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2012/11/24
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2012/11/16
最後の話。
この家を引き払う年
B先輩から、ある夜の話を聞きました。
「あいつが金縛りに遭ってる時に僕、見たんだ……」と。
その夜、うなされているA先輩を、ああ叉かと見てみると
A先輩の真上、天井に黒いモヤのようなものが浮いていて……
「それが動いてたんだよねぇ‥‥」と。
この頃、 A先輩はしきりに「女」の話をするようになりました。
窓から覗く女がいる、とか。
「御盆のの時はにぎやかだよね〜」
「2階で誰か走り回ってるしさ〜」
そんな事を笑いながら話していた頃に比べると、洒落にならないような
事件も起きましたが、その辺は伏せさせて頂きます。
さて、いよいよ引っ越しとなりまして
B先輩が先に引っ越し、A先輩とその親父さんが後かたずけを していた時
例のポイント…畳のへこみに、親父さんが気づきました。
なんだこれはと、畳を上げてみたところ
やはり、床板が一部落ちています。
そこから床下を覗き込むと、真下の地面になにかが見えます。
石の蓋。
防空ごうの入口に見えたと云います。
先輩が、開けてみようか、と言うと、親父さんが止めました。
「やめとけ、そんな物はむやみに触るもんじゃない。」
親父さんの言葉通り、そのまま畳を戻し
先輩は<S町の家>を去った、と云うところでこの話は終わりです。
実は最近、近くを通ったついでに訪ねてみました。
敷地の庭も隣の廃屋もさすがに無くなっていましたが
件の家は、まだありましたよ。
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2012/11/15
先輩二人が台所で夕食の準備をしています。
私は大部屋のマットレスにころがってぼんやり、そのうちうとうと。
寝ているような起きてるような曖昧な状態で、
先輩たちの会話や、フライパンをふる音が聞こえています。
そのうちコチコチコチと時計の音が聞こえてきました。
それが私の顔の上を行ったり来たりし始めます。
近づいたり遠のいたり、ぐるぐる回ったりしています。
はっはー、先輩がからかって目覚ましを顔の前で振り回しているな?
パッと目を開けると、そばには誰もおりません。
先輩たちは隣の台所部屋で相変わらず料理を続けています。
まあ、寝ぼけてただけの事かも知れませんが
妙にリアルな、秒針の音でした。
食事の後、そのマットレスにふたたび寝転がりながら
話などしていましたが、そのうち眠りこんでしまいました。
どれほど経ってか、金縛りでガッチリ体が固まりました。
ああ、またか。今度は何だ。
いいかげん、慣れっこになっていて
触られようが抱きつかれようが、怖いとは思わなくなっていました。
見ると、目の前で赤い炎が渦巻いています。
いや、目はつぶっているので、現実に見ているわけじゃありません。
頭の中にイメージが押し込まれて、見えているような感じ。
夢とは異質なものでした。
それはまさに、業火と呼ばれるもの。
天も地もなく、燃えさかる炎が渦のようにぐるぐる回っております。
実際には熱くないのに、その圧力が熱を感じさせます。
そしてその炎の中心には黒い穴。
その穴から<声>が聞こえてきました。
「わぁ・たぁ・しぃ・はぁ・・・こぉ・こぉ・にぃ・いぃ・るぅ・・・」
………えっ?
さらにその声は大きくなって
「わぁ・たぁ・しぃ・はぁ・こぉ・こぉ・にぃ・いぃ・るぅうう・・・」
………えええええっ!?
