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    Works 3,356
  • いじめないで

    2013/01/22

    怖い話

    おねがいですから
    いじめないでください。


    せいかくがくらくて
    すがたかたちがみにくくて

    おこないやふるまいがいやらしくて

    いじめたくなるきもちも
    わからないではないですが

    とてもおちこみます。


    あなたは
    とにかくつよいひとなので

    あなたへしかえしするなんて
    とんでもないはなしですけど

    あなたにとってたいせつであろうものや
    あなたがまもりたいであろうものなら

    なんとなれば
    きずつけることくらいできそうです。


    なんでもありのいまのよのなか
    しゅだんなんかいくらでもあります。

    たとえば
    いま、ここに

    じつめいやじゅうしょ
    だれにもしられたくないじじつとか

    じじつでなくてもいやなことばかり
    かいてしまうことだってできるのです。


    それはもちろんきけんをともないますけど

    いじめられつづけることにくらべれば
    とるにたらぬことのようにおもわれます。


    ただし、
    いまのところ

    もちろんじょうだんです。

    ちゅういをうながしてみただけですけど
    おどされたとうけとられたとしたら

    それならそれでもいいです。


    そういうわけなので

    どうか
    よろしくです。
     

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  • 熱帯の夢

    2013/01/21

    変な話

    息苦しい夢から目覚めたら
    汗まみれの胸の上に亀が乗っていた。


    「この亀、悪い夢を喰うね」

    細長く黄色い舌を見せて
    混血の案内人が笑う。

    なるほど、どんな夢か思い出せない。


    酔ったようにカヌーが揺れている。

    流れているとも思えない密林の川面に
    牛を食べるという魚の唇が浮かぶ。


    なんの予告もなく
    矢のスコールが頭上を襲う。

    「あんた、酋長の娘に手を出したな!」

    案内人に非難されたが
    とんと記憶にない。

    夢の中で手を出したのだろうか。


    とりあえず頭の上に亀を乗せ、
    矢の雨を防ぐ。


    太腿の上では
    ライフルの銃身が曲がっていた。

    熱帯の暑さに項垂れてしまったのだろう。


    「シリカクセ! シリカクセ!」

    羽ばたきながら
    原色の鳥が警告する。

    しかし、手遅れだ。
    一本の矢が尻に刺さった。

    ストローみたいに空洞の矢。


    「それ、ちょっとだけ吸わせろ」

    混血の案内人の眼が
    飢えた獣のように血走っている。
     

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    • Tome館長

      2013/11/19 23:43

      「広報まいさか」舞坂うさもさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2013/11/19 11:37

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 鼓 動

    2013/01/19

    切ない話

    君の心がわからなくて


    僕は君を殴って

    乱暴にセーターを脱がして
    ブラジャーを引き千切って

    乳房をよけるように胸を切り開いて

    片側の胸骨を数本へし折って
    血の沼の中を手探りして

    君の心臓をむき出しにして


    でも
    それから

    それからどうすればいいのか


    やっぱり僕にはわからない。
     

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  • トトカ湾の女

    2013/01/19

    変な話

    ボートを盗み、
    女はトトカ湾へ逃げた。

    艦隊がボートを囲むように追う。

    女を海洋へ逃がしてはならない。
    捕獲が難しくなってしまうからだ。


    すっかり艦隊に包囲された女は
    諦めの表情、濡れたドレス。

    艦隊総指揮官として
    俺は甲板から女を見下ろす。


    女の手に光るものがあった。

    化粧鏡などではない。
    まっすぐ銃口がこちらを向いていた。

    「あんたなんか、大っきらい!」


    さすが、トトカ湾の女だ。
     

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  • どこまでも扉

    2013/01/18

    変な話

      扉を開ける。

    食堂だろうか。
    中央に大きなテーブルがある。

    テーブルの上には白い皿が置いてある。
    その皿の上には女の首が載っている。

    眉と唇の曲線が似ているような気がする。

    「ようこそ、いらっしゃいませ。
     お待ちしておりましたわ」


      違う。
      ここではない。

      扉を閉める。


      次の扉を開ける。

    熱帯のジャングルだろうか。
    天井から巨大な蛇が垂れ下がる。

    蛇の喉は膨らんでいる。
    開いた口の中に女の顔が見える。

    大蛇に飲み込まれつつある女が微笑む。

    「あら、いいのよ。
     そんなに気を遣わなくても」


      違う、違う。
      ここでもない。

      扉を閉める。


    そんなふうに
    扉の列が並んでいる。

    どこまでもどこまでも
    並んでいる。
     

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  • 明日へ向かって

    2013/01/17

    愉快な話

    そして翌日、
    撃たれてしまった。


    く、くそっ!

    ひどい出血だ。
    死ぬかもしれん。


    だ、誰だ?

