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ようこそ

by Tome館長

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    ようこそ、死後の世界へ。


    あなたが間もなく亡くなるかどうかはわかりませんが、近頃は死を恐れる高齢者が増えましてですね、天才的な外科医がもてはやされたり、延命のための画期的な新薬が開発されたり、逆に健康なはずの若者が自暴自棄になって早まったことをなさったりと、いわゆる「死の流れ」が悪くなっておりまして、これはどうもなんとかしなければならないと、このような体験ツアーを企画したわけでございます。

    参加された皆様におかれましては、おかしな夢を見てるような感覚ではなかろうかと思われますが、実際に死後の世界は現実の拘束、いわゆるシガラミから解き放たれた夢の世界に近いものがあります。

    ですが決定的に死後が生前と違うのは、個人である「私」という意識からも解放されている点にあります。

    どういうことかと申しますと、インターネットの世界を想像していただけると理解しやすいのですが、生前は単体のパソコンでありまして、他のパソコンとはフロッピーディスクなどのデータ記録媒体で情報交換するのが関の山。
    ところが、死後は相互にオンラインで繋がってる状態に相当します。

    つまりですね、自分の夢も他人の夢も、悪夢も淫夢も退屈な夢も、なにもかもごっちゃにして見ているようなものですね。

    それはまあなかなか楽しいわけですけれども、皆様におかれましてもオフラインでこつこつと地道に孤独に仕事をしたい、という気持ちになる時だってありますよね。

    または映画館の座席で映画を鑑賞していて、気楽な観客ではなく切羽詰った登場人物になりたい、という気持ちになることもあるでしょう。

    そういう感覚で死後と生前の関係を捉えていただければ、まず大体のところ間違いありません。

    ですから無理に命を延ばすことも、無駄に命を早めることも、大変ご苦労なことではありますが、残念ながら死後に後悔を増やしてしまう原因になるばかりでございます。


    さて、前置きはこのくらいに致しまして、どうやら開門の時間になったようです。

    申し訳ありませんが、皆様には縦一列に並んでいただきまして、この狭い入り口から一人ずつ順番にお入りください。

    まことに長らくお待たせ致しました。
    死後の世界へ、ようこそ!
     

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    ようこそ、死後の世界へ。


    あなたが間もなく亡くなるかどうかはわかりませんが、近頃は死を恐れる高齢者が増えましてですね、天才的な外科医がもてはやされたり、延命のための画期的な新薬が開発されたり、逆に健康なはずの若者が自暴自棄になって早まったことをなさったりと、いわゆる「死の流れ」が悪くなっておりまして、これはどうもなんとかしなければならないと、このような体験ツアーを企画したわけでございます。

    参加された皆様におかれましては、おかしな夢を見てるような感覚ではなかろうかと思われますが、実際に死後の世界は現実の拘束、いわゆるシガラミから解き放たれた夢の世界に近いものがあります。

    ですが決定的に死後が生前と違うのは、個人である「私」という意識からも解放されている点にあります。

    どういうことかと申しますと、インターネットの世界を想像していただけると理解しやすいのですが、生前は単体のパソコンでありまして、他のパソコンとはフロッピーディスクなどのデータ記録媒体で情報交換するのが関の山。
    ところが、死後は相互にオンラインで繋がってる状態に相当します。

    つまりですね、自分の夢も他人の夢も、悪夢も淫夢も退屈な夢も、なにもかもごっちゃにして見ているようなものですね。

    それはまあなかなか楽しいわけですけれども、皆様におかれましてもオフラインでこつこつと地道に孤独に仕事をしたい、という気持ちになる時だってありますよね。

    または映画館の座席で映画を鑑賞していて、気楽な観客ではなく切羽詰った登場人物になりたい、という気持ちになることもあるでしょう。

    そういう感覚で死後と生前の関係を捉えていただければ、まず大体のところ間違いありません。

    ですから無理に命を延ばすことも、無駄に命を早めることも、大変ご苦労なことではありますが、残念ながら死後に後悔を増やしてしまう原因になるばかりでございます。


    さて、前置きはこのくらいに致しまして、どうやら開門の時間になったようです。

    申し訳ありませんが、皆様には縦一列に並んでいただきまして、この狭い入り口から一人ずつ順番にお入りください。

    まことに長らくお待たせ致しました。
    死後の世界へ、ようこそ!
     

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published : 2010/05/14

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