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クリエイターと著作権 文:弁護士 益山直樹

 第三回「著作権相談室」

 著作権相談室は、読者のクリエイターの皆様から寄せられた著作権に関する質問・相談内容に対して、
益山弁護士に丁寧に解説していただく“クリエイターと著作権”特設コーナーです。

「私はウェブ制作の仕事をしています。あるお客さんから注文を受けて作ったサイトに、フリー素材としてウェブ上に出回っている画像を使用しました。ところがある日、画像の権利を管理しているという会社がそのお客さんに、画像の無断使用なので使用許諾料を支払え、というクレームをつけてきたと聞きました。私はどうしたらよいでしょうか。」

01問題の画像について著作権を有する人がいて、その人からその会社が権利の管理を委託されており、その画像の使用が権利者の意思に反しているといった事実が証明されない限り、あなたはもちろんお客さんもその会社の要求に応じる必要はありません。
02仮にそのような事実をその会社が証明できたとしても、あなた自身はその会社に対して何の支払義務も負いません。ただし、その会社がお客さんに対して使用をやめるように請求してくることが考えられます。

01写真の著作物
画像は写真の著作物と考えられます。著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したもの」ですが、写真もその構図や撮影ポジションの設定、シャッターチャンスの捕捉等の要素から撮影者の創作性が反映されていると認められるものは著作物となります。著作物であれば、原則としてそれを創作した人が著作権者となります。著作権者はその著作物の利用を独占することができ、他人がその著作物を利用するためには、著作権者から利用の許諾を得るか、その著作物の著作権を譲り受けるなどしなければならないのが原則です。そして著作権も財産ですから、賃貸用不動産のように他人に権利の管理を委託することができます。著作権管理者の代表的な例が、音楽の著作物の場合の日本音楽著作権協会(JASRAC)です。
02ウェブサイトの著作権
 なお、著作物である画像や文章を掲載したウェブサイト自体も、制作者の個性が創作的に表現されたものであれば著作物となりえます。そのサイトがホームページ作成ソフトを使ったような定型的なありふれたものではなく、制作者の個性が創作的に表現されたものであれば著作物性が認められうるからです。著作物性は、それが訴訟で争われた場合に個別具体的に判断されることになりますが、どのようなものであれウェブサイトの著作権が誰にあるかは注文者と制作者との間で決めておいた方がいいでしょう。ここでは、注文を受けて制作されたそのウェブサイトの著作権がお客さんに譲り渡されているという前提にします。
03著作権侵害を主張する側がすべきこと
 さて、問題の画像がその会社に著作権のある著作物であり、それを無断使用されたので使用料相当額を払えというのであれば、その主張をする会社側に立証する責任があります。立証責任は訴訟で問題になることですが、真実かどうかが不明な事柄については、訴訟でなくても、訴訟になれば立証責任を負う側においてそれが真実であることを明らかにすべきです。ですから侵害したつもりもないのに著作権侵害だとしてお金を請求されたのであれば、まずはその証拠を示すように相手に求めればよいでしょう。
 では、もし本当に著作権侵害の事実があったとしたらどうでしょうか。その場合でも、あなたには特段の事情のないかぎりその会社に対しては何の法的責任も負わないと考えられます。以下、理由を述べます。
04ウェブ上のフリー素材を使用する場合の注意義務
 まず、使用料相当額の支払い請求がされるとすれば、それは著作権侵害の不法行為による損害賠償請求と考えられます。そして不法行為の損害賠償責任を負うには、故意または過失を要します。過失とは注意義務に違反することであり、注意義務とは予見可能性を前提とした結果回避義務に違反することをいいます。この場合具体的には、問題の画像を使用することにより他人の著作権を侵害する可能性を予見できたのに、著作権侵害を回避するための行動を取らなかったような場合であれば過失が認められる可能性があります。しかし、本件の問題の画像はウェブ上でフリー素材として出回っているものを使ったとのことで、そういう素材はウェブ上に無数にあり、いちいちフリーであることを疑って調査することは期待できませんから、もし違法使用となっても注意義務違反とは言いにくく、過失があったとされる可能性は低いと思われます。ウェブ上には画像を無料で提供しているサイトが多数あり、使用や加工について無条件のものもあれば、クレジット表記を求めるもの、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを付しているものなど様々です。そのように使用条件が定めてあれば、それに従って利用する限り、実際にはそれが誰かの著作権の侵害になったとしても、過失があったとはいいにくいでしょう。登録されなければ権利が発生しない特許権や商標権と異なり、著作権は著作物が創作されれば登録を要せずただちに発生します。特許権や商標権は登録されているので権利関係を調査することができますので、権利侵害を行えば過失があったと法律上推定されます。しかし、特許権等と異なり著作権は権利関係が不明確なため、侵害があったと主張する人が相手の故意過失を積極的に立証しなければなりません。特に画像であれば著作者の氏名表示などないのが通常のため、ウェブ上でフリー素材だとされていたのであれば、そのことが疑われるような特段の事情がない限り、それを利用したことによって著作権侵害の結果が生じても、過失があったとは言いがたいと思われます。そこで、著作権侵害により損害賠償責任を負う可能性は低いでしょう。
05不当利得の可能性
 もっとも、著作権侵害の立証がされた場合、利用料相当額の不当利得を請求されることが考えられます。不当利得の成立には故意過失が必要ないからです。その相手は、問題のウェブサイトの権利を有するお客さんになるでしょう。ですからこの場合でもあなたがその会社に何らか支払義務を負うということにはなりません。
06差止め請求の可能性
 また、実際に著作権侵害があれば権利者は侵害行為の差止めを求めることはできます。差止請求についても侵害者の故意過失は要求されません。そこでその会社が、(あなたに対してではなく)お客さんに対してそのウェブサイトでの問題の画像の使用を止めるように求めてくることが考えられます。
07トラブル回避のために
 法律的には以上のように考えられるとはいえ、トラブルをできるだけ避け、それに備えて防御の準備をしておくのは望ましいことです。そこで制作者としては、他人の著作物を利用する場合、できる限り権利関係を確認し、何らかの記録を残しておくとよいでしょう。自分で創作を行う場合も、いざとなれば自分の著作物であると立証できるように、創作過程の記録を残すよう日ごろから意識しておきましょう。また著作物の制作を注文する立場なら、制作者との契約において他人の権利を侵害するものではないと表明してもらうことなどが考えられます。
 著作権侵害に限った話ではないですが、突然心当たりのない請求を受けるなど法的トラブルに直面した場合は、安易に要求に応じるようなことはせず、まずは弁護士に相談してみてください。

著作権相談室

クリエイターの著作権ではクリエイターの皆様からの疑問・質問を募集しています。
著作権に関して理解できてない事、身近に起こったトラブル等、
著作権に関する事ならどんなことでもOKです。
皆様からの質問は"クリエイターと著作権"の特設コーナーにて益山弁護士により
丁寧に解説させていただきます。

疑問・質問は以下のメールアドレスまでお送りください。

メール先

【件名】クリエイターと著作権:質問・相談係
【本文】お名前(クリエイター名)・職業・年齢・性別・CREATORS BANKのIDと
ご相談・質問事項を添えて上記メールアドレスまでお送りください。

沢山のご相談お待ちしております。

※一部のご相談・ご質問内容に対して解説記事を公開させて頂きます。
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