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    Works 3,356
  • 抱きしめたい

    2016/07/31

    愛しい詩

     抱きしめたい 

     

    ただし 彼女ではなく 

    または 彼でもない

     

     抱きしめたい 

     

    あいにく あなたではなく 

    ましてや 私自身でもない

     

     抱きしめたい 

     

    たまらなく 愛しい気持ち 

    ひたすら 慈しみたいという欲望

     

     抱きしめたい 

     

    けれど 誰でもなく 

    やはり どれでもない 

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  • さびしがり屋

    2016/07/30

    愉快な話

    えーと、もしもし。

     

    あの、私、会員登録したばかりの者なんですが 

    そちら、さびしがり屋さんですよね。

     

    話し相手になってくださる、と聞いたのですが・・・・ 

     

    ああ、そうですか。

    良かった。助かりました。

     

    私、ひとりでいると、さびしくてさびしくて 

    もう死にそうになるんですよ。

     

    ええ、そうなんです。

    ひとりでテレビとか観てても、ダメなんです。

     

    読書していても、パソコンいじっていても 

    孤独を感じるばかりで、やり切れなくなるんですよ。

     

    こういうシステムができて、ありがたいですね。

     

    ああ、そうなんですか。

    正式には、確か「気の向くまま商店街」でしたっけ。

     

    お天気屋とか恥ずかしがり屋とか 

    その日の気分屋なんてのも・・・・ 

     

    ああ、だから会員ではなくて、お客さんなんだ。

    なるほど、納得しました。

     

    通話にはポイントが必要なんですよね。

    へー、お店の商品を買ってもいいんですか。

     

    では、さびしがり屋さんとこの商品、なんですか? 

     

    ははー、お喋りロボットですか。

    ほほー、ペットのハムスターもね。

     

    えっ? 異星人の幼女? 

    まさか、それはないでしょう。

     

    えっ? そうなんですか? 

    ホントですか。

     

    なんだ。それなら、もう 

    さびしがってる場合ではありませんね。

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  • ブランコのリフト

    2016/07/29

    変な話

    いくつものブランコが並んでゆっくり流れてくる。

    スキー場にあるリフトの列を連想させる。

     

    ただし、ここはスキー場ではない。

    山の斜面はないし、雪もない。

     

    ゆっくり移動するブランコの列を除けば 

    ありふれた駅前広場である。

     

    どうも状況が呑み込めないものの 

    他の人たちの作法を見習ってリフトに乗る。

     

    駅前通り商店街の中空を並んでゆっくり運ばれてゆく。

    見飽きた風景がいくらか新鮮に感じられる。

     

    なんとなく遊園地へ向かっているような気がする。

     

    そんな洒落た施設が近所にあったためしはないのだが 

    遊園地がないなら、こんなリフトだってないはず。

     

    そんな屁理屈が通用しそうな気配。

     

    なにしろ、こうして皆とリフトに乗っているだけで 

    もう気分は遊園地なのだから。

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  • Carnaval

    2016/07/28

    楽しい詩

    美しき 孔雀の尾羽 颯爽と 
    なびかせ 開き 悩ましく 

    踊るは Sambaの 
    Carnaval 


    腰をくねらせ 
    胸ゆすり 

    あふれんばかり 
    笑顔の下で 

    サソリも毒蛇も 喰らうとか

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  • 涙が生まれる

    2016/07/27

    愛しい詩

     それは あいまいなまま

     不意に 生まれ

     

     そのわけは

     あとから 考える

     

     

    願いが叶った時 

    叶わない時

     

    苦労が報われた時 

    報われない時

     

    一緒にいたい相手と会えた時 

    その相手と別れなければならない時

     

     

     こみあげてくるもの

     にじむもの

     

     その粒の数で その想いを

     量れはしないけれど

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  • 竜の正体

    2016/07/26

    愉快な話

    竜は どこにいるのでしょう? 

