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2010/01/10
*下記は、私が2007年の沖縄平和芸術祭記念作品集に寄稿した文章です。2010年現在、他では読むことが難しくなっているので転載しました。
書表現とデジタル書アートの魅力
デジタル書作家 山本KOU
人間が一番最初に行う自己表現とは、多くの場合、それは「産声」である。
アートには様々な定義・解釈が存在するが、自分の意志を意識から引っ張り出し、現実世界に顕現させる行為、即ち「自己表現」という事をアートの意義の一つとすることに、異論は少ないだろう。
産声を発する瞬間、人は心にある「意志」を外界に発する術を知る。そのような意味で、発声というものはプリミティブな自己表現のひとつと言える。
その「発声」を書き記し残すために、文字は生まれた。「書き記す」ということは、「発声」に含まれる時間軸を取り払い、現実に存在する形状として具現化する行為である。
書アートの魅力の一つに、その失われた時間軸を鑑賞者の中でどれだけ甦らせる事ができるか、という事がある。単なる活字フォントでは、自分の伝えたい文字の意味・意図を、流暢に表現できない。故に、書アーティスト達は思いつく限りのあらゆる方法でもって「書く」のである。
デジタル書とは、書文字とCG彩色を組み合わせた新しい書アートの可能性である。書道では、書体や書風、様々な用具などを場合によって適切に使い分け、書を豊かに奏でるが、デジタル書では、CG彩色を用いてこの演奏にさらに彩りやイメージを手軽に付与することができる。
誰でも、自分の表現したい感情を持っている。書文字は、その感情・意識を最も簡明に表現できる手段のひとつであるが、そこにCG彩色の技法を加える事で、そのイメージはさらに強烈な表現力を持つ。
書道と違い、デジタル書では書に関して特に高い技法を求めない。基礎的な書とCGの知識さえあれば、誰にでもそれなりのクオリティを持った作品を作ることができる。無論、自分の表現にバリエーションを求めるのであれば書やCGの勉強は必要だが、必要に応じて行えば良いだけに過ぎない。
技術の巧拙や年齢を問わず、自分が伝えたいイメージ・旋律を手軽に書アートで表現できるということ。それが、デジタル書という分野であり、魅力なのである。