岡田千夏

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京都府京都市

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  • お節の番人

     あしたのお節の準備をしていたら(といっても、ほとんど既製品を詰めるだけ…)、みゆちゃんふくちゃんが寄ってきた。かまぼことか煮魚とか、そういう魚介類の匂いが気になるらしい。
     あまり食に関心のないみゆちゃんはただ見ているだけだけれど、ふくちゃんはそうはいかない。お重の中に鼻を突っ込んで来くるので、仕方なく冷蔵庫から猫用の乾しカマを取り出して、猫ちゃんたちこっちですよ〜と隣の部屋へおびき出したら、ふたりがぞろぞろ並んでついてきた。
     しかし食べ終わるともとの木阿弥。ふくちゃんにつまみ食いされないよう、ちょっと詰めるごとにふたをしなければならない。棒だらを詰めてふた、穴子のごぼう巻きを詰めてふた、栗きんとんを詰めてふた。ふたを開けているあいだはふくちゃんがぎゅうぎゅう鼻を突っ込んでくるから、そのおでこを抑えながらの作業である。お重を閉めているときにも、ふくちゃんはふたのすきまに鼻を押し付けたり、前足を乗せてみたりとなかなかそばから離れない。
     結局ちくわをひとかけらあげたらそれで満足したらしく、足元のストーブの前で、嬉しそうな顔をして念入りに顔を洗っていた。

        *    *    *    *    *    *

     そんな食いしん坊でおっちょこちょい、甘えん坊のふくちゃんが、今年は家族の一員になってくれました(みゆちゃん、お姉さん役ご苦労さんです)。
     実家では初夏の頃、ポチとちゃぷりが亡くなりました。その後、新しい外猫たちが訪ねてくるようになりました(その猫たちについてはまたおいおい述べようと思います)。
     今年も、ゆく猫、くる猫がありました。

     今年も一年間、作品を見てくださったり、ダウンロードしてくださり、どうもありがとうございました。来年も、どうぞよろしくお願いいたします。
     よいお年をお迎えください。

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  • お猫サマからカモメのみなさんへおすそ分け

     師走だというのにとても暖かな日和だったので、ユリカモメのえさを持って鴨川へ行った。
     水辺は風が冷たいかと思ったけれど、枯れた芝生の上には暖かな陽光が降り注いで、風もなく、ゆっくりと散歩を楽しむ人たちの姿があった。
     カモメたちが群れを作って羽を休めているあたりの川岸に立って、鞄の中からパンの入った袋を取り出すと、カモメたちはもうすぐにそれと察して一斉に川面を離れて飛んできた。ぎゃーぎゃー鳴いて頭の上を旋回するカモメの、水かきがついた足の先から細かい水滴が落ちてきた。
     パンを千切って高く放り投げると、ちょうど旋回してきたカモメがうまく空中でキャッチする。パンをもらえたカモメももらえなかったカモメも、長い時間空の一点でホバーリングするのは苦手だから、また次のパンを狙って一周まわってくる。でもそのうちぐるぐる飛ぶのに疲れたのか、みんな川岸に降り立って、ハトみたいに地面にパンを投げてよこせとねだり出した。実際ハトも数羽一緒に混ざっている。
     持ってきたパンの耳はなくなってしまったので、次にキャットフードを取り出した。カモメはもともと魚や小動物を食べる肉食性の鳥なので、キャットフードも食べるだろうと思って試しに持ってきたのだが、予想通り、好評であった。鴨川のユリカモメは、人からパンやお菓子をもらうことが多いだろうが、あんまりパンばっかりじゃ偏食にないかしらと思う。その点、キャットフードの成分はカモメの本来の食べ物に近いし、食塩や添加物も抑えられている。
     年末年始は寒くなるようだけれど、少し寒気が緩んだら、またキャットフードを持って川へいこうと思う。

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  • 小掃除

     冬休みに幼稚園の友達がうちに遊びに来てくれるというので、ちょうど大掃除の時期でもあるし、これを機会にと家の中を少しずつ片付けたり掃除したりしている。
     きょうは、台所の流しの、普段あまり掃除をしないところをたわしでごしごし擦った。古い家なので錆が出ていたりして、完全にぴかぴかというわけにはいかないけれど、それなりにきれいになった。
     きれいになると、気分がいい。調子に乗って、そこいらにある鍋なんかも磨きはじめた。いままでの不精がばれてしまうけれど、鍋のふたが買って来たばかりのようにぴかぴかになって、その鍋のふたに当たった電球の光が壁のタイルに反射して、光の輪ができたので驚いた。
     普段からこまごま掃除をすることが習慣になればいいが、なかなか難しい。とくに私の場合、磨くとなったら流しや鍋やと細かいところに凝りだして、挙句、すぐに疲れて飽きてしまうから、結局家全体まで掃除が行き届かないというのがたいていである。

