体内へ吸引しながら、目を閉じて別世界へトリップしそうな脳を懸命につなぎとめていた。
    なんと穏やかで素晴らしい暇つぶしなんだろうと、くつろいでいると
    「寝てるの?」
    と声を掛けられた。
    薄目を開いて飛び込んできたD氏の横っ面を思い切り引っ叩いてしまった。
    私は悪く無いと思う。 THE-END-

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published : 2013/05/12

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