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クリエイターと著作権 文:弁護士 益山直樹

 第四回「著作権相談室」

 著作権相談室は、読者のクリエイターの皆様から寄せられた著作権に関する質問・相談内容に対して、
益山弁護士に丁寧に解説していただく“クリエイターと著作権”特設コーナーです。

 私はCGクリエイターをしています。これまでは印刷物関係のCGイラストを制作してきましたが、今後はアニメーションにも力を入れていきたいと思っています。
 さて、イラストであれば通常一人で描くので単純だと思いますが、アニメーションとなると数多くの会社やスタッフが制作に携わるので、権利関係が複雑になるのではと思います。しかし、アニメーションに関する権利を定める規定は見当たりません。アニメのテロップの「製作・著作」の表示にはテレビ局や大手プロダクションの名前があります。つまり、企画し出資した会社が著作権を持つのだと思います。その場合、背景を描いた人や、アニメの一部を制作したスタジオ、また声優やサウンド・クリエイターの著作権はどうなるのでしょうか。そういう人達にも著作権が残っているとしたら、著作権を持っている会社がCMを流したり、プロモーションビデオを作ったり、HPで宣伝したりすれば二次使用料はもらえるのでしょうか。
 また、下請けの制作会社などが「○○のアニメを制作しました」というのを実績として表示して営業活動に使用するとすれば、元請会社や、他の会社が制作した映像に対する許可、サウンド・クリエイターや声優に対する許可を得る必要があるのでしょうか。
 私が一番心配しているのは、自分が仕事で制作したアニメーションの著作権を取り上げられた場合でも、自分のHPやYouTubeなどで仕事事例として宣伝できるのかという点です。以上、ご教授いただければ助かります。

ご質問を整理すると、まず01アニメーションの著作権者はだれか、02作画、仕上げ、背景、撮影、編集、音声に携わった人々の権利はどうなるのか、03自分が制作に一部関与したアニメを実績として自分のウェブサイトで紹介してよいか、という3点になるかと思います。以下では、テレビ放送やネット配信、劇場公開される日本のアニメーション作品の制作にフリーのCGクリエイターとして参加する場合を想定して回答します

01アニメーション作品の著作権者
 一般に、アニメ作品も「映画の著作物」に当たります。イラストであればそれを描いたイラストレーターが著作者であり著作権者となるように、著作者が著作権を持つのが原則ですが、著作権は譲り渡すことが可能なので、著作者と著作権者が別人になることがあります。映画の著作物の著作権者については法律上、その著作者(監督など)が映画製作者に対しその映画の製作に参加することを約束しているときは、映画製作者が著作権を持つとされ、この場合著作者と著作権者が別になります。アニメ作品も映画の著作物である以上、監督などの著作者が製作者から依頼を受けて参加すれば、そのアニメ作品の著作権者は製作者となります。映画の著作権者となる「映画製作者」の例ですが、日本ではアニメや劇場映画の場合、出版社やテレビ局、広告会社、大手制作会社などが「製作委員会」を組んで共同で「製作者」となり、そのメンバーで著作権を共有し、役割分担して行使するのが一般的です。
 声優については「実演家」に当たり、その声の演技には著作権ではなく著作隣接権と呼ばれる権利が生じますが、監督などの著作者と同様に実演家である声優も、アニメーションのキャラクターを演じることを了承して声の演技を収録すると、その後の利用には権利が及ばないとされています。ですからテレビで放映したアニメをその後DVDで販売しても追加報酬は発生しないのが原則なので、もし二次利用の際に追加報酬が発生するようにしたければ、出演契約の際に二次利用の条件を定めておくことになります。一般に、私的な権利に関する事柄については法律の規定と異なる内容の契約を結んでもそれは当事者の自由だからです。
02アニメ制作に携わった人々の権利
 そもそも作者の個性が表現された創作物でなければ、著作権は発生しません。そこで例えばCGクリエイターがアニメ作品のCG部分の制作に関与しても、依頼されて仕事を請け負って、作品の世界観を統一するためにあらかじめ定められたキャラクターやメカ等の設定に従い、ディレクションを受けながら制作すると、そこには独自の創作行為はありません。したがってこのような場合、そのCGクリエイターに著作権が発生しないと考えられます。CGクリエイターに限らず、作画監督、美術監督、音響監督などの指揮のもとで制作に携わる各担当スタッフも同様です。もっとも、参加したからにはエンドクレジットで氏名表示はされるでしょう。
03制作に携わった作品を実績の宣伝に使ってよいか
 上に述べたように、依頼を受けて下請としてアニメ作品の制作に参加したに過ぎないCGクリエイターにはその作品の著作権はありませんから、「自分が仕事で制作したアニメーションの著作権を取り上げられ」るという事態は最初から生じないことになります。それでも仕事の実績となることに違いはないので、参加した作品のタイトル等を自分のウェブサイトに表示することは問題ありません。現に映像制作会社のウェブサイトをいくつか見てみると、制作に参加した作品のタイトル等が列挙されています。しかしアニメ作品そのものの著作権は製作者にありますから、参加したアニメ作品の動画をそのままアップロードすることはすべきではないでしょう。

著作権相談室

クリエイターの著作権ではクリエイターの皆様からの疑問・質問を募集しています。
著作権に関して理解できてない事、身近に起こったトラブル等、
著作権に関する事ならどんなことでもOKです。
皆様からの質問は"クリエイターと著作権"の特設コーナーにて益山弁護士により
丁寧に解説させていただきます。

疑問・質問は以下のメールアドレスまでお送りください。

メール先

【件名】クリエイターと著作権:質問・相談係
【本文】お名前(クリエイター名)・職業・年齢・性別・CREATORS BANKのIDと
ご相談・質問事項を添えて上記メールアドレスまでお送りください。

沢山のご相談お待ちしております。

※一部のご相談・ご質問内容に対して解説記事を公開させて頂きます。
※記事にて公開させていただくのは職業・年齢・性別のみです。
 お名前やCREATORS BANKのID等は公開されません。

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