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文学・文芸 > 詩
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Comment麦の体、檜の体
宮尾節子
秋蒔いた麦は
厳しい冬を越すために
踏みつけられます。
出たばかりの麦の芽は
踏みつけられて傷つくことで
ああからだとはふしぎだ
太くたくましくなるための物質を
用意するのです。
初めの敗北はつぎの大きな勝利のために
なら思い切り傷ついて、我が身を信じてみよう
麦の体で。
春の苗木畑の檜は
一列に寝かされていて
誰も起こしてくれません。
檜の子どもたちが腹筋を使って
ああからだとはふしぎだ
自分のちからで起き上がるところから
強くなる術を学ぶのです。
私たちは立って生まれていない
倒れたところから、やって来た人生だ
なら思い切り倒されて、我が身を信じてみよう
檜の体で。
わたしは、学ぶ。
ゆれる心、泣きたい心を
赤児のように、あやして、今日生きるために。
明日笑うために。
なんぜんねん、なんまんねんも
繰り返す
麦の子ども、檜の子どもの
歌を歌って
なんぜんねん、なんまんねんも
人の糧、人の家となるために
麦のからだ、檜のからだに
人のからだを習う。
(*わたしの詩を気に入ってくださってる格闘家の方が、ある試合に負けたときに
エールのつもりでこっそり、作った詩です。)