<声>というのは初めてのパターンです。
(前回の話はこの後の事です)
それは、ごうごうという炎の音にかき消されそうな
かすれて、弱々しい、男とも女ともつかない声でした。
やはり、未知の事態には恐れを感じます。
しかも、今度は明らかに、何かを訴えてきているのです。
「わかった!オレが何とかするからっ!!」
何とか出来る筈もないのに、どうしようもなく
そう、念じてしまいました。
すると炎は消え、体も動くようになりました。
うわっと飛び起きた時にはもう、みんなが寝静まった真夜中でした。
出来もしない約束をしてしまった………。
その事がずっと気になっています。
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2012/11/13
此所に泊まる時はいつも、先輩達のいる大部屋で眠るのですが
この日に限って、玄関脇の3畳間で寝てみる事にしました。
先輩には、あそこも出るよ、と言われてはいましたが
まあ、そこは好奇心もありまして。
部屋は簡素なもので、A先輩の机とマットレスがひとつ。
畳の上に雑誌が散らばっているぐらいで、あとは何もありません。
格子のはまった窓がひとつ、入口は2枚の障子で仕切られています。
特に妖しい感じなど受けません。
その印象通り、怪異も起きずに無事、朝を迎える事となりました。
窓から差し込む明るい光の中、うとうととしておりますと
片方の先輩が大部屋から出てくる音が聴こえます。
3畳間の障子の向う側から声をかけて来たのは、B先輩でした。
「それじゃ、僕、会社行くから。
あ、ゆっくり寝てていーよ、じゃあ、行ってきまーす。」
私は少しうつらうつらしながら、うはーーい、と生返事。
玄関から、B先輩の出ていく音が聴こえました。
しばらくすると、A先輩が部屋から出てくる音がします。
障子が少し開く気配がして、声がかかります。
「じゃ、オレも会社だから。
あとは好きにしていいからな。いてもいいし、帰ってもいいし。」
私は目を閉じたまま、わかりましたあ、と答えます。
玄関の閉まる音。
ああ、先輩達は出掛けてしまった………。
それから少しの間、ぬくぬくとしていましたが、腹も減った事だしと
布団から這い出し、3畳間から出て廊下を渡り、大部屋の前に立ち、
障子を開けました。
『ええっ???』
そこには、出掛けたはずの先輩二人が、まだ寝ております。
そんな馬鹿な、先輩達の声を聞き、出ていく音もハッキリ聞いた。
ぼんやりと横にはなっていたが、眠っていたわけではない。
夢と現実の区別ぐらいはつく。あれは、現実的な音だった。
それに3畳間の障子はA先輩が開けていったままに、少し開いていたじゃないか。
狐に摘まれたような、とはこの事です。
「なんでだよ!?」
思わず声を張り上げた私に、ただならぬものを感じたのでしょうか。
ごそごそと起き出してきた先輩に、事のてん末を告げると...
「古い家は、時々、人を起こすんだよ。」
…………聞いた事の無い謂れでしたが。
その後一度だけ、昼間、3畳間に寝に行きました。
マットレスに仰向けに横たわって、体の力を抜くと
なぜか、ずぶずぶと体が沈みこんでいく感覚に襲われます。
放っておくと、そのままマットレスを抜け、床を抜けていって
しまうような感覚。
まるで、底なし沼の上に寝ているような感覚です。
うっ、と力を入れると、たちまち元に戻ります。
気のせいかと、力を抜きます。
すると又、ずぶずぶと沈み始めます。
もう一度試してみると、やはり同じ状態になるので
此所で寝るのはマズイのだと、ようやく悟り
それ以来、此の部屋に近づくのはやめました。
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2012/11/11
おっかない家でしたが、先輩達が会社から戻る前に
自分はひとりでよく、あがりこんでたんですよ。
何しろ先輩らは不規則な仕事柄、いつ戻ってくるのかわからない。
だから、一か八かで遊びに行くわけです。
たいがい、それは夜なんですね。
で、誰も居ない真っ暗な部屋で、する事もないから寝てるんですよ。
明かりつけりゃいいジャン、って話ですが
やっぱり人様のウチですから、遠慮があります。
それに、配線が複雑にカスタマイズされてるので、どれがどのスイッチか
分からなかった、ってのもありました。
それで暗闇の中、寝て待ってるわけですが………。
面白い事に、ひとりで居る時は、何も起こらないんですね。
A先輩が居ると、起きるんです。
それも夜、昼、関係なく。
で、その日はA先輩のいる昼間の事、でした。
部屋の隅に大きめのテーブルが置いてありまして
たまたまその下で、うたた寝してたんです。
横向きで腕枕をして眠ってたんですが、妙な感じで目が覚めたんですよ。
脇腹の上に、なにかポテッとしたモノが乗っている………
人の腹っぽいんですね。
出っ張った腹。
最初は、先輩がふざけてのしかかってるのかと、思いました。
それほど、生々しい感触だったんです。
でも、違いました。
そいつは両腕を身体にまわしてきたんです。
