あかり

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喪中

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喪中

by あかり

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    生命有る者も無い物も含めて、これまで出逢った中で一番嫌いな奴が死んだ。
    通夜の知らせが届き、もうこの世で逢うことはないのだと知った。その喜ばしい招待状を前に行くべきなのか迷った。
    喪に服す気は更々ない。お悔みなら、死ぬ前の愚行を彼自身に悔んでほしいところだ。言いたいことは山ほどあるが、最期の挨拶もしたいとは思わない。
    だが迷った末に、行くことに決めた。
    理由は特にない。強いて言うならば、明日は予定がなく、イベント事は嫌いじゃないからだ。
    弾んだ気持ちでお風呂に入り、髪を乾かしながらアイスクリームを食べようと思っていた。こんな遠足前の様な落ち着かない気持ちじゃとても寝付けない。私はTシャツとジーンズに着替え、外に出た。夜風がひんやりと心地よかった。
    サンダルを引きずりながらコンビニまで歩いた。歩きながら私は電灯に群がる羽虫の様だと思った。明るいコンビニでソーダ味のアイスキャンディーとバニラ味のアイスクリームを買い、振り回しながら家路に着いた。
    帰るとジーンズを脱ぎ捨てテレビをつけて買ってきたアイスを交互に舐めた。
    そしてそのまま歯も磨かずに眠りについた。
    翌朝と言ってもお昼の12時頃だったが、目が覚めて、顔を洗って歯を磨き、菓子パンを食べて着替えた。
    真っ赤なワンピースに白いジャケットを羽織った。だってお祝いだから。
    夕方になり、会場へ向かいながら鼻歌を歌っていた。昨日コンビニで流れていた曲。

    しかし、勿論門前払いだった。こんなに晴れやかな服を着て胸にブローチまで付けたのにひどいと苛々しながら歩いていると前から真っ赤な口紅の大柄な女性が歩いてきた。
    すれ違って顔を見ると髭面のおっさんだった。
    私は振り向いて、広い背中にツバを吐きかけてやった。

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    生命有る者も無い物も含めて、これまで出逢った中で一番嫌いな奴が死んだ。
    通夜の知らせが届き、もうこの世で逢うことはないのだと知った。その喜ばしい招待状を前に行くべきなのか迷った。
    喪に服す気は更々ない。お悔みなら、死ぬ前の愚行を彼自身に悔んでほしいところだ。言いたいことは山ほどあるが、最期の挨拶もしたいとは思わない。
    だが迷った末に、行くことに決めた。
    理由は特にない。強いて言うならば、明日は予定がなく、イベント事は嫌いじゃないからだ。
    弾んだ気持ちでお風呂に入り、髪を乾かしながらアイスクリームを食べようと思っていた。こんな遠足前の様な落ち着かない気持ちじゃとても寝付けない。私はTシャツとジーンズに着替え、外に出た。夜風がひんやりと心地よかった。
    サンダルを引きずりながらコンビニまで歩いた。歩きながら私は電灯に群がる羽虫の様だと思った。明るいコンビニでソーダ味のアイスキャンディーとバニラ味のアイスクリームを買い、振り回しながら家路に着いた。
    帰るとジーンズを脱ぎ捨てテレビをつけて買ってきたアイスを交互に舐めた。
    そしてそのまま歯も磨かずに眠りについた。
    翌朝と言ってもお昼の12時頃だったが、目が覚めて、顔を洗って歯を磨き、菓子パンを食べて着替えた。
    真っ赤なワンピースに白いジャケットを羽織った。だってお祝いだから。
    夕方になり、会場へ向かいながら鼻歌を歌っていた。昨日コンビニで流れていた曲。

    しかし、勿論門前払いだった。こんなに晴れやかな服を着て胸にブローチまで付けたのにひどいと苛々しながら歩いていると前から真っ赤な口紅の大柄な女性が歩いてきた。
    すれ違って顔を見ると髭面のおっさんだった。
    私は振り向いて、広い背中にツバを吐きかけてやった。

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published : 2013/05/12

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