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2009/03/26
「ケモノヅメ」
監督:湯浅政明
キャラクターデザイン:伊東伸高
製作マッドハウス
単独にして野原しんのすけはついに新興大人帝国へ進撃の歩を繰り出し、高々とそびえる最上階へむけて非常階段を必死の形相で駆け上がり続ける。これは覚悟をきめた突撃兵の全力疾走のモニターイメージというものを、単なる網膜像動画としてではなく知覚像動画そのものを有用した希有な名シーンとなった。
アニメーター湯浅政明が手掛けたうちのひとつ「クレヨンしんちゃん大人帝国の逆襲」に用いられた知覚像的な手法に創意工夫がなされ、以降の映画「MIND GAME」(STUDIO 4℃)や「ケモノヅメ」などさらにもまして意欲作となっている。
アニメーションの手法のひとつである知覚像、つまり
(1)オプティカルフロー(集中線、効果線、移動線など)や、
(2)大きさの恒常性をより知覚的に改造する遠近法をほどこす手法(望遠レンズの映り込み背景と、超広角レンズの映り込み背景など、遠くにある背景側のみにおいて異なる画角を矢継ぎ早に入れ混ぜるなど)や、
また(3)搭乗撮影や流し撮影などにみられる画では動き続ける背景に対してもつ両眼視差による遠近法(近景、中景、遠景などを別々の空間を異なる速度で動かす)をさらに知覚的に工夫しているなど、
他にも様々あるがこうした作画空間の中にさらに、最近の作ではこれらに加わったのが、光学的空間遠近法、それが実写映像との合成だ。
アクションの動画のカットやまた風景カット、表情カットなども合わせ加工をほどこし、様々にまじえ、ストーリーの骨肉の争いに乗じて知覚象的実写を合成をするなどが実現されている。
カメラ自体が走る、飛ぶ、落ちる、揺れる、激突するなどして、重力と力学的法則を伝えているVFX迫真映像にも精通する手法もふんだんに盛り込まれた、激走ホラー恋愛アクションエイリアン・・・・つまり今やオールジャンルと成ったSFとしての期待作である。
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続く
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2009/03/25
「ペツェッティーノ」
レオ=レオニ(Leo Lionni)著
ほんとうに今の今まで疑いもしなかった。ええ年こいて未だ自由人気取りの独居族であるペツェッティーノは今、人生の際に立ちとても重大なことに気が付いてしまう。
過去幾多の稚拙な振る舞い、その厚顔無恥を遺憾し真実を求めてホームグラウンド関西を離れ自分探しの旅に出奔する冒頭、いきなり自分という存在っていうのはどういうものなのか標準語で静かに語り出した。
実のところ「私」という存在とは、「私」より小さな無数の部品によって構成されているのだ。したがって「私」という部品がたくさん集まり、より大きな集合体となる存在なのだ。
つまりこうしたホロン構造のうちにあり、「自分」とはこのような都市高層ビルの何階層の次元かに入居している部分であるのだ、などどといってペツェッティーノは突然自答をし、それを杞憂など露程も感じず、その真相を追求する悟達の書をもとめて、すべての人々に究極の問いを投げかけ始める。
未曾有の大不況のなかで親親戚兄弟その他どのような血縁とも縁なき衆生であるペツェッティーノはまるで判を押したような不思議ちゃんの様子を装って二者会談を申し出る勇ましい問答の姿、その一球入魂にして誰もが強く心を打たれる名作。素晴らしい絵本である。
http://www.kogakusha.com/leo/leo008.htm
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