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他人の顔

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他人の顔

by Tome館長

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    【 どこかの他人 】


    「まあ。ユミ、久しぶりね」

    見ず知らずの女から声かけられた。


    「ええ、そうね。ごめん、急いでるんで」

    愛想笑いを浮かべつつ、その場を小走りに去る。


    この他人、ユミという名前らしい。

    自分なんだけど、外見は他人。
    美人とも思えないが、そんなに悪くもない。


    「おい、ユミ。他人のふりするなよ」

    見ず知らずの男に呼び止められた。


    「ごめんなさい。ちょっと急いでて」

    あわてて逃げようとしたが

    「ふざけるな」

    男に腕をつかまれた。

    「ユミ、なんで俺から逃げる」
    「人違いです。私はユミではありません」

    「なに言ってんだよ。ユミ、笑えねえぞ」

    どうやら、この他人と深い関係の男らしい。

    こうなった仕方ない。
    別の他人になるしかない。

    「君、人違いじゃないかな」

    「わっ、すみません。し、失礼しました」

    男は驚き、ひっくり返り、立ち上がって
    また転んで、あわてて走り去った。


    この他人、どうやら今の男の苦手なタイプらしい。
     

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他人の顔

by Tome館長

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    【 どこかの他人 】


    「まあ。ユミ、久しぶりね」

    見ず知らずの女から声かけられた。


    「ええ、そうね。ごめん、急いでるんで」

    愛想笑いを浮かべつつ、その場を小走りに去る。


    この他人、ユミという名前らしい。

    自分なんだけど、外見は他人。
    美人とも思えないが、そんなに悪くもない。


    「おい、ユミ。他人のふりするなよ」

    見ず知らずの男に呼び止められた。


    「ごめんなさい。ちょっと急いでて」

    あわてて逃げようとしたが

    「ふざけるな」

    男に腕をつかまれた。

    「ユミ、なんで俺から逃げる」
    「人違いです。私はユミではありません」

    「なに言ってんだよ。ユミ、笑えねえぞ」

    どうやら、この他人と深い関係の男らしい。

    こうなった仕方ない。
    別の他人になるしかない。

    「君、人違いじゃないかな」

    「わっ、すみません。し、失礼しました」

    男は驚き、ひっくり返り、立ち上がって
    また転んで、あわてて走り去った。


    この他人、どうやら今の男の苦手なタイプらしい。
     

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published : 2010/04/12

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