それが、細い腕なんですよ。
その腕が私の身体の下で交差して……つまり、抱きかかえてくるんです。
物理的にあり得ません。
こっちの身体は床に密着してるんですから腕が入る隙間は無い。
なのに自分の身体の下にそいつの腕がある。
しかも、そいつの腕というか肩と腹の間隔がとても短い。
人の半分程の身体しか無い「なにか」。
そいつが、きゅうううううっと、私を抱きしめてくるんです。
うわあ、と息を荒げて飛び起きました。
A先輩がどーしたと、台所から声を掛けてきます。
今起きた出来事を話すと
「そりゃあ、餓鬼だな。」
「お前、いっつも腹空かせているからな。」
と、半笑いで台所に戻って行きました。
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2012/11/09
<S町の家>での基本的な生活の場は、
一階ふた間をぶちぬいた10畳の部屋です。
その様子など説明しますと、
部屋の北側には、押し入れを改造したB先輩の寝床が設えてあります。
反対の南の壁際には、A先輩の寝床のマットレスが放り出されてます。
部屋の中央近くに置かれたコタツをはさんで、中庭に面した東の窓側に
TVやビデオのラック、西の壁側に例の本棚が置かれています。
下は畳で、その上に緑のカーペットが敷かれていました。
この畳には、一ケ所凹む場所がありました。
本棚とコタツの間、丁度、床板一枚ほどが欠け落ちているかのような
手応えのない凹みです。
なぜか、この凹む辺りが、私が訪ねてきた時の占有場所と
なっておりました。
さて、ある土曜の晩、そのいつもの場所に陣取り、飯をたらふく食い
さんざんビデオを観倒して、では就寝と相成りました。
季節は冬。
私とA先輩はコタツに潜り込んだまま、背中合わせに並んで横に。
狭くても空間的にこう寝るしかありません。
そうして座蒲団を枕に、眠りについたのです。
深夜辺りでしょうか、
この家で初めて、金縛りに遭いました。
ああ動かない、さてどーなる、と別に怖くもないので
じっと様子を窺っていると…………
腰の上に乗せていた右手の手首のあたりに、
ナニかの感触が在ります。
細い、細い、指の感触。
女の指?でも、それより細い………
ソレが、私の手首を掴んでいます。
…………指の数が、数えられます。
1本………2本…………………3本…………………?
親指と、人指し指と、中指………で、ソレは終わっていました。
つまり3本指の手が、私の手首を、きゅうううううっと掴んでいるのです。
ずいぶん、力を込めているつもりなのでしょうが
あまりに「ソレ」は、非力でした。
鬱陶しい程度に思って、ソレを振り解こうと手首をひねってみると
果たして試みは成功し、3本指は離れました。
その時、ひゅん、という空を切る音が聞こえました。
そして、ナニか小さなものがカーペットの上に落ちる音。
ぽとり
エッ?…………………飛んでった??
次に聞こえてきたものは
ばり、ぼり、ばり、……ばり、ぼり、ばり、………
カーペットを、指で掻く音。
枕につけた耳に、振動が伝わってきます。
そしてその音が、私に向かって近づいてきます。
この時初めて恐怖が沸き上がってきました。
−−−3本指の手だけのモノが、カーペットの上を這ってくる!!−−−
私は叫び声をあげました。でも実際には声にならない叫び。
身体は固まったまま、逃げ出す事も出来ない。
不気味な音はどんどん近づいてくる。
そうだ、さっき腕は少し動かせた!
腕に全てを集中して………!!
どすうっ!!!
隣の先輩の背中に、私の肘鉄がめりこみました。
うおおっと激痛に目覚める先輩。
同時に、金縛りが解ける私。
パニクって訴える私に、先輩は落着き払って云いました。
一回出たら今夜はもう出ないから、寝ろ、と。
翌朝、先に起きていた先輩に教えられました。
カーペットに、長い3本の引っ掻き跡があったと。
「お前が怖がるといけないから、消しといたよ」
「あとさ...
お前の寝てたトコ、そこ、けっこうポイントなんだよなあ(笑)」
それ、大事、先に、言え。
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2012/11/08
この家の主である先輩二人、仮にA先輩B先輩としときますが
この頃は デザイン事務所に勤めておりました。
で、まあ、一軒家だし、他に住人居ないし、唯一隣接してる家は 廃屋ですから
夜中じゅう騒いでも割と平気な環境でした。
その為か週末になると漫研時代の仲間が遊びに来たりして
結構にぎやか だったりするんです。
その夜も7、8人集まって、ごちゃごちゃやってたそうです。
それで、一人がトイレに立ったんです。
障子を開けて廊下に出ると、真ん前がトイレです。
廊下に照明はありません。
障子を通したぼんやりした明かりが頼りです。
右を見れば、玄関につながる廊下に平行して
二階へあがる階段があります。
その人、トイレのドアの前でふっと、階段見上げました。
真っ暗な階段のてっぺんに、女の人が立っていました。
こちらを見下ろしているようです。
はて、上の住人か?
