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ファインアート > 油絵

Dear birth

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© KONDO HIROYUKI

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Dear birth

by kh

  • iコンセプト

    ぼくが目覚めた時には、既に森の中にいたのだった。


    「ここは、どこだろう?」


    誰かに話し掛けたつもりで、声を出す。

    おかしいな。
    先程まで誰かと一緒にいたような…?


    ひとりぼっちにされてしまったのかな。
    それはなんだか心細い。


    辺りを見回しても、誰の姿もない。


    こんな深い森の中だ。一人で抜け出せるか不安になる。

    ここまで来るのに

    怪我をしていないのかと身体を見ると、


    ぼくの腕に紐が巻き付いている。

    その先には風船が優雅に浮いていた。


    紐に触れてみたが、
    腕から引き離せそうにない。


    「これは一体なんなのだ?」


    よく見ると、風船にしては歪な形状をしている。


    中に少量の液体のようなものが入っているのを見て取れるし、表面はなんだかヌルッとしている。


    まるで生き物のようなソレと、一緒に森を歩き始めた。


    しかし、やはり何かがおかしい。
    森全体が蠢き、生き物みたいに感じる。


    踏み締めて歩く地面も、フニュッとした感触があり、少し不気味だ。

    水分を含んだ地面、というより

    生肉を踏んでいるような…?


    時折、地震に似た空間の歪みも現実性を欠く。


    吸い込んだ空気も、まるで水中で酸素ボンベをして息を繰り返しているような苦しさがあって、不快極まりない。


    湿気が多くてジメジメしている。
    肌がヌルヌルしてきた。

    物凄く嫌だ。早く帰りたい。


    今、何時なのかも把握しにくい。

    朝方なのか?夕暮れ時なのか?

    得体の知れない色の空が、木の幹の隙間から見て取れる。

    なんなのだ?ここは?


    目の前に唯一、草木のない道があって、
    それに導かれるがままに進む。

    この風船は、とても大事なもののような気がして割れないように気を付けた。

    と、
    何気なく風船の全体を見て、ハッとした。

    この風船……。

    先程までとは明らかに形状が違う……。

    長細くなっている……。

    ぼく自身、細心の注意を払い、周りの木々などに触れぬよう気を払った。

    何者にも触れさせていない。

    確かに、ぼくは紐には触れた。
    だが、一度だって風船には触れていない。


    明らかに、風船の様子がおかしい……。

    中に含まれる液体の量も増えている。

    なんだ?破裂するのか?と思うのだが、そんな気配はない。

    むしろ形状が、こうなるであろうと予期していたかのように堂々としている。


    わからない事ばかりで、更に頭は困惑した。


    それはまるで、犯人のいない犯人を探している感覚だ。


    ぼくの腕に何故こんなものが?

    何故、この風船はこの液体量に対してそれでも浮いていられるのか?


    ここは一体どこなのか?


    まったく
    身に覚えのない現実に、ひたすら戸惑い、焦る。


    それでも、先に行かねば、と思うこの焦燥感…。

    胸にいくつもの疑念と疑惑を想い、抱えながら、

    また一歩、

    歩み始めた……。

    _。

    私は


    From death

    を待っている…。

    いつから待っているのか、いつ会えるのか、私は今日も想いを馳せる。

  • i環境・素材

    油絵具 キャンバス

  • i実寸サイズ

    F10号 ( 530 X 455mm )

  • i製作期間

    2011

  • i作品URL

    ameblo.jp/hero8snow/entry-1206...

  • iコメント

    『第11回世界絵画大賞展』入選作品。

  • iライセンス

    設定しない

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by kh

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    ぼくが目覚めた時には、既に森の中にいたのだった。


    「ここは、どこだろう?」


    誰かに話し掛けたつもりで、声を出す。

    おかしいな。
    先程まで誰かと一緒にいたような…?


    ひとりぼっちにされてしまったのかな。
    それはなんだか心細い。


    辺りを見回しても、誰の姿もない。


    こんな深い森の中だ。一人で抜け出せるか不安になる。

    ここまで来るのに

    怪我をしていないのかと身体を見ると、


    ぼくの腕に紐が巻き付いている。

    その先には風船が優雅に浮いていた。


    紐に触れてみたが、
    腕から引き離せそうにない。


    「これは一体なんなのだ?」


    よく見ると、風船にしては歪な形状をしている。


    中に少量の液体のようなものが入っているのを見て取れるし、表面はなんだかヌルッとしている。


    まるで生き物のようなソレと、一緒に森を歩き始めた。


    しかし、やはり何かがおかしい。
    森全体が蠢き、生き物みたいに感じる。


    踏み締めて歩く地面も、フニュッとした感触があり、少し不気味だ。

    水分を含んだ地面、というより

    生肉を踏んでいるような…?


    時折、地震に似た空間の歪みも現実性を欠く。


    吸い込んだ空気も、まるで水中で酸素ボンベをして息を繰り返しているような苦しさがあって、不快極まりない。


    湿気が多くてジメジメしている。
    肌がヌルヌルしてきた。

    物凄く嫌だ。早く帰りたい。


    今、何時なのかも把握しにくい。

    朝方なのか?夕暮れ時なのか?

    得体の知れない色の空が、木の幹の隙間から見て取れる。

    なんなのだ?ここは?


    目の前に唯一、草木のない道があって、
    それに導かれるがままに進む。

    この風船は、とても大事なもののような気がして割れないように気を付けた。

    と、
    何気なく風船の全体を見て、ハッとした。

    この風船……。

    先程までとは明らかに形状が違う……。

    長細くなっている……。

    ぼく自身、細心の注意を払い、周りの木々などに触れぬよう気を払った。

    何者にも触れさせていない。

    確かに、ぼくは紐には触れた。
    だが、一度だって風船には触れていない。


    明らかに、風船の様子がおかしい……。

    中に含まれる液体の量も増えている。

    なんだ?破裂するのか?と思うのだが、そんな気配はない。

    むしろ形状が、こうなるであろうと予期していたかのように堂々としている。


    わからない事ばかりで、更に頭は困惑した。


    それはまるで、犯人のいない犯人を探している感覚だ。


    ぼくの腕に何故こんなものが?

    何故、この風船はこの液体量に対してそれでも浮いていられるのか?


    ここは一体どこなのか?


    まったく
    身に覚えのない現実に、ひたすら戸惑い、焦る。


    それでも、先に行かねば、と思うこの焦燥感…。

    胸にいくつもの疑念と疑惑を想い、抱えながら、

    また一歩、

    歩み始めた……。

    _。

    私は


    From death

    を待っている…。

    いつから待っているのか、いつ会えるのか、私は今日も想いを馳せる。

  • i環境・素材

    油絵具 キャンバス

  • i実寸サイズ

    F10号 ( 530 X 455mm )

  • i製作期間

    2011

  • i作品URL

    ameblo.jp/hero8snow/entry-1206...

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    『第11回世界絵画大賞展』入選作品。

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published : 2015/09/06

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