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キネマの屋根からバンジージャンプ vol.08「ショーン・オブ・ザ・デッド」

キネマの屋根からバンジージャンプ vol.08「ショーン・オブ・ザ・デッド」

ショーン・オブ・ザ・デッド

映画のあらすじ

◇ ロンドンの家電量販店に勤めるショーン(サイモン・ペグ)は、自分より一回り年下の部下にまでナメられてしまうような冴えない男。同居人で親友でもある無職のエド(ニック・フロスト)といつもつるんではパブの『ウィンチェスター』で飲み明かす日々。そんな無気力で煮え切らないショーンに恋人リズ(ケイト・アシュフォード)もとうとう愛想を尽かしてしまう。恋人に捨てられた哀しみをビールで流し込み、ヤケ酒に浸ってエドと馬鹿騒ぎをするショーン。しかし、二日酔い気味で目を覚ますと町はゾンビ一色に染まっていた・・・。「母親と恋人を救出して、この町で一番安全な場所であるパブのウィンチェスターに行こう!」とクリケットのバットを手に立ち上がるショーンのサバイバルな一日を描いた傑作ホラー・コメディ。

熱帯夜を楽しく涼む方法

 節電対策でクーラーも控え目、じっとり寝苦しい夜の続くこの季節にピッタリな一本をご紹介。もはや国民のほとんどが携帯電話を持ち歩くような時代になっても「背筋を凍らせて涼む」という何とも古典的なスタイルが相変わらず根強く残っていたりもする我がニッポン。皆さんも一度くらいは、友達やら恋人なりと肝試し的なことをした経験があるのではなかろうか。最もお手軽でポピュラーな手段といえば怖い映画の鑑賞会。とはいえホラーやスプラッター映画はイマイチ気が乗らないという人も多いはず。そこで、どんなタイプにも自信を持ってお薦めできるのがこの「ショーン・オブ・ザ・デッド」。怖いようで笑えて、ふざけてるようで大マジメ。本格的なスリルと程よい脱力感がクセになること間違い無し。

パロディを凌駕したゾンビ愛

 ジェイソンのような殺人鬼から、ドラキュラや狼男にフランケンシュタイン、テレビから這い出てくる女の幽霊に至るまでホラー映画に登場するキャラクターをあげれば枚挙にいとまがない。その中でもゾンビほど世界中で愛され、映画化され続けているモンスターは類がなく、B級C級作品を含めれば実に100本以上はくだらない。この作品は元祖ゾンビ映画「ドーン・オブ・ザ・デッド」にオマージュを捧げたモノではあるが、もはやパロディという言葉を凌駕した名作に仕上がっている。主演のサイモン・ペグと監督のエドガー・ライトの共作による脚本からはゾンビ映画に対する愛がこれでもかって程に満ちていて、本家のジョージ・A・ロメロ監督も絶賛、お墨付きというのも頷ける。

 そもそもゾンビとは何なのか?いわゆるステレオタイプなイメージの墓場から蘇った歩く死体ばかりがゾンビではなく、化学薬品やウィルスの感染などによって人間がゾンビ化してしまうといったケースもあったりと解釈は幅広い。夢遊病者のようにヨロヨロと徘徊し、建物のドアや壁を打ち破るほどの腕力もないゾンビが相手となると逃げる側にもそれなりのアドバンテージが生まれるため、意外と他のホラー作品に比べて四六時中が緊張感張り詰めっぱなしという訳でもないというのも特徴。しかし、この作品ときたらそれに輪をかけて緊張感なし。ショーンとエドがゾンビと初接触するシーンでは酔っ払いと勘違いして記念写真を撮る始末。ようやく事態を飲み込んで、手元にあったレコードを円盤投げのようにしてゾンビの頭を破壊する作戦にでる。しかし「レア物はやめろよ?」「ブルー・マンデーは?」「初回版だぞ!」「じゃあ、バットマンのサントラは?」「要らない」と、危機的状況下にあっても放り投げるレコードを選り好みする余裕さ。仕舞いには返り血を浴びたシャツのまま、ソファで紅茶にアイスクリームというリラックスぶり。これには飽きれを通り越して頼もしさすら覚えてしまう。ただ、この無闇矢鱈にドキドキしっぱなしの必要がないという心地よさが、ゾンビ映画を満喫するうえでの新たな発見だったりもする。

悲壮感ゼロ

 隠れ家にするなら慣れてる所で、出口を知ってて、煙草が吸える場所。そんなこんなで皆でに逃げ込むのに選んだ場所はいつもの行きつけパブ『ウィンチェスター』というハチャメチャさ。まずは車で母親の家に向かい、ゾンビ化してるであろう義理の父親を撃破、それから恋人リズを連れ出してパブへ移動。そこで冷えたビールを飲みながら事態の収束を待つ。そんな青写真を思い描き、クリケットのバットとスコップを手に立ち上がるショーンとエド。でも何故にパブ?もっと条件の揃った安全な場所があるだろ!なんてデービッド(ディラン・モーラン)みたく優等生な考えは捨てないとこの映画は楽しめないのでご注意を。「木の葉を隠すなら森の中」的安易な発想で、ゾンビの演技をしながらゾンビの群衆の合間を抜けるなんて最高に馬鹿馬鹿しい。これは勿論、褒め言葉として。