自分らがやかましいので怒ってるのかも。
そう気にしつつ部屋に戻って
「二階に誰か居るのか?」
当然、居るわけが無いと、A先輩は答えました。
さて、そのA先輩が、ひとり先行してこの家に引っ越してきた夜の話。
荷を半分程ほどいて、あとは明日にしようと
そのまま、マットレスに横になりました。
どれほど経ってか、金縛りで目覚めたそうです。
壁の本棚から、ナニかが出てくるのが見えます。
150cmの本棚いっぱいの
大きな、女の顔。
右半分は本棚に埋まったままで見えなかったそうですが
火傷のある顔だったと、先輩は言います。
だいぶ後になってから、聞かされた話です。
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2012/11/07
当時金欠の私は、専門学校時代の先輩の下宿が唯一
腹一杯飯の食える場所でありました。
そんなわけで週に一度は食べに……
いや訪ねていくのを習慣としていたのも
もう、三十年前の事になります。
しかし、仲間内でこの家は“S町の幽霊屋敷”と呼ばれておりました。
駅からバスで20分ほど、○○区にあるS町というところの
寂しい一角にその家はありました。
傾きかけた廃屋の隣にある、古い木造二階建て。
元は、普通の一軒家を、敷地の大家がアパートとして
貸しているとのことでした。
間取りは、玄関から入ってすぐの三畳間。
廊下を進んで右手にトイレと、2階への階段。
左手の障子の向こうに六畳と四畳半の二間と三畳の台所。
2階は廊下を挟んだ四畳半が二間。
この1階部分をすべて、先輩二人が共同で借りていました。
当時は2階の借り手が居なかったので、
事実上、先輩達の家と言っても差しつかえありませんでした。
そこで、二人は六畳と四畳半の襖をとっぱらい大部屋を作り上げ
電気仕掛けのフラワーチルドレンのように暮らしていたワケです。
ま、云うなればオタクの牙城です。
さて、台所から庭に出ますと、ちょっとした林などありまして
けっこう陰気です。
年期の入った井戸まであります。
敷地のどこかに大家の婆さんの住まいがあったそうです。
古くからある土地特有の、湿気を感じる環境です。
先輩によれば、この辺一帯はかつての「N飛行場跡地で
空爆で相当やられた歴史があるとの事でした。
その辺に疎い私には、定かな話ではありませんが。
つまりは、なにかありそうだと思わせるアイテムが
揃った場所ともいえたワケです。
まあ、長々と前ふりなどしてしまいましたが、
何ゆえここが幽霊屋敷などと呼ばれていたのか、
これからお話していきます。
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2012/11/04
TVゲームをしていた筈だった
敵の白い玉をどうしても倒せなくて
画面の前でじれていたら
いつの間にかトンネルを車で走っていた
ライトはつかない
暗いトンネルを懐中電灯で照らしながら疾走していた
どんどん加速していたのに
車はちっとも動いていなかった
懐中電灯が行き止まりの壁を照らした
両脇の壁にはバーカウンターのようなものがある
キャビネットの硝子の奥に店鋪が見える
人の姿がない
まだ開店前だろうか
よく見ると左のキャビネットの中に人が折り重なっている
人形のように動かない人々
彼らを動かせば店は開くのだろうか
カウンターの上に絵本を見つけた
陰惨な人形達の謎が描かれていた
頁をめくっていくうちに絵が動き出す
絵は銀幕ほども拡がって
いつしか自分は冬のロシアに立っていた
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2012/11/04
もう30年近く前、バイトの同僚にKさんという人がいました。
このKさん、小演劇の役者さんで、よく練習などと言っては
体をくねくねうねうねさせてたりして、なかなか楽しい人でした。
で、Kさん、山登りもするんですね。
その日も、ある山の中のキャンプ場でテントを張ってたと。
水を汲もうってことでひとり、谷川へ下りる一本道へ出たそうです。
両側は濃いやぶが続いて、人ひとりがやっと通れる道だったと云います。
しばらく行くと、下から人が上がってくるのが見えたそうです。
キャンプ場の客だろうと、軽く挨拶をして
互いに体をやぶに押し付けながら、すれちがった……
その瞬間、ん?と感じたそうです。
違和感がある、と。
さっと振り返ると、今すれちがったばかりのその人は
どこにもいなかった、と云います。
もうひとつ。
Kさん、出身地は忘れましたが、山の中にじいさまの家があって
小さい頃はよく遊びに行ってたそうです。
これが、わらぶき屋根の家で、囲炉裏があったりして
ほんと、昔話に出てくるようなトコロだったそうです。
そこで皆で夕食をとっていると
どこからか鳥のはばたく音が聞こえてきたそうです。
その音はどんどん大きくなって、屋根の上までやって来ました。
次の瞬間、どおーーーん!!と、大きな音と共に
ひと抱えもある巨大な鳥の一本足が、
わらの屋根を突き破って落ちて来たのだそうです。
余りの内容に、その後それがどうなったのか、
掻き消すように消えたのか、
その突き破った穴はどうなったのか、など聞きそびれたまま...
今日に到っております。
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