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文学・文芸 > 詩
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Commentたまおくり
宮尾節子
自分のことのように
自分ではない人が
自分のことを、喜んでくれる日が
あったことを、わたしは忘れません。
ひとつの喜びが、いくつもの手に手渡されて
玉送りをするように
おおきく広がっていきました。
自分のことのように
自分ではない人が
自分のことを、悲しんでくれる日が
あったことも、わたしは忘れません。
ひとつの悲しみが、いくつもの手に支えられて
玉送りをするように
すこしずつ軽くなっていきました。
ひとの喜びが、自分の喜びとなり
ひとの悲しみが、自分の悲しみとなり
手から手へつぎつぎ送られていく
玉送りの、ボールのように。
ひとつの喜びとひとつの悲しみで
ひとがじゅうぶん、
喜びにも悲しみにも間に合うように
なりますように、
たまおくり。