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ファインアート > 水彩画

還りたい

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還りたい

by kh

  • iコンセプト

    目の前にいる思いが、誰かにとって大切な想いでありますように。

    じゃあ、また明日。
    誰かの思いを置いてけぼりにして、想いは一人ぼっち。

    還る場所を亡くした想いが、また一つ。

    そして、見えない誰かが還ってゆく。

  • i環境・素材

    イラストボード アクリル絵の具

  • i実寸サイズ

    A4サイズ 297×210 mm

  • i製作期間

    2011

  • i作品URL

    ameblo.jp/hero8snow/entry-1127...

  • iコメント

    これは『還りたい』その後(水彩画作品『虹の炉』に続く)のお話。


    暖かな陽気に、目を覚ます。

    俺は重い体を無理矢理起こし上げる。
    何年もの重く思い想い達が、心を沈み込ませる。

    目が焼けて干からびてしまいそうな眩しい太陽。いつも他人面しやがってイライラすんな。
    だが、いつの間にか、夜は明けていた。

    俺は何もしていない。

    ただ、ひたすら、待っていただけだ。

    何を望んでいるのか、分からぬまま、待っていただけだ。

    それでも、夜が明け、世が開けた。

    胸の中で真っ暗闇バイバイと、手を振る。


    誰かの足跡。
    誰かいたみたいだ。


    冷たい空気、仄かな潮風。
    空を見上げても、空は遠い。


    視線を、海に戻す。

    水面が太陽の光を乱反射し、太陽まで虹の道が出来上がっているみたいだ。

    その虹の道の終点である水平線。


    まだ踏み出す勇気はない。


    でも。
    勇気なんかなくとも、動け、動け。
    重かろうが軽かろうが。知ったことか。


    虹の路に一歩、また一歩。進む。
    何年掛かったんだ、この一、そして二。


    あぁ、くそ、また、まただ、面倒臭い。
    何かに付けて、やめる言い訳を探している。

    「でも」「だけど」「だって」
    頭の中で、そいつらと戦う。
    敵の数はいつも多い。煩悩の数かよ、と、ふと思った。

    逃げれば、数は増える気がして、怖くなって、足を止めた。この道は逃げ道なのか。

    ならば、また戻って待てばいい。得体の知れない何かを。


    ほら、大丈夫。ここまで、おいで。

    誰かの声が聞こえる。
    優しい声だ。優しい、なんて何年振りに感じた感情だろう。


    けれど、立ち上がれない。身体が軟体動物にでもなったかのように、骨が柔らかい...?何故?
    歩き方が分からない。
    そもそも歩けたのか?
    自らの足で、歩いた事があったのか?


    身体が言うことを利かない。大事な時にどうして。
    震える心に身を引っ張られそうだ。


    睡魔が訪れ、瞼が重くなる。なんで急に。
    目の前が暗くなり始める。夜になるんだ。


    嫌だよ。あそこへは戻りたくないよ。
    まだ死にたくなくて、大声で泣き喚く。


    それに気付いた男の方に、俺は抱き寄せられた。
    隣の女の方が何か言っている。


    滴が頬まで、線を引く。
    それを見た女は「流れ星みたい」と言った。


    俺は言葉を失い、目を閉じた。

  • iライセンス

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還りたい

by kh

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    目の前にいる思いが、誰かにとって大切な想いでありますように。

    じゃあ、また明日。
    誰かの思いを置いてけぼりにして、想いは一人ぼっち。

    還る場所を亡くした想いが、また一つ。

    そして、見えない誰かが還ってゆく。

  • i環境・素材

    イラストボード アクリル絵の具

  • i実寸サイズ

    A4サイズ 297×210 mm

  • i製作期間

    2011

  • i作品URL

    ameblo.jp/hero8snow/entry-1127...

  • iコメント

    これは『還りたい』その後(水彩画作品『虹の炉』に続く)のお話。


    暖かな陽気に、目を覚ます。

    俺は重い体を無理矢理起こし上げる。
    何年もの重く思い想い達が、心を沈み込ませる。

    目が焼けて干からびてしまいそうな眩しい太陽。いつも他人面しやがってイライラすんな。
    だが、いつの間にか、夜は明けていた。

    俺は何もしていない。

    ただ、ひたすら、待っていただけだ。

    何を望んでいるのか、分からぬまま、待っていただけだ。

    それでも、夜が明け、世が開けた。

    胸の中で真っ暗闇バイバイと、手を振る。


    誰かの足跡。
    誰かいたみたいだ。


    冷たい空気、仄かな潮風。
    空を見上げても、空は遠い。


    視線を、海に戻す。

    水面が太陽の光を乱反射し、太陽まで虹の道が出来上がっているみたいだ。

    その虹の道の終点である水平線。


    まだ踏み出す勇気はない。


    でも。
    勇気なんかなくとも、動け、動け。
    重かろうが軽かろうが。知ったことか。


    虹の路に一歩、また一歩。進む。
    何年掛かったんだ、この一、そして二。


    あぁ、くそ、また、まただ、面倒臭い。
    何かに付けて、やめる言い訳を探している。

    「でも」「だけど」「だって」
    頭の中で、そいつらと戦う。
    敵の数はいつも多い。煩悩の数かよ、と、ふと思った。

    逃げれば、数は増える気がして、怖くなって、足を止めた。この道は逃げ道なのか。

    ならば、また戻って待てばいい。得体の知れない何かを。


    ほら、大丈夫。ここまで、おいで。

    誰かの声が聞こえる。
    優しい声だ。優しい、なんて何年振りに感じた感情だろう。


    けれど、立ち上がれない。身体が軟体動物にでもなったかのように、骨が柔らかい...?何故?
    歩き方が分からない。
    そもそも歩けたのか?
    自らの足で、歩いた事があったのか?


    身体が言うことを利かない。大事な時にどうして。
    震える心に身を引っ張られそうだ。


    睡魔が訪れ、瞼が重くなる。なんで急に。
    目の前が暗くなり始める。夜になるんだ。


    嫌だよ。あそこへは戻りたくないよ。
    まだ死にたくなくて、大声で泣き喚く。


    それに気付いた男の方に、俺は抱き寄せられた。
    隣の女の方が何か言っている。


    滴が頬まで、線を引く。
    それを見た女は「流れ星みたい」と言った。


    俺は言葉を失い、目を閉じた。

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published : 2015/07/13

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