    昨日、
    明日へ向かって撃った奴は。
     

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  • 唐突な迷惑

    2013/01/16

    変な話

    もうどうでもいいや、と思った。
    本当に、どうでもよくなってしまった。


    「あの、唐突でご迷惑でしょうが」
    そんなふうに見知らぬ女に声をかけた。

    「はい。なんでしょう?」

    目と目が合った。
    その素敵な瞳。

    いつまでも見つめていたかった。

    しかしながら
    抱きしめるのも殴られるのも億劫だ。

    「いえ。なんでもありません」
    すぐに、その場から逃げだした。


    酔っ払いと思われたことであろう。
    実際、相当な酔っ払いであった。

    だが、そんなことはどうでもいいのだ。

    吐いたっていい。
    転んだっていい。

    狂おうが死のうが問題じゃない。
    なにがどうなろうとなんでもない。

    で、そのまま帰って寝てしまった。


    そうなのだ。

    家に帰って寝たっていいのだ。
     

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    • Tome館長

      2013/11/14 20:09

      「広報まいさか」舞坂うさもさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2013/11/14 14:14

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 伝説の酒場

    2013/01/15

    愉快な話

    とうとう来てしまった。

    千鳥足でなければ辿り着けないという
    世界が回転しなければ入れないという

    伝説の酒場。


    どこにあるのか誰も知らない。

    町名も番地もわからない。
    およその方角もわからない。

    そもそも店名すら不明なのだ。


    入口のドアを開けると
    床には小川が流れている。

    その小川には
    背びれが翼の人魚が泳いでいる。

    さあ、そんなのまたいで
    さっさと向こう岸へ渡ってしまおう。


    カウンターの止まり木には
    魅力的な異国の女たち。

    奥の暗いテーブル席には
    怪しい異星の男たち。


    特別な挨拶なんかいらない。

    まずは一杯いただこう。


    ところが、突然の目覚め。

    ここは自宅の玄関。
    時は朝。

    昨日はどこだ。
    酒場はいつだ。

    どうやって帰宅したのだ。


    まるで記憶が残ってない。
     

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  • ブドウの房

    2013/01/14

    変な話

    ここは坂の多い町だ。

    家の近所に、通学する高校生たちが 
    「ジェットコースター」と呼ぶ過激な坂道がある。

    そして、その坂道を上ったところに街灯が三つある。


    これは前にも話したことがあるけど 

    僕はひどい近眼と乱視で 
    目の不自由な人なので 

    夜に街灯を裸眼で見ると、印象画風に 
    ぼんやりと光るブドウの房に見えてしまう。

    だから、街灯が三つあると 
    ブドウの房が三つ見える。

    この三つを想像上の直線で結ぶと三角形になる。

    「魔のトライアングル」という言葉が浮かんでくるのは 
    夜のせいだろうか。


    ところで 

    この三角形が正三角形になると 
    悪いことが起こる。

    そんな気がしてならなかった。
    意味のない妄想である。

    しかし、ひとり夜の坂道を上りながら 
    いつの間にか光るブドウの房が直角三角形になり 

    だんだん二等辺三角形に近づき 
    やがて正三角形になりそうになると 

    つい不安にかられて目をそらしてしまう。


    見なければ正三角形にならない。
    だから、悪いことは起こらない。

    そう思い込もうとしているわけなのだ。

    精神が病んでいたに違いない。


    そして今夜 
    ついに見てしまった。

    すれ違った女子高校生に注意を奪われ 
    警戒するのをうっかり忘れたのだ。

    それは、完璧な正三角形だった。
    三つの光るブドウの房による夜の正三角形。

    見事だ。
    じつに美しいと思った。


    なにも悪いことは起こらない。

    悪いことなど起こるはずがないのだ。
    なぜなら、まさに完璧な正三角形なのだから。

    むしろ 
    いままで見なかったのが悪かったのだ。

    どうして見ようとしなかったんだろう。
    どうして見えなかったんだろう。

    近寄って見ても、遠く離れて見ても 
    どんなところからどんな角度で見ても 

    完璧な正三角形じゃないか!
     

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  • 森のトンネル

    家は森の中央広場にあり、
    外出する時は森のトンネルを抜けてゆく。

    ところが、その日
    昼なお暗いトンネルの途中に美女がいて

    おれの前に立ちはだかった。


    おれは尋ねる。
    「こんなとこで、なにしてる?」

    美女は両腕を広げて答える。
    「通せんぼ」

    おれはムッとして
    美女を押しのけようと張り手を出す。

    その途端
    見事な一本背負いで投げられてしまった。

    おれは受身で衝撃を最小限に食い止め、
    なんとか平静を装いながら立ち上がる。

    「ふん。小癪な」
    小娘に負けてなるものか。

    おれは服を脱ぎ、
    裸になって四股を踏み始めた。

    「ふん。粗末な」

    吐き捨てるように呟くと
    美女も服を脱いで裸になった。

    (だ、だまされた・・・)
    小娘どころではなかった。

    美女は悪魔のごとく微笑み、
    天使のごとく白き両腕を広げる。


    (くそっ!)
    どうしても通らせてはくれないらしい。
     

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    • Tome館長

      2013/11/12 18:52

      「広報まいさか」舞坂うさもさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2013/11/12 11:24

      「こえ部」で朗読していただきました!

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