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著作権法は、表現態様別に、9つの類型を例として挙げています。その9つの類型とは、小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物 音楽の著作物 舞踊又は無言劇の著作物 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物 建築の著作物 地図又は学術的な性質を有する図画、図表、模型その他の図形の著作物 映画の著作物 写真の著作物 プログラムの著作物、です。
絵画、版画、彫刻その他、およそ美的鑑賞の対象として創作的に表現されたものが美術の著作物にあたります。漫画やイラストも、美術の著作物にあたります。
鑑賞の対象となる美的創作物である純粋美術だけでなく、実用目的の物品に応用される美的創作物である応用美術も、「美術の著作物」に含まれるかがしばしば問題になります。この点、一品モノの陶芸などについては、著作権法は「美術の著作物」には美術工芸品も含むとしているので、「美術の著作物」に当たることになります。この「美術工芸品」とは、「実用性はあるものの、その実用面及び機能面を離れて、それ自体として、完結した美術作品として専ら美的鑑賞の対象となるものをいう」と解されています。
しかし、一品モノではない大量生産品については、著作権法とは別に、デザインを保護する意匠法が存在することから問題になります。この点に関連して、チョコエッグのおまけであった動物や妖怪などのフィギュアの著作物性が問題になった事件において、平成17年7月28日の大阪高等裁判所の判決は、「実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となるだけの美術性を有するに至っているため、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の創作性を具備していると評価される場合には」美術の著作物として保護される場合があるとし、検討した結果、妖怪フィギュアについてのみ、著作物性を認めました。このように、大量生産品が美術の著作物に当たるかは、具体的事情次第といえます。
マンガの登場人物は、著作物でしょうか。マンガは美術の著作物にあたることは前述しました。では、具体的なマンガ作品を離れて、そのマンガのキャラクターそのものを著作物ということができるでしょうか。
この点、最高裁判所は、ポパイ・ネクタイ事件の判決(平成9年7月17日)で、キャラクターとは、「漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念」であるとし、「一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画では、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、登場人物のキャラクターをもって著作物とはいえない」として、キャラクターの著作物性を否定しています。つまり、キャラクターそれ自体は、受け手それぞれの中で作られる抽象的なイメージであって、具体的に表現されたものではなく、著作物ではないということです。そこで、例えば小説の登場人物を自分なりのイメージでイラストを描いても、著作権侵害の問題にはなりません。
他方、マンガや小説の挿絵などで具体的に描かれたキャラクターの絵自体は、著作物ということになります。そこで例えば、マンガのキャラクターを無断でTシャツの絵柄に使用した場合、キャラクターの無断使用自体を理由としてではなく、マンガの絵を勝手に翻案したという理由で著作権侵害になります。したがって、いずれにせよ、著作権で保護された漫画のキャラクターを無断で使用することが、原則として許されないことに変わりはありません。
そうすると、コミケで販売されているマンガの同人誌はほとんど無断の二次的創作ということになりますが、権利者から黙認されているのが現状でしょう。同人誌から有望な作家が生まれていることからしても、二次的創作にある程度目をつむることで、著作権法の目的である文化の発展に寄与する場合があると考える向きもあります。