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2012/11/01
『ねえ、ステファニー、あの唄を歌ってくれよ』
レディになる前の事を話してほしいんだ。
誰にも話せないで膝を抱えてるあの娘に伝えるから、そっと僕の耳元で囁いてくれよ。
あの娘には覚悟が足りないんだ。飲めや歌えやのオードブルじゃ食欲をそそるだけ。ほんのちょっぴりでお仕舞い。 ワクワクして言葉も弾む、君はメインデッシュ。
テーブルに乗った瞬間、どう食われようとなんと云われようとスタイルを変えずに貫くだけの味を持たなくちゃいけないんだ。 『ねえ、おじさん、そこでそのスパイスはたさないで!』って云えるだけの存在感。
どんなに有名店の厨房でもシェフは君を最高においしくさせる為の努力をしなくちゃならない。なのに君といったら変な作り笑いを浮かべてひたすら自分を隠そうとするんだ。 時には、『そこは、ダメよ』ってはっきりと拒絶しなくちゃいけない。 裸になって、『あたしのここを見て!』ってスポットライトを浴びなくちゃダメなんだ。
君が寿司のネタになろうが、しゃぶしゃぶの赤身だろうがどうでもいいんだ。君は何者で何を伝えたいのかはっきりしてよ。我がままな客のオーダーにいちいち全部答える必要はない。 『ビール?白ワイン?それとも抹茶でいい?』って聞くだけでいいい。君もNoを突きつける自由があるんだ。
君を食ったこともない輩に限っていろんな噂をした。悪意をもってね。ブツブツいいながら、薄汚れた羽をもつ仲間を扇動さえしてね。 君は簡単にそれまでの人の習慣さえ変えてしまった。君はいつも追われ始め、君の家族も囚われ生簀にぶち込まれた。豚のように太らされ、脂ぎった肉体になるよう鞭打たれる。だから生卵をぶつけられる位にっこり笑って、『有難う』って言ってやればいい。涙は心で流してよ、君に塩味はにあわないから、、、。
出来上がりのタイマーが10セカンドを切った。 さあ、君はどうするんだ。
未だギリギリ間に合うだろう、ガーベッジボックスに逃げ込むこともね。
カウントダウンは続く。他に道があるかい? 7、6,5,4、 残り3秒だ!!
、、、WELDONE !!
僕はそっとイヤホンを外した。
*鋭利な刃先でスリムになった君は(洗練されたんだ)、レディの唇に吸い込まれた*