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クリエイターと著作権 文:弁護士 益山直樹

第一回 「著作物」(総論)

クリエイトするということ

 作品を通して人に何かを伝えることは素晴らしいことだと思います。伝えたいことは、頭の中に湧き上がったイメージを表現したイラストかもしれないし、インスピレーションを得てできたメロディや詩かもしれない。奇跡的な一瞬を捉えた一枚かもしれないし、人に勇気を与える物語かもしれない。研究の成果の論文かもしれないし、軽妙なコラムかもしれない。自分の中から湧き上がる何かを形にしたい。それを人に見せて、伝えて、感動させたり、考えたりしてもらいたい。創作活動の動機には、そのような気持ちがあるのではないでしょうか。

 そして、その湧き上がる何か伝える手段は、絵画や彫刻、音楽や詩、小説・脚本、写真、映像など、人それぞれだと思います。そうしてクリエイトされたものは、クリエイトした人の精神活動の発現です。そのような人々の精神活動が盛んに表現されることで、私達の文化が発展していきます。人の精神活動の発現として創作された物を、発表したり、何かに活用することができるのは、原則的にはそれを創作した人だけであり、その人は他人がそれを勝手に利用するのを禁止したり、利用を許すことができるという権利を得ます。

 そのような権利、つまり著作権の対象となるのが、「著作物」です。著作物であれば、それについて著作権が発生します。CREATORS BANKで公表している皆さんの作品も、おそらく全て「著作物」であり、それぞれについて皆さんが著作権を有しているはずです。逆にいえば、「著作物」でないものについては、著作権は生じません。そこで今回は、そもそも「著作物」とは何かをご説明します。

「著作物」であるためには

 「著作物」とは、「01思想または感情を、02創作的に、03表現したものであって、04文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」である。著作権法は、「著作物をこのように定義します。

 このうち、04の「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」というのは、およそ鑑賞の対象になるものであれば足り、大量生産される実用品等は含まないという程度に理解をしてもらえればよいでしょう。重要なのは、010203です。

「思想または感情を」〜精神活動の産物であること
まず、「思想または感情を」についてですが、ここでは「著作物」とは、人間の精神活動から生まれるものだということが示されています。小説であれ、写真であれ、演劇であれ、絵画であれ、音楽であれ、いずれも人の精神活動が表現されたものです。ですから「思想または感情」とは、人間の精神活動全般という程度の意味に過ぎないと考えられています。そこで、単なる事実やデータそれ自体は、これが表現されても「思想または感情」を表現したものではないので、著作物になりません。ですから、客観的な事実を伝える短い報道や統計データなどは、「著作物」といえないことになります。もっとも、事実やデータを素材にしていても、表現方法に次に説明する創作性があれば「著作物」になりえます。
「創作的に」〜作者の個性が表れていること
次に、「創作的に」、つまり創作性の要件について述べます。これは著作物というためには、その物に、それを作った人の個性が表現されていなければならない、ということです。この創作性は、とくに高度なものが要求されているわけでなく、子供のお絵かきでもその子の個性が表れていれば認められます。しかし、例えば短い時候の挨拶文のように、誰が書いても似たような表現になるものは、この創作性が認められません。もっとも時候の挨拶文であればおよそ著作物にはなりえないというわけではなく、そこに作者の個性が表現されていれば、「創作性」が認められます。アートの分野であれば、創作性が否定されることはほとんどないと思われます。
なお、創作性は、具体的な表現方法について認められれば足り、思想・感情そのものが、オリジナルなものである必要はありません。この点は次に説明します。
「表現したもの」
最後に、著作物は何より、「表現したもの」でなければなりません。例えば、物語の筋書きを考えても、それがアイデアにとどまっており、脚本や小説などで具体的に表現されていなければ、「著作物」とはいえないのです。同様に、ファッション雑誌の写真のモデルのポーズを真似てキャラクターを描いても、ポーズ自体はアイデアで「著作物」ではないので、著作権侵害の問題にはなりません。ですから、他人のアイデアを「パクる」行為があったとしても、直ちには著作権の問題にはならないのです。思想・感情それ自体が同じでも、その具体的な表現が異なるのであれば、別個独立の著作物なのです。例えば、ある写真家が様々な廃墟を訪ね歩き撮影した写真集がヒットしたので、他の出版社が同様の廃墟写真集を企画して出版したという事例が実際に訴訟で争われたのですが、別の写真家が自分なりに撮影方法を工夫したオリジナルな写真を集めたものであれば、被写体が同じであってもそれは廃墟の写真集を作るというアイデアを真似したにすぎず、別個の著作物になるので、著作権侵害ということにはならないのです。また、有名な画家の作風や手法を真似ても、作風や手法は「表現したもの」ではありませんから、それだけでは著作権侵害の問題にはなりません。

 以上、今回は、著作権とは「著作物」を独占的に利用できる権利であるところ「著作物」とはそもそもどういうものか、その定義と意味についてご説明してきました。特に重要なことは、著作権はあくまで具体的に表現されたものについて発生するものであり、表現手法やアイデア自体には著作権は発生しない、ということです。次回は、著作物の類型についてご説明していきます。

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