宮尾節子

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こころを戦争にやらない

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こころを戦争にやらない
宮尾節子


遠い国には平和がある。
明るい明かりの下で、
おいしいものを食べて
暖かい部屋の中で、
やさしい言葉をかけあって
家族や親しい者たちと仲良く、
満ち足りた気持ちで、今日を終え
清々しい気持ちで、明日を迎え
人びとは笑って暮らしている。

遠い国には戦争がある。
戦場に連れて来られた
花の種は――それでも
地に落ちたところから 
花を咲かそうとするだろう
兵士の足元に――花を
花を、
他に答えを持ち合わせていないのだから。

遠い国には戦争がある
親が子どもを戦争にやらないように
わたしはこころを戦争にやらない
暗くなると明かりを灯し
寒くなると暖めた部屋の食卓で、おいしく食べ
やさしい言葉をかけあって、微笑み
幸せな眠りにつく

兵士のこころがここに
もどって来るように――

明かりをたやさない、食料をたやさない
暖かい部屋で、幸せをたやさない
こころを戦場にやらない

遠い国には平和がある
春には花が咲き、鳥が歌い
人びとの笑い声がたえない――遠い国の
わたしは平和を恥じない。

遠い国の平和を守り――遠い国の
わたしは戦争に参加しない

遠い国がたとえおとぎ話の
国でも――。

そこには
こどもが住んでいる。
そこには
こころが住んでいる。


*修正版

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published : 2016/07/16

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