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  • 蓼食う猫

     切花売り場にスイセンが並んでいたので、買って来た。いい匂いがするので、部屋に活けておきたいところだけれど、すっと伸びた葉っぱは猫草に似ていて、みゆちゃんふくちゃんがかじると毒だから、去年と同様トイレに飾っている。トイレの中で、いい香りをさせている。
     スイセンみたいな単子葉植物の細長い葉は猫草と間違うかもしれないが、全然形の違う長くない葉っぱなら大丈夫だろうと思って、また現にみゆちゃんはそんなものはかじらないから、濃い赤色のバラの花を机の上に置いていたら、ふくちゃんが葉をかじった。バラの葉は縁がぎざぎざした丸っこい形で、猫草とはかけ離れている。
     いくらふくちゃんがいい加減な性格でも、と思ったが、ふくちゃんは本当にいい加減で、庭に生えている草でも、みゆちゃんはエノコロ草みたいな先の尖った細長い葉っぱしか食べないけれど、ふくちゃんは、赤い蓼の花の穂のようになった先っぽをむしゃむしゃとまるかじりして全部食べてしまったりするから、知らずにいけないものを食べてしまわないか心配である。
     今年も華やかなシクラメンの鉢がひとつ欲しいと思っていたけれど、丸いバラの葉っぱをかじってしまうふくちゃんなので、買えないでいる。

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  • 「ねこのきもち」1月号に絵を描きました

    2008/12/10

    お知らせ

    12月10日発行の、「ねこのきもち」1月号の特集「愛猫を幸せにする10のこと」(p20〜p29)のイラストを担当しています。
    飼い主と遊ぶ猫など、13点が掲載されていますので、ご購読されている方、ぜひ見てくださいね。

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  • ブルーなみゆちゃん

     みゆちゃんの元気がなかった。呼んでみても頭をなでてもつまらなそうにしているし、大好きな乾しカマもいらないと言う。テーブルの上に座っている猫背のうしろ姿も何となく暗い。
     ふくちゃんへの態度も遠慮しがちだ。以前なら、キャットタワーの最上階をふくちゃんにとられると、下の段から背伸びをして猫パンチしたり軽く噛み付いたりして奪い返していたのだが、いまはただじっと座って、一段下に甘んじている。というよりも、観察していると、むしろふくちゃんに最上階を譲っているようなのである。
     みゆちゃんを最上階に乗せてあげようと、食いしん坊のふくちゃんを乾しカマで釣ると、案の定「にゃー」とキャットタワーから駆け下りてきた。最上階を取り戻すチャンスなのに、なぜかみゆちゃんは下の段に座ったままこちらの様子をうかがっていて動こうとしない。あっというまに乾しカマを食べてしまったふくちゃんは、今度はキャットタワーには戻らないで、ソファの上のかごの中に入った。みゆちゃんはそれを見てから、最上階に腰を下ろした。ふくちゃんにとても気を使っているようなのである。しかしすぐにふくちゃんがかごの中から出てきてキャットタワーに登りはじめたので、また自分から上の座を譲ってしまった。
     いつのまにかみゆちゃんがふくちゃんに負けて上下関係が出来てしまったのかしらとも思ったけれど、普段の遊びを見ている限りは、対等に取っ組み合ったり追いかけっこしたりしていて、ふくちゃんが優位にあるようにも思えない。
     とにかくキャットタワーはとられてしまったから、かごの中で寝たらどうとかごの中に入れてみても、お気に入りだったはずなのに、ふくちゃんのにおいがついていていやなのか、すぐに出てきてしまった。
     最上階で足を伸ばしてすやすや眠るふくちゃんの下で、肩をすぼめるように背を丸くして、目をつぶって座っているみゆちゃんを見ると、落ち着いて眠れる場所もなくて、睡眠不足になるのではないかと可哀相になった。
     そこで、二匹が入って眠れるようにとちょうど買っておいたキューブ型の猫ハウスを当面はみゆちゃん専用とすることにして、中にみゆちゃんのお気に入りの毛布を敷き、丸い出入り口の穴もフリースの膝かけでカーテンのように覆って、ドライヤーの温風でしっかり暖めてからみゆちゃんを招じ入れると、これがとても気に入ったようである。ふくちゃんが家に来てこの方、みせたことのなかったようなリラックスした表情で、本当に気持ちよさそうに丸くなった。のどもごろごろ鳴らした。ふくちゃんが来てから、みゆちゃんはあまりのどを鳴らさず、私がなでてもちっとも嬉しそうにしなくなっていたので、猫友達ができたからもう人にはそっけなくなったのかしらと寂しく思っていたのだけれど、そうではなくて、表面上仲よくしているように見えても、みゆちゃんはそれなりに慣れない猫づきあいに気を使っていて、ひとりでゆっくりできる個室が欲しかったのではないかと思う。
     長い時間、新しい猫ハウスの中でぐっすり眠ったあと、出てきたみゆちゃんは、前のように私が差し出した手のひらに、後ろ足で立つようにして顔をこすりつけてくれた。
     そんなみゆちゃんの苦労などつゆ知らず、子猫のふくちゃんは無邪気そのものという顔をして眠っている。
     みゆちゃんがふくちゃんに邪魔されずにひとりで眠れるよう、二人掛けのソファの上にはキューブ型ハウスと並べてふくちゃん用のかごも置いてあるから、もう人は誰もソファに座れなくなってしまった。

