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2008年、彗星のごとく現れた気鋭のグラフィックデザイナ−、中野貴志さん。それまでも作品を制作してきたが、Intuos3を使うようになって作品に自信が持てたという。中野さんのグラフィック魂をIntuos3が呼び起こした。
1974年北海道生まれ。30歳で突然思い立ちPCを購入。独学でグラフィックを創り始める。2008年より「smear graph(スミアグラフ)」名義で本格的 にフリーランスとして活動を開始。海外でも絶大な支持を得ているemotionalバンドnature livingのベーシストでもある。
グラフィックデザイナーの中野貴志さん。その傍らでバンド活動も10年来続け、インディーズでのCDも出している。しかし、そのジャケットのデザインが不満で自らデザインを手がけるようになったのがデザイナーとしての第一歩だったという。ところが、当時(5年ほど前)は、PCも持っておらず、デザインの勉強もしたことがなかった。それでも自らの音楽を装うCDジャケットにもこだわりたいという気持ちが強く、「とにかくジャケットを作りたかったんです。それでPCやソフトを揃えてデザインしたのが最初です」と言う。その後、せっかくPCやソフトも買ったことだし、デザインの勉強でもしようかと、Webの制作会社でアルバイトするなどしてデザインのセオリーやスキル、アプリケーションの操作を身に付けていった。きちんと独立したのは2008年、つまり今年で、その意味で中野さんはまだ新人デザイナーとも言えるのだが、経歴と表現意欲はまったく別物。中野さんが生み出す作品は独特の世界観に溢れ、すでに「中野ワールド」ができあがっている。もっとも、以前に美容師をやっていたこともあり、「デザインや表現が気になるタイプ」であったというから、その素養は十分にあったのだろう。ただ、Web制作のアルバイトを経て独立後、紙の制作物も多く作るようになると、やはりWeb制作とのルールの違いにも悩まされた。たとえばRGBとCMYKの違いがよくわからず「色が褪せて何これ?」と思うようなこともしばしば。そのあたりは知人に教えてもらうなどして仕事をしながら覚えていったそうだ。
中野さんの作品はコラージュがメインだ。「絵を描くのが得意というわけではないので、写真を撮って、それらを組み合わせて作ることが多いです。作品は、その素材となる写真を見ていてこれとこれを組み合わせたらおもしろいんじゃないか、といった形で作っていきます」。作品づくりに使えるようにと、素材の写真は常日頃から撮影し、ストックしている。もちろん、仕事の依頼に合わせての撮り下ろしもある。コラージュ作品では、Photoshopでの切り抜きの作業が必然的に多くなる。中野さんはペンツールを使ってパスで切り抜くが、マウスで操作すると思い通りに切り抜けない上、作業も面倒でテンションが下がってくることもあったという。ところが、昨年Intuos3を導入したところ、思い通りの切り抜きをスムーズに行えるようになり、作品制作が楽しく、しかも速く行えるようになったそうだ。ただ、最初は少し操作に戸惑った。
Intuos3を購入したのは昨年で、使ってはみたものの最初は馴染めず使用していなかった。その後しばらくして「せっかく買ったのだから」と、ワコムのWebサイトで情報を集める。そして、コラージュ作品を作るWebデザイナーの西田幸司さんの記事では「ペンタブレットを使うとこんな作品ができるのか」と感銘を受けたり、TIPSの記事を読んで「あ、なるほど。こうすれば使いやすくなるのか」と操作を理解したりした。それがきっかけで、もう一度Intuos3を使ってみると、1ヶ月くらいでそのコツを覚えてしまった。今では、PC全般の操作もすべてマウスの代わりにIntuos3のペン1本で行っている。使いにくさはまったく感じないという。もはやIntuos3は手放せない存在だ。
Intuos3を使った切り抜きを中野さんは「輪郭をなぞって線を描くという感覚ですね。ところがマウスだと点と点をつないでいくという感覚なんです。切り抜き作業の動作がこれほど違うとは思いもしませんでした」と言う。実際、作業のスピードは飛躍的に向上し、マウスだと1時間がかかっていたものがIntuos3だと10分と約6倍もスピードアップ。それだけではない、マウスではあきらめていた難しい切り抜きも細かく素早く行えるようになり、切り抜き精度もかなり良くなった。こうして作られた作品は、中野さん自身が見ても以前の作品とはクオリティが違うと感じている。それで、作品を人に見てもらう自信がついたと感じるようになり、結果的にグラフィックデザイナーとしてデビューに至る。少し大げさに言うと、Intuos3が中野さんのグラフィックデザイナーとしてのプロデビューをアシストしたといったところか。「Intuos3を使って作った作品とそれ以前の作品とでは、全然違います。発表している作品以外にもたくさん作っているのですが、あまり見せたくないですね。それくらい違うんです」。
Intuos3で始まったペンタブレット歴だが、ということは本格的に使い始めてまだ1年にも満たない。今、中野さんはIntuos3の可能性を探っているところだ。例えば、コラージュに手描きのテイストをプラスする際に、ブラシツールを筆圧でコントロールするなど試している。まだ形にはなっていないが、使えそうだという実感はあるという。最後にIntuos3を使うその理由やメリットを尋ねた。「Intuos3を使うと操作とイメージのずれが少なくなるんです。それによってイメージを形にするのが早くなります。すぐ形になるから、新しいイメージもまたすぐに沸いてくる。クリエイティブな思考を妨げないんですね。購入時はちょっと値段が高いかなと思いましたが、今思えば決して高くありません。それだけのメリットがあります」。
中野さんのサイト「smear-graph」。活発に制作を続けるバリエーション豊かな作品を見ることができる。コラージュに興味のある人もない人も必見。ブログも。