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2008/02/29
私は大阪城公園の飲食店のベンチに腰を屈め、タバコを呑んでいた。
ふと、横に目をやると乞食がゴミ箱から誰かの食べ残したたこ焼きのソースを指につけてぺろぺろと舐めふけっていた。
大阪城公園は乞食たちにとっての楽園であり、我々にとってもリゾームとしての機能を有するものであり、誰一人として乞食に対して眉を顰めない。
いわば乞食はこの土地においてのみ仙人なのであり、だがしかし、この静寂にチルアウトしようと試みれば、視界に自然と入ってくる仙人たちに気を取られ、チルアウトどころか、私は、バッドトリップの体をなしてしまう。
工事現場の機械音が、クラウス・シュルツェの電子音に聴こえ、不気味な感触を残したままの雨上がりの地面にズブズブと嵌りこんでみれば、私は究極的に一人ぼっちなんだと痛感する。
だが、この痛々しい心から発せられる音には不気味な感じは微塵も無かった。私は外界の音と内の音を聞き比べてみた。そこには驚くべき発見があった。何と、外も内をまったく同じ音ではないか?実に富士儀ナ現象であった。 何故、方や不気味に聞こえ、方や、心地よく響いてくるのか?
そのとき、いつのまにか桃色の花の道に迷い込んだ自分に気付いた。
私は仙人に一礼し、そのまま帰路に着いた。