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    • 岡田千夏

      2008/12/19 00:24

      私もふくちゃんを迎えるにあたって、かなり悩みました…
      いまはみゆちゃん、ちょっと元気ありませんが、ふくちゃんとの愛称はそんなに悪くはないと思うので、もう少し待ってみたいと思います。

    • 2008/12/18 13:59

      あたらしい仔猫いいなーと思っていたけど、やはり先住猫は気を使うんですね。

      ウチも新しい仔猫を迎えようと思っていましたがもう少し考え直してみます。
      うちの今の猫もかなりデリケートな性格なので。

  • ふくちゃんの寝相

     子供は代謝が大きいから暑がりで、私がフリースやらカーディガンやら着込んでいるときにも、半袖のTシャツ一枚でうろうろしている。
     子猫のふくちゃんについても同じことが言えるかもしれない。かごの中で眠るとき、最初は丸くなっているのだが、そのうち暑くなって来るのか、しばらくすると手足を伸ばして長くなって眠っている。これがみゆちゃんだと、いつまでも熱が逃げないよう丸くなって眠っている。
     手足を伸ばすだけじゃなくて、仰向けになって足を投げ出し、お腹を上に出して眠っていることもある。こんな無防備な格好で眠るのは完全にリラックスして眠ることのできる家猫だけで、厳しい環境にいる外の野良猫では考えられない、というようなことを、前に何かの猫本か猫雑誌で読んだ。我が家でのびのびリラックスしてくれているのはうれしいけれど、ふくちゃんは家に来て一週間かそこらでもう大胆な仰向けスタイルで眠っていた。元野良だったのに、そんないい加減なことでいいのかしらとも思う。
     いまもふくちゃんは、みゆちゃんといっしょにかごの中でぎゅうぎゅうになって眠りながら、やっぱり暑いのか、仰向けになってお腹を出して、足をうしろに伸ばしている。そんなに暑ければ余所へ移ればいいのに、そうしない甘えん坊のふくちゃんが可愛い。

