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CREATORS'S VOICE Vol.008 - 魚住幸平

Profile

魚住幸平:イラストレーター

大阪在住、2008年よりイラストレーターとして活動を開始。
「リリルラ」をコンセプトにほんの少しのロマンチックと、ほんの少しのペインを描く。
2010年1月に行われた公募展「雪月華」でCREATORS BANK賞を受賞。

Interview

公募展「雪月華」のサイトはこちら 個展「 Lilirura -ロマンチック・ペイン- 」の詳細はこちら

雪月華のCREATORS BANK賞おめでとうございます。受賞された感想をお聞かせください。

ありがとうございます。大変光栄な事でとても嬉しく思っています。正直、僕の作風でCREATORS BANK様より賞を頂けたことは意外で驚きました。クリエイターサイトに選んで頂けるというのは、名誉なことだと受け止めております。自信がつきました。ありがとうございます!

雪月華では優秀作品がニューヨーク、東京、京都で展示されました。 魚住さんの作品はニューヨークと京都で展示されましたが、いかがでしたか?

企画を盛り上げる運営の方々のパワー、それに応えるかのような作品達のパワー、そこに参加できて興奮しました。 僕の作品を選んで頂いた2会場とも海外の方が選定者ということで、自分の中の偏りを自覚することができ、今までとは違うアプローチからの制作を試みようと思う機会にもなりました。色々な視点から色々なものを得ることができる企画で、参加させて頂けたことを嬉しく思っています。まだどうなるかわからないのですが、大変光栄なお話を頂いて、今後の活動の大きな励みになっています。

12G.で行われている初の個展「 Lilirura -ロマンチック・ペイン- 」はどのような気持ちでのぞまれましたか?

最初にお話を頂いた時、自分の初個展という事よりも、ニューオープンのギャラリーの杮落としという事のインパクトが強くて固まりました(笑)ギャラリーの印象や質を決めてしまう可能性があると言う事にまずプレッシャーを感じました。 でも、そのオープニングを僕でと決めて下さったのだから、悩むのはやめてそれだけの評価と期待を頂けたのだと素直に嬉しく思い、ありがたくお受けさせて頂きました。 そのお気持ちに報いるには、もうただひたすら、この舞台を楽しむしかないですよね。 個展の準備に際しても本当に温かいご配慮を頂き、本当に好き勝手、思いのままに楽しませて頂きました。二度と同じ色が作れないように、感情も作品も今だけのものだから今だからこそできる最高の個展を!と言う気持ちでした。 展示作品はジークレーという手法で印刷されています。 この印刷は初めての経験だったのですが、担当して下さった会社がとても親切で、抽象的で曖昧な言葉も汲み取って丁寧に色校して頂き、イメージそのままを再現して頂けて感激しました。

作品のコンセプト、伝えたいことを教えてください。

コンセプトは「リリルラ」です。造語なんですが、リリルラとは魔法の呪文です。 幼い頃から寂しい絵、楽しい絵、呪いのような絵、いろんな絵をたくさん描いてきました。 そのどれもが、感情ひとつ違うだけで生まれなかった万華鏡のような絵で、色ひとつでさえ同じ色には二度と巡り逢えないということを、どうしようもなく甘く、そしてたまらなく切なく感じながら、いろんな色の絵の具で、玉虫みたいな指先で、何度も唱えてきた呪文です。 だけど魔法は、いつも素敵なことばかりを叶えるわけでなくて、その気持ちひとつで喜ばせることも貶めることも叶う ロマンチックな棘。僕が知る世界もそれに同じで、素敵なことばかりでは成り立ってはいなくて、美しさも醜くさも全てが相対した世界。浮き世は光と闇、雄と雌。人には愛と憎。生と死、虚と実、有と無、表裏、だけど一体で、こんなふうに何もかも全て、番いなくしては存在できないという事を、愛しくも切なくも思うから、僕が描くのは、ほんの少しの ロマンチックと、ほんの少しのペインです。 僕がそうであるように、表現も綺麗ごとばかりでは成り立っていません。発信する立場にあって、感情だけは決して抗えないから、一方的なものであるほど乱暴なものにもなり得えます。だから上手く描くことより、心を込めて描くことを大切にしています。 だって、制作の始まりは人で、伝えたい終着も人なのだから。

どのような手法で制作されていますか?

