坂の女
2010/10/05
彼女は
尼ケ坂にいる
女性の幽霊
こないだ尼ケ坂KWAIDANにて
尼ケ坂にまつわる怪談の中の主人公
カフェ尼ケ坂は
モダンでおしゃれなギャラリー兼カフェ
ただ
ビルのフォルムが「墓のようだ」とよく言われるらしい
土地の名をそのまま看板に携えた
そのカフェの道をまっすぐ南に向かうと
その名の通りの坂が存在する
その坂だけ
なぜか異様なのだ
私も最初に通ったときは
本当に目が奪われたほど
坂の中腹あたりを、道の両脇から大きなクスノキが
まるで腕で坂を包むように
トンネル状になっている
その木のある森で
昔身分差で結ばれなかった男女の逸話あり
武家の男性、商人の美しい娘の恋
そして子どもを身ごもった末の破局
苦痛と未練を捨てきれぬ娘は
頭をまるめ、出家する
尼になれども男を忘れきれない娘の決断は
「母」でも「人間」でもなく
「女」としての自分を選ぶことだった
そして、その森の中で命を絶ったそうだ
後に息子も母を捜し、森の中で血迷い、絶命
昔の話し
身分差の恋、そして娘の苦労を
私は想像することもできない
きっとご飯もろくに喉を通らず、眠れず
抱えきれないほどの想いを抱いたまま
それでも生きなくてはいけないこと
現代よりもよっぽど、酷なことだったのだと思う
尼ケ坂の向いの駅「尼ケ坂駅」
駅では昔から女の噂が絶えないと言う
通り過ぎたホームに
女が
立っている
その女を目にしたものは決まってこういうのだそうだ
「あの女は死んでるんじゃない
"生きていない"んだ」と
怪談とは、怪奇とは
現実と非現実の淡い部分に触れる行為
一方で墓と呼ばれるカフェ
オーナーさんは「一種のとむらい」と言った
打ち合わせに偶然居合わせた私に
この坂の女を描いてみないかと提案された
私はその話しを聞いて
心底描きたいと思った
結果この絵が完成
当日イベントの後半に
スクリーンセーバー的に、動画も作成し
うっすらと浮かんだり出たりする女を
会場で流してもらえることになった
尼の涙のように雨が降る当日
イベントが終わると共に
雨も降り終わり、外には少し肌寒い風が吹いていた
カフェを出ると坂の森が
夜の漆黒に浮かぶ
怖い、とかそういうのだけではなく
くやしかっただろう、つらかっただろう
どこにその恨めしさをぶつけたら分からなかったのだろう
坂の女への
私もとむらいの一端を担うことができただろうか
そうだといい
そうだといいと思う
名古屋港アートフェスティバル
10月1日~10月31日
http://www.nagoyaaqua.jp/muse/topi/20101001/index.html
jemini Tシャツ期間限定発売(~10月31日)
http://www.jemini.jp/products/list.php?category_id=15
KELLy 占いページイラスト担当
http://kelly-net.jp/
美容室Kate ビジュアル総合プロデュース
http://www.kate-beaute.com/
http://www.watanabe-haruna.com/
ログインするとコメントを投稿できます。