     

    快晴の空に 竜はいません。

    普段、竜は 小さくなって 雲の中に隠れています。

     

    隠れている雲が 大きくなって 黒くなると 

    竜の子も 大きくなって 大人の竜になります。

     

    風が強くなったら それは竜が吐く息です。

     

    雨が降ったら それは竜の汗です。

    竜のオシッコが少々 混ざっているかもしれません。

     

    雷鳴が聞こえたら それは竜の咆哮ほうこうです。

    時々、竜だって オナラくらいしますけどね。

     

    稲妻が走ったら それは竜が 駆け抜けたのです。

     

    ええ、そうです。

    カミナリ様が 竜の正体なのでした。

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  • トラの毛

    2016/07/25

    愉快な話

    昔、トラの毛は 真っ黒でした。

    カラスの羽の色と いい勝負でした。

     

    「もっと明るい色に してください」

    トラは 神さまに お願いしました。

     

    すると 神さまは 断りました。

    「そんな願い、いちいち叶えていたら きりがない」

     

    けれども トラは 諦めません。

    いつまでも しつこく お願いするのでした。

     

    「やれやれ、仕方ないな。ただし 全部は無理だぞ」

    神さまは トラの願いを 半分だけ 叶えてやりました。

     

    そういうわけで、その時から トラの毛は 

    黄色と黒の あのシマシマに なったのです。

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  • 増殖の始まり

    2016/07/24

    変な詩

    君の指先が僕の胸に突き刺さり 

    そのまま背中に突き抜ける。

     

    ここからでは見えない血のマニキュア。

     

    爬虫類を連想させる長い舌が傷口を這い 

    未熟な鳥肌に一枚ずつウロコを移植する。

     

    泡に包まれ、粘液を分泌しながら 

    足を絡ませるカタツムリ。

     

    君の無表情な複眼と無神経な外骨格。

    僕のカラダは麻痺して動けない。

     

    刺し込まれる産卵管に根毛まで痙攣が走る。

    柱頭から花粉管が伸びる。

     

    裂けた染色体、泳ぐミトコンドリア、

    せわしなく渦巻く原形質。

     

    どこか違和感を感じながらも 

    惰性のように増殖が始まろうとしている。

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  • 夕暮れの気配

    2016/07/23

    愉快な話

    なんとなく目が覚めた。

    レースのカーテン越しの窓の外、ぼんやり薄暗い。

     

    夕暮れの気配である。

     

    (寝ながら考え事をして、そのまま眠ってしまったのだな)

    そう思った。

     

    (それとも眠ろうとしていて眠ったんだっけ?)

    どうもよく思い出せない。

     

    トイレに行き、キッチンで歯を磨き、顔を洗う。

    それから畳の部屋に戻る。

     

    万年床の上に座椅子を置き、座って腰まで毛布を掛ける。

    そして考え事の続きをする。

     

    なにかしら面白い話をひとつ考えねばならない。

    それが日課になっている。

     

    どうも頭がすっきりしない。

    (今日は何をしたっけ?)

     

    思い出そうとしてもはっきり思い出せない。

    (いや、あれは昨日の話だよな)

     

    窓の外は、相変わらず薄暗い。

    (まさか・・・・)

     

    手もとの電波時計を持ち上げて見る。

    (やっぱり!)

     

    「午前」の表示。

    そう言えば、かすかに雨音がする。

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  • 玄関ドアの前

    2016/07/21

    怖い話

    ドアチャイムが鳴ったので玄関へ向かう。

     

    普段なら「なんでしょうか?」とまず問うものだが 

    この時はなぜかそのままドアを開けてしまう。

     

    玄関ドアの前、共用階段の踊り場に 

    貧相な顔の若い男が立っていた。

     

    彼はこのマンションの同じ住人。 

    だが、その名前がすぐに思い出せない。

     

    なにやら問題が生じたらしく 

    管理組合役員である私のところに相談に来たらしい。

     

    組合費の滞納の件であったか

    何事かしばらく話し合ってから結論を出す。

     

    「ところで」と彼が言う。

    「理事長さんのお住まいはどこですか?」

     

    おかしなことを言う。

    私の住まいはここに決まっているではないか。

     

    不審そうに首をかしげていると 

    「いえね、昨日の夜、4時過ぎに運動公園で・・・・」

     

    「私に会ったのですか?」

    そう問いかけたのに彼は返事をしない。

     

    夕暮れが迫っているのか、踊り場は暗い。

    彼の表情がわかりにくくなっている。

     

    というか、彼の姿さえ見えにくい。

     

    いや、違う。

    その姿の向こう側が透けて見えるのだ。

     

    それどころか、今では玄関ドアの前に 

    もう誰もいない。

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