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2014/01/28
ハワイ島で、私は日本語が話せるアメリカ人の ガイドツアーに参加した。
ツアーが終わって、ガイドさんが団体客を空港まで送った後、私は、最後の1人になってしまった。
そのままホテルまで送ってもらおうとした時、
ツアー中にずっと気になっていたことがあって、聞いてみた。
ガイドさんが車でかけていたハワイの音楽だった。
どの曲も、聴いていて気持ちが良かった。
すると、
「ライブハウスに今から連れてってあげましょうか?」
私はうなずいて、ガイドさんと一緒にライブハウスに行くことになった。
田舎町なので、ライブハウスは少ない。
3軒回ったが、あいにく日曜日ということもあって
ライブはやっていなかった。
残念だったけれど、連れて行ってくれたことに感謝をし、 そのままバーで、彼といろんな話をした。
彼は、興味のあることとか雰囲気とか、自分とちょっと似ている。
話が弾んで、彼は
「じゃあ、プライベートツアーをしよう!」
と言って、店を出ると
夜のハワイ島をドライブしながら、
滝に連れて行ってくれたり、熱帯雨林を見せてくれたり。
昼間のガイドの時と同様にハワイ島の良さを説明してくれた。
移動中、
「私、ハワイに来てまだ虹を見ていないから、明日は、最後の日だから虹が見れるといいなぁー。」
「月が出てるから、今から見れるかもしれない。」
「え?今から虹が見られる?夜なのに?」
「そう、夜の虹。ナイトレインボー。」
彼はそう言って
「ブラック・サンド・ビーチ」という
真っ黒な砂地の海岸に連れてってくれた。
真っ暗闇の中、海は月明かりに照らされて、輝いていた。
波の音とともに、「コーキー、コーキー」と
高く、心地良い鳴き声が聞こえる。
「鳥かな?」と彼に聞くと
「コキ・カエル。鳥みたいに鳴くカエルだよ。」
ハワイのカエルの鳴き声は、とても美しくて、ずっと聞いていたくなった。
彼は言った。
「ここは、虹を見る絶好の場所だよ。 虹は日中以外にも、夜でも見えるんだよ。
月の明かりに照らされて、今日は虹が現れるかもしれない。 待ってみようか。」
私は、心が揺さぶられて、裸足になって黒い砂浜を歩き、 虹が現れることを祈りながら、しばらく大きな空を眺めていた。
彼は、時々暗闇でこけそうになる私を助けながら見守っていてくれた。
彼との別れ際に、私は、
「いいお土産ができて良かった。 今日は、どうもありがとう。
ナイトレインボーは見れなかったけど、 この景色や音を頭に焼き付けて日本に帰るね。」
と彼に感謝の気持ちを伝えて、ホテルの部屋に帰った。
充実した長い一日が終わった。
今日見たもの全てが、頭から溢れ出して、眠れなかった。
ハワイ島を発つ日の朝がやってきた。
朝日が出る前、ホテルから見えた窓の景色は
ブルー、ピンク、イエロー、オレンジ、パープル。
まるで、虹みたいな空の色だった。
私は、虹が見たいと思った時、
昨日、目に焼き付けた情景をすぐに思い出すだろう。
ナイトレインボー。いつか見れるといいな。
もう一度ハワイ島に行って。