宮尾節子

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アルハルクラ、すべてを

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アルハルクラ、すべてを
宮尾節子

八十歳から絵を描き始めた
エミリー・ウングワレイというアボリジニの
おばあさん画家は

何を描いているのですか、と問われて
「アルハルクラ(故郷)」と答えた
「故郷の何を」と問われて
「すべてを」と答えた──

わたしはかつて激しい恋をした、あなたの
すべてを欲しいと胸に願った

しかし恋を焼き尽して、時を経て──
今のわたしの胸には、あなたも、
欲しいも、ない

ただ、すべてが
ある

この果てしない荒野を瞬く間に駆けめぐり
大きな手のひらで覆い尽くす──

「すべてを」
この太陽の言葉一つを恋が残した


詩集『恋文病』より

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published : 2015/10/30

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