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クリエイターと著作権 文:弁護士 益山直樹

イントロダクション クリエイターと表現活動

はじめに~この記事の目的

 現在、CREATORSBANKに登録しているクリエイターは一万数千人いて、十数万点の作品が公開されています。これらの作品すべては「著作物」であり、個々のクリエイターは、自己が制作した作品それぞれについて「著作者」であって「著作権」を有しています。では、そもそも「著作物」とは何であって、クリエイターはその作品についてどのような権利を持っているのか、理解している人はどれくらいいるでしょうか。

 誰かから注文を受けて制作をするとき、著作権の所在や行使の制限についての約束に疑問を持ったことはないでしょうか。また、日々の創作活動において自分の作品が誰かの権利を侵害することがないか気になることはないでしょうか。現代社会において、私達はみな法律とは無縁ではいられません。法律を知らないために自分の正当な権利を侵害され、泣き寝入りするなど不利益を受けることもあれば、逆に法律を知っていることで交渉を有利に進めることができたり、法的な問題に気付くことができたり、疑問や不安が法律相談一つで簡単に解決することもあります。皆さんクリエイターも同じです。

 この連載記事の目的は、創作活動をして生きていこうとするクリエイターの皆さんが、その活動に関わる法律知識等について少しでも知っておくことで、他人の権利を侵害することなく、自己の正当な権利・利益を確保しながら活動を続けていけるようになることにあります。これまで弱い立場になりがちだったクリエイターの皆さんが法的知識を身につけることで、作品の公正な利用を推進し、適正な利益を享受できるようになることにもつながっていきます。そのために、契約や著作権法を中心とした法律知識を得る機会をここで提供していきたいと考えています。

表現活動の社会的意義

 人がそれぞれの思想や感情を色々な手段を使って自由に表現し人に伝えられることは、私達の社会を成り立たせる前提です。芸術にせよ言論にせよ、自由な表現活動が保障されていることが、文化の発展に寄与するだけでなく民主主義社会の基盤であることは明らかでしょう。

 表現の自由は憲法に明記されていて、国があつく保障するべき人権です。三谷幸喜さん脚本の「笑の大学」は、戦前に行われていた演劇の検閲を題材にしていますが、あのような検閲は現代では憲法違反となり許されません。ですから公権力が法令等で表現行為を規制することは、大きな社会問題となります。最近では、「非実在青少年」の性的描写を規制する東京都青少年育成条例改正案について漫画家や出版社から強い反対が巻き起こりました。

 もっとも、表現活動が他人の権利を侵害したり、公の秩序に反する場合は別です。たとえば建築物に落書きをしたり、名誉棄損やわいせつな表現を公然と行えば犯罪になります。つまり、犯罪にならない限り、公権力が表現活動を規制することは、とてもハードルが高いのです。

自分の権利を守るために

 しかし、公権力ではなく私人であれば、場合によっては他人の表現活動を制限することが容易です。注文を受けて制作した作品について、特定の方法以外での発表を許されなかったり、作家や漫画家が特定の出版社でしか作品を発表しない契約を結ぶこともあります。

 自分の作品を勝手に誰かに利用されれば、差止めや損害賠償請求、告訴をすることもできます。著作権を持っている人はこのように、他人が自分の著作物を利用するのを制限することができるのです。また、著作権者でなくても、自分の名誉やプライバシーに関わる表現に対しては法的手段をとることが可能です。

 私人の間では、公的な秩序に関わる事柄以外の個人の自由にできる事柄について、法律の定めとは異なる契約を自由に結ぶことができます。ですから、法律知識の有無や力関係で、法律で認められた権利を制限させられるなど、不利な立場に立たされることも現実としてあります。そこで、クリエイターが不利な契約を求められることで弱い立場に立たされることもあるのです。契約の自由が原則であるからこそ、クリエイターは自分の権利を自分で守っていくという意識を持たなければなりません。

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