大野厚嗣

画家

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大野厚嗣

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大野厚嗣

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  • 2012/5/2

    東日本大震災を境に、世の中は大きく変わりました。

    それらは個々の価値観や考え方など、目に見える物とは限りません。


    震災後、生きるのに必死な人々に物資や救援が必要とされる現実に、多くの文化芸術に関わる人々がその無力さを思い知らされたと思います。

    確かに娯楽は自粛し、芸術家は活動を控え、存在意義すら問う人もいました。

    一瞬にして大切な人や物を失った人々に対し、「がんばろう」という儚く脆い鍍金をまとった言葉をかける事をためらう人も多かったと思います。

    でも、彼らの問いかけの答えは過去にありました。

    災いや時代に翻弄されながらもひたむきに、かつ堅実に製作を続け、今日まで伝えられてきた先人の作品は数多くあります。

    危機を感じ、現状を問いかけ、生まれた思想も数多くあります。

    つまりどんな時代でも、文化芸術が衰退する事はありません。

    エンターテインメントに溢れた現代を生きる自分でも、数百年前に描かれた作品に心打たれた事は何度もあり、それは災いや時代に翻弄された絵描きほど強靭な精神を持ち、技術を身に付け、現代でも揺るぎない存在感があるからかもしれません。

    では今の自分達のような、物や情報が溢れる中で、便利になるほどに欲が出て甘えてしまい、漠然と過ごしてしまった時間の重みを、老いた時にやっと気付くほど鈍感で何を残せるのか。

    仮に具体的な目標が無くても、日々のするべき事を堅実にこなす事で変わる事はあるかもしれません。

    一日に一つ、どんな小さい事でも積むことができれば、年を重ね気付いた時、それらは決して人に奪われない自分だけの財産になっている事と思います。

    公平でない現実を見て、道半ばで諦めた友人を黙って受け止める優しさも育まれているかもしれません。

    流行に身を任せるのではなく、独自の価値観を育み続け、周りの流れがどう変わろうがそこだけは変わらない、願わくばそんな場所が築けるように、汚れ傷ついた手を誇らしく思う職人の如く地道に積み上げていける事を願います。

    紙と鉛筆があれば絵は描けます。上質な物でなくても技術は磨く事ができます。自らの強みと弱みを知り過去の功績や褒め言葉に浸る事無く、学ぶ姿勢を忘れず高めた技術は、人から求められる時が必ずきます。

    若さを強調し、派手に飾るよりも、それらは強く深く屈せず、その身が滅びても軽く時を超え次の時代も居続けている事を信じています。

    人と交わる事で得た新たな価値観、出会い別れを繰り返し生まれた感情の色が、勝敗の無いこの世界できっと一線を画してくれます。

    失望して生きるには長すぎる人生に、刺激と潤いを与え、向上心を駆りたててくれる人物の存在は数えきれません。

    笑われようが、避けられようが、自分を見捨てないのは自分だけであり、独りになっても描きたい絵をいつまでも自分は描き続けています。

    時代が変わろうとも大事にしてもらえる作品を残せるように。


    ご覧いただき有り難うございました。

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