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岩手県奥州市在住の画家。1980年生まれ。水彩絵の具や墨を使った絵画作品を発表しているほかに、音楽イベントなどにおいては「No.06(ナンバーゼロロク)」名義でライブペイントのパフォーマンスを行なっている。作品のポストカードは、全国の取り扱い店鋪で販売中。販売店鋪一覧はBLOG「描猫日誌」で紹介している。
-現在の加瀬さんの活動内容を教えてください。
水彩絵の具や墨を中心とした絵画作品を発表しています。動物を写実的に描いた作品が多く、展示会で発表するほかには、ポストカードにして雑貨屋などで販売をしています。また、音楽などのイベントでは「No.06」という名義でライブペイントも行なっています。
現在、地元である岩手県内での活動をメーンにしており、11月6日からは奥州市水沢区にあるカフェギャラリー1231店で個展「鳥獣戯画」(~12月4日)を開催中です。猫やキリンなどをはじめ、さまざまな動物をテーマに新作を含む約30点を展示しています。お近くにお住まいの方、岩手にお越しの方はぜひご来場ください。
-加瀬さんがお住まいの岩手県奥州市は、東日本大震災で津波による甚大な被害を受けた陸前高田市から、40kmほど内陸部に離れたところに位置しています。震災後、どのような生活を送っていたのでしょうか。
私が住んでいる地域では大きな揺れこそありましたが、沿岸部のような壊滅的な被害はありませんでした。しかし、数日は電気や水道の供給が止まり、物流の停滞によってガソリンが買えない、食料が店頭に並ばないなどの二次的な影響が多々ありました。そんな中、震災から1週間ほど経ったある日、友人の付き添いで沿岸部まで物資を届けに行ったのですが、そこには目を覆いたくなるような光景が広がっていました。車で数十分もあれば行けるような身近な場所で起きた出来事を目の当たりにして、直感的に「何かしないと」と思ったことを覚えています。
そこで、震災の復興を目的としたチャリティ展に作品を出展し、売り上げの一部を義援金として寄付したほかに、別のチャリティ展では来場者へのノベルティとしてポストカードを提供するなどしました。ただ、自分自身が新たに創作活動を行なえていたのかというと、そうではありません。ライフラインが不安定な中、どのように生活していくかを考えることで精一杯で……。4月7日には震度6弱の余震もあるなど、再び絵を描きはじめたのは6月以降でした。
-その3ヶ月の間には生活の中で何かしら感じるものが多かったことかと思います。この度の震災は、作風にどのような変化をもたらしたのでしょうか。
意識としては、作品を見た人が安らぎや明るさを感じられるものをつくっていきたい、と今まで以上に思うようになりました。作品では動物をテーマに描くことが多いのですが、動物には不思議と人を安心させる力があると思うんです。私は猫を飼っていますが、言葉を発しない分どこか心で通じ合う瞬間を感じられます。つらい時に、そっとそばに寄ってきてくれることがあるのですが、心が落ち着くんです。今後、写実的な作品を通じて、動物の持つ不思議な存在感を表現しようと考えています。そして、それを表現することで、物事の本質や真理を感じとっていきたい。そこに何か、私が絵を描き続ける理由があるように思うのです。
-震災の爪あとは今なお強く、岩手県をはじめ、東北地方、日本全体で復興への歩みを進めている最中です。被災地のクリエイターとして、被災地の人間として、復興への思いや今後の展望を教えてください。
私は、クリエイターとしてはまだまだ小さい存在です。たくさんのお金を集めることはできません。しかし、自分が岩手県の代表の一人として、復興への意識を持ち続けることが大切だと考えています。東京をはじめとする各地で、展示会やライブペイントに参加し、いろいろな人に岩手の復興の現状について話し、本来の岩手の魅力を伝えていくことで、意識を向けてもらえる。少しずつの積み重ねにはなると思いますが、一人ひとりが意識することで大きな結果へとつながるのだと信じています。
(ライター 石川裕二)