アナログとデジタルを併用して制作しています。現在の手法の原形は子供の頃からあったのですが、水と油みたいに画材同士が共存できない方法だったので、そういう部分は頭の中で補完して満足してました。 想像する物と同じ物なんてどこにもなくて、本当に欲しい物は自分で作るしかないんだって、幼い頃思っていました。 でも、思えば作れるわけじゃなくて、いつだって想像で満足するしかありませんでした。 だからPCで絵を描くようになって「あ!やれる!」って思って、初めて本当に欲しい物を作れて、ものすごく嬉しかったです。今では画材に気兼ねなく何でも使ってます。使用ソフトはフォトショップ7です。

影響を受けたものについて教えてください。

少女漫画や春画、漢字や額縁、ドアノブとか、何もかも装飾的に見えて大好きでした。少女漫画や春画の話をすると、あぁ確かに!って思う方と、意外って思う方がおられて、 そのもの自体よりも、そこから受けた感情だったり精神的なものの方が、制作する上で影響として反映されてるのかな?と思います。 小さい頃、真っ黒な世界を想像することはできても、その世界から色を取ることがどうしてもできなくて、ここが人間の限界かって、子供心に傷ついたことがありました。 もし何もない真っ白な世界で、自分が肉体を持たない意識だけの存在として育ったら。白以外の色をきっと創造できない。 草木や花、鳥や動物達、虫も、火や風も、夜や朝、星も海も大地も、そして自分自身の姿さえ、僕には創造できないんじゃないかって。 異次元の世界や、空想の生き物を描けたって、それは無からの創造ではなくて、なんだ、人間の想像力なんて結局神様が用意した世界の上でしか成り立たないのかって、どうしようもなく泣きたくなりました。 人間、自分の中にないものは外に出せないですもんね。 だから、絵としての成分より、その時の感動や衝撃が今に息づいてると感じるし、生きて来た全ての時間に影響を受け、今も受け続けていると感じます。

イラストを描き始めたきっかけは何でしょうか。

ぬり絵でした。幼稚園の頃は、ドレスの女の子や装飾が描いてあるぬり絵が好きで、千代紙を貼ったり、模様を好き勝手描いたりしていました。 でもそれだけじゃ満足できなくなって、自分で描いた絵にぬり絵してました。 でも、それが無からの創造という意味でのオリジナルではないのが、とても切なかったです。オリジナルって言葉も 知らなくて、言葉にできないぶん余計にもどかしくて、勝手に作った魔法の呪文を唱えながら、吐き出すように落書きしたり、土の上に描いた線を落ち葉や石で飾ったりしてました。 その魔法の呪文が「リリルラ」です。他にも効力ごとにいろんな呪文がありました。 今思うとただ子供で、気持ちを吐き出す手段でしかありませんでした。

イラストレーターになられた経緯を教えてください。

実を言うと、気持ちの中では16歳の時に絵を描くことをやめていたんです。 その当時誰に見せるわけでもなく、ただいつものように想いのまま描いた絵が、たまたまそれを見た近しい人を傷つけることになってしまいました。それで発信するものが一方的な物である程、乱暴なものにも成り得ると知って、なんて恐ろしい事をしてるんだろうって感じるようになったんです。 それからずっと、向き合う努力もしてきませんでした。むしろずっと逃げていて、そのくせ完全に手放すことも出来ずにいました。 学校でも感情が入らないように、ただ課題をこなしていて、でもそんな無関心さえも表現される事に気付いていなかったんです。だから、ある時先生に「何でそんなにモチーフに対してよそよそしいのか?」と問われて、もう居たたまれない気持ちになりました。そこからは完全に筆を置いて、自分の絵を描く事はありませんでした。 感じながら胸が痛んで、一方で傷つけた人のことを想っていました。一番最初に、僕の心を心で感じてくれた人。 なのにこれでは描かない理由をその人のせいにしてるのと同じ。 それこそが乱暴だったと気付きました。 憐れみも慈しみも、憎しみも愛しさも、どちらも持って僕は生まれた。だから美しさも醜さもいっさいがっさい塗り込めて、そうやってしか描けない。 ひとりごとの絵ばかりを描いてきたけど、語りかける、あるいは応える、コミュニケーションのための絵を描きたいと思うようになりました。 人の心を動かすのは人の心でしかないのだと思います。 僕は感謝と野心と覚悟とを手に入れて、動かずにいられませんでした。 そこからはもうただ、イラストを仕事として始める為の準備を始めていました。