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  • ふくちゃん絶好調

     ふくちゃんは、動くものなら何にでも飛びついてくる。
     私がパソコンを使っていると、ときどき机の上に乗ってくるのだが、モニターでマウスのポインターが動くのをじっと注視していて、そのうち、えい、と画面を猫パンチする。
     ふくちゃんの爪で液晶に傷がついたら困るので、だめだめと引き止めると、そこではあまり無理は言わないで、ごろごろとのどを鳴らしながら(ふくちゃんは、ちょっと手を触れただけですぐにごろごろ言う)机の上をうろうろし始める。ふくちゃんはみゆちゃん以上に、キーボードを踏みつけることに対して何の抵抗もない。絵を描いているときには、知らないうちに色の濃度が変わっていたりするし、メールを書いているときなどは、mmmmmmとかpppppとか勝手に入力されて、書き終えるのに普段の倍くらい暇が掛かる。いつか、おかしな文字を入力したままで送信してしまわないかしらと思う。
     そのうちキーボードの前で横になるから、ちょうどいいと思って机の下からスケッチブックを取り出してふくちゃんをスケッチし始めると、今度はスケッチする鉛筆の動きをじっと見ていて、鉛筆の頭に猫パンチ。絵が描けない。
     幼少の頃に外へ捨てられたふくちゃんだから、生まれてこの方ブラッシングなどしてもらったことがないだろうと思って、ブラシをかけてあげようとしたら、ブラシにまとわりついて、ブラッシング不可能であった。
     猫トイレの掃除も苦労する。スコップを手に取ると、すぐにやってくる。さすがにうんちをのせたスコップにじゃれつかれたら困るので、反対の手でふくちゃんを制止しながら掃除をすると、ごろごろ言いながら、もがいて必死に飛びつこうとする。砂の塊をゴミ袋に入れたら、砂が転げ落ちるのを見てゴミ袋を手で叩く。スコップよりももっと大好きなのが、トイレの外に飛び散った砂を掃くために買った小さな手ぼうきで、私がほうきを手にするとどこにいてもうれしそうに飛んできて、ほうきの先に抱きついて離れないから、全然掃除にならない。それでもなんとか砂をちりとりに集めて、トイレに戻そうとすると、今度はちりとりにとびつくから、また砂が飛び散る。
     文豪内田百閒が可愛がった猫のノラが百閒の家に飼われるようになったきっかけは、子猫のノラが庭に水を撒く柄杓に飛びつき、その勢いで水がめに落ちてずぶ濡れになってしまったことで、随筆「ノラや」でそのくだりを読んだとき、柄杓の動きにじゃれつく子猫がいるのかと思ったけれど、今回ふくちゃんが家に来て、なるほどとよくわかった。

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  • 首輪デビュー

     庭で遊ぶようになったふくちゃんが万一脱走してしまった場合にそなえて、首輪を買った。長さは調節できるけれど、ふくちゃんの細い首にはまだ少し大きすぎて、鮮やかな赤い首輪ばかり大袈裟に目立つような感じがする。
     つけてしばらくはまだ慣れないから、なんだか首の周りが変だぞとばかり、前足を上げてみたり、名前札を両手でつかんだり、全然勘違いな方向へとびあがったりしていたが、庭へ続く窓を開けてあげると、もう首輪のことは忘れたように、外へ飛んでいった。
     ところが戻ってくると、首輪をつけていない。全速力で走り回っているから、木の枝にでも引っかかって外れたのかしらと、庭の隅っこに落ちていた首輪を拾い、庭へ出るときにはまたつけてあげたけれど、繰り返し落としてくるので、鬱陶しがって自分で外したのかもしれない。
     みゆちゃんなどはもう慣れたもので、首輪をつけられると庭に出してもらえるということがわかっているから、むしろ自主的につけられているようにも見える。
     ふくちゃんも、そのうち首輪が気にならないくらい頑丈に大きくなるだろう。
     首輪を外すとき、外れた首輪につい猫パンチが出てしまうのは、みゆちゃんもふくちゃんも同じである。

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  • 12月の庭

     庭の百日紅の木がいつのまにかきれいに紅葉していると思ったら、そのあとに降った雨のせいか、あっというまにほとんどの葉っぱがもう落ちてしまった。したがっていま庭の地面は、赤や黄色や橙色の葉っぱが降り積もって、鮮やかである。あとあと掃除が大変だけれど、その赤や黄色の上に、みゆちゃんの白い背中やふくちゃんの黒い背中が行ったり来たり、立ち止まったりするのを見るのは可愛らしい。
     山茶花の木は、それより少し前に、この冬一番目の花がまず咲いて、そのあと、あちらこちらの枝の先にちらほらと咲き始めているが、土曜日の朝に、ふくちゃんが窓辺にお行儀よく座ってじっと外を見つめているから、何かいるのかしらと思って見ると、メジロが花の蜜を吸いにやって来ていた。
     春以降、ほとんど姿を見なかったけれど、寒くなって山茶花の花が咲いたから、またこうして戻ってきてくれたようである。数えると3羽いる。前の冬にはたいてい2羽のつがいで来ていたが、3羽というのは珍しい。互いに関係のない3羽なのか、あるいは、つがいと、親離れできていない子供なのだろうか。小さな軽いからだで花にぶら下がって、蜜を吸っては、またちょんちょんと枝を渡る。
     メジロと一緒に、シジュウカラも来ていた。白い頬っぺたに黒いネクタイを締めたような模様をつけて、小さな虫でも探しに来たのかもしれない。
     さらに午後には、鮮やかなオレンジ色のお腹をしたジョウビタキが飛んできた。
     小さな庭が、すっかり冬模様になったようである。

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