岡田千夏

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京都府京都市

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  • 猫と薬とインフルエンザ

     先週末から、家族全員、インフルエンザに罹っていた。
     熱が高く上がったので病院へ行ったら、例の、鼻の奥に突っ込む細長い耳掻きみたいな抗原検出キットでA型だと判明した。
     大人にはイナビルという新しい吸入薬、子どもにはタミフルのドライシロップ(粉薬)が出た。
     1歳の次男はもちろん、5歳の長男も、粉薬が嫌いである。上の子は言い聞かせればしぶしぶ飲むが、下はまだ言ってもわからない年である。アイスクリームやヨーグルトなど、いろんなものに混ぜてみたけど嫌がるので、オブラートを使ってみようと思って薬局へ行って聞いてみたら、子ども用なら、薬を包むゼリー状のものがあると出してくれた。
     ぶどう味とかピーチ味とか、子どもの喜びそうな味がつけてある。粉薬にごく少量の水を加えて指で練って丸めて、薬の味がわからないようにゼリーで包み込む。さっそく試してみたら、難なく飲んでくれた。便利なものが出来ていたのだなあと思う。これで薬を飲ませるのがずっと楽になった。
     猫に薬を飲ませるのも、大変苦労する。なかには食いしん坊な猫もいて、ペースト状の缶詰とかチーズで包み込むだけでぺろっと食べてしまうけれど(食べてくれると、本当にほっとする)、たいていは、そう簡単にはいかない。大好きな食べ物で完全に包んでも、なぜかばれてしまう。食べないか、いったん口の中に入れたとしてもぐちゃぐちゃ噛んで、薬だけ出してしまう。挙句、その好物自体、イメージが悪くなって食べなくなってしまう。
     そうなったらもう仕方がないので、嫌がる猫をつかまえて無理やり口をこじあけ、奥に薬を放り込んでのどをさすって、飲み込ませるしかない。可哀想だけど飲ませないわけにも行かないし、気の重い仕事である。
     猫用にも、誰かカツオ味のコーティング用ゼリーとか考案してくれないかしら。それとももう出ているのかな。

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  • 猫が踏んじゃった

     ふくちゃんはときどきピアノを弾く。たいていは、たまたま蓋の開いていた鍵盤の上を、橋を渡るみたいにとことこ歩いてわたるだけだけれど、このあいだは、ちゃんと椅子に腰掛けて、何の音だったか忘れたけれど、ひとつの音を、前足でとんとん押して鳴らしていた。
     鍵盤の上にのぼろうとしたら、キーが下に動いたので、面白くて突付いてみたというのがたぶん真相だろうけれど、世の中にはピアノを演奏する猫もいるそうだから、ふくちゃんもピアノを弾いていたのだと、親ばかに解釈することにする。
     一歳になった次男はピアノを触るのが好きで、よく音を鳴らしたがるから、椅子に座らせて、なにぶんまだ不安定だからうしろから支えてやっていると、やきもち妬きのみゆちゃんがやってくる。普段はピアノなんかに興味はないくせに、私だって弾けますよとばかり、鍵盤の上を歩くのである。目的はどうであれ、みゆちゃんのほうが意識的にピアノを弾いているかもしれない。
     実家でご飯を食べていたら、突然大きな音でピアノがじゃんとなって、どきりとした。何かと思ったら、ちょうどエアコンの温風が当たるピアノの上で寝ていたタマが、おなかでもすいたのか、下へ降りようとして、蓋の開いたままになっていた鍵盤の上に飛び降りたのだった。

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