そんな状況からどのようにして“自分の絵”が描けるようになったのでしょうか。

2年前の今頃、「まだか?そろそろええんちゃうか?」って、僕のイラストを街中で見るようになる事が夢だと言ってくれた友人が「だから描けよ」って。 その瞬間、その言葉の為に描きたいって思いました。誰かを想って描く、そんなこと今まで考えもしなかった。どう描くんだろう?見てみたい、昔よりずっと豊かになったはずの今の感性を。そんな気持ちまで一気に溢れてきて、ダメだ我慢できない、もう描く!って決めていました。 それから不思議な事に、会う人会う人が僕の絵の話をしてくるようになって、いろんな気持ちを知りました。約10年間、誰も「描け」なんて言わず、ただずっと想ったり、気にかけたり、待っていてくれた。途方もない優しさに、嬉しいと

苦労したこと、失敗談などはありますか?

準備を始めなきゃ。そう思ってまずは、自信が必要だと思いました。だから自分の絵と向き合うために画材を買いに行ったんです。 でも好きだった画材が廃盤になっていて、浦島太郎の気分でした( 笑) それをきっかけに、もうどうせゼロなんだからPCで描いてみよう!と思い貯金を始めました。納品も原画ではなくデータのつもりでいたので。でもPCやネットに関してすごく疎くて(今もですが)、一緒に買ったペイントソフトがPCとバージョンが合わなかったみたいで、使えなくて泣けました。 でもその失敗のおかげで、今ではフォトショップと仲良しになれました。

イラストレーターになってよかったこと、醍醐味は?

畏怖するほど素敵なことばかりが起こっていて、本当に驚きと感謝の日々です。 ただ、醍醐味を語れるようになるのは、まだまだ先のような気がします。それでも、日々は可能性に満ち満ちていて、素敵な予感でいっぱいです。 幼い頃に抱いたあの想いは今もあります。 完全な無からの創造は僕にはできない。だからあるのは想いだけ。才能が 欲しいとは思わないし、自分の作品が大好きです(笑) 他の人の作品見ると凹んだりするし、あったら嬉しいとは思いますけど…。でも、才能でなくても、誰にも創れないものを創れます。 100人が同じりんごを描いたら、100通りのりんごが生まれるじゃないですか。 感性は指紋と同じ、誰とも被りようがないんです!ありものの世界の上で、それでも今は自分を 活かせている。そのことを嬉しく感じています。

今後の目標、やりたいことを教えてください。

ずばり「如何にでっかく未完であり続けられるか!」です。歳と共に完成に向かうより、円熟と共に可能性を広げていきたいです。だけど人生は、そんな想像なんて遥かに越えて 素晴らしいです。だから存分に、楽しんでいきます!

最後に、魚住さんにとってイラストとは?

恋に似てると思います。気持ちはいつだって満ちるわけじゃないけど、どうしようもなく好き。 求めながら怖れたり、 相手を思いやるほど自分の心に嘘を吐く。たまらなく苦しくなって、それでも止められない。病気ですね(笑) だけど、幸せなんです。 幼い頃は誰に見せるわけでもなく、ただ感情を吐き出す手段でした。 今では仕事であろうと 自主制作であろうと、描いた先に必ず人が居て、なんだか手紙のようなものだとも思います。 そして、自分の能力を最大限に活かせる場だとも思っています。 イラストでなら、沢山の恩に対して、有り難い期待に対して、報い応えることができる。僕に使える唯一の魔法だと信じています。そういう自信も、自負もあります。 大好きなので!

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