 次々と友人や身内がゾンビの餌食となり、血しぶき全快、手足はもぎ取られ、腑(はらわた)も引きずり出される・・・というかなりグロテスクかつハードな内容にも関わらず最後の最後まで悲壮感ゼロなのが、この映画の最大の魅力。重々しくなりがちな展開すらもイギリス特有のブラック・ユーモアが中和してくれるので最後までニヤニヤしながら楽しめること請け合い。日本では劇場未公開ながら、多くの声によりDVD・ブルーレイ化された最高にホットなゾンビ映画の決定版。この映画を観ないで死んだら後悔必至。きっと死んでも死にきれない、まさにゾンビ映画史に残る珠玉のエンターテインメント!

ショーン・オブ・ザ・デッド [DVD]

サイモン・ペッグ (出演), ケイト・アシュフィールド (出演), エドガー・ライト (監督) | 形式: DVD

真夏の夜にピッタリなゾンビ映画BEST★5

ショーン・オブ・ザ・デッド

どこまでもアホっぽい内容なんだけど、何故か仕上がりはオシャレなホラー・コメディ。エンディングではゾンビ騒動で揺れた悪夢の一日から半年が経過し、すっかり平和ボケしたロンドンの日常がテレビによって放映されるのだけど、どれも実在する番組がモチーフになっていたりして面白い。中でもアフリカ難民救済を目的とした20世紀最大のチャリティー・コンサートであるLIVE AIDならぬZOMB AIDのインタビューをコールド・プレイのメンバーであるマーティンとジョニー本人が受けているのでお見逃しなく。ラストのラストでゾンビになってしまったエドが、昔と変わらずゾンビを撃ち殺すテレビゲームで遊んでいるという皮肉めいたブラック・ユーモアは、さすがイギリス。

ドーン・オブ・ザ・デッド

1979年公開のゾンビ映画の金字塔であるジョージ・A・ロメロの名作を、これが監督デビュー作となるザック・スナイダーが2004年にリメイク。元ネタの良さをしっかり継承しつつ、さらに現代的に再構築された二つ目の金字塔とも言える秀作は、主人公の看護婦アナ(サラ・ポーリー)が命からがら逃げこんだ大型ショッピングモールを舞台として展開していく。この作品の斬新なところといえば、ゾンビ映画の基本でもある「主人公たちは常にゾンビに襲われる恐怖と対峙しながら逃げ惑う」というセオリーから外れていること。しっかりとしたセキュリティにより外部からゾンビが侵入してくる心配は無用、水や食料の蓄えに医療の設備、挙げ句に娯楽まで揃っているモール内とそれを覆い囲むように徘徊する大量のゾンビという紙一重の緊迫感がなんとも新しい。一歩外に出れば四方八方ゾンビという束の間の平和な空間の中で、避難してきた人間が思い思いにそれぞれ楽しむ姿にこそ人間らしさを感じたりもする。無人の売り場から自由に靴や洋服を選び、コーヒーを飲みながら雑談をし、晴れた日には屋上でゴルフやチェスを楽しみながら助けが来るまでの時間を費やす・・・。ただ必死に生き抜こうとする姿のみがゾンビと人間の違いではないということを再確認。

28日後・・・

病院のベッドで昏睡状態から目覚めたジム(キリアン・マーフィー)は、廃墟と化した街を目の当たりにして愕然とする。遡ること28日前、動物実験の失敗により人間を凶暴化させるウィルスが蔓延し、壊滅状態に陥ったロンドン。多くの市民は既に脱出し、ここに残されたのは逃げ遅れた僅かな市民とウィルスの感染者のみ。感染者はゾンビとなり人々を襲う習性があり、ジムはゾンビの襲撃から救ってくれたセリーナ(ナオミ・ハリス)とフランク(ブレンダン・グリーソン)、それにフランクの娘ハナ(ミーガン・バーンズ)と四人で結束し、ラジオ放送の情報をたよりにマンチェスターへと向かう。サバイバル生活を乗り越え、遂にマンチェスターへと辿り着く一行。しかし、そこに待っていたのは・・・。世界中でヒットしたこの作品の最大の衝撃は何といってもゾンビが走るということ。世間一般のゾンビ=よろよろ歩きという既成概念をぶっ壊し、集団で機敏に襲いかかってくるゾンビの姿はまさに恐怖そのもの。ダニー・ボイル監督による他のゾンビ映画と少し毛色の違うスタイリッシュさも斬新なSFホラーの傑作。

バタリアン2

「オバンバ」や「タールマン」など個性的なゾンビで人気を博した前作をストーリー的にはそのままリメイクしたような続編。死体をゾンビ化させるというトライオキシンなる化学兵器的ドラム缶を積んだ米軍トラックが走行中に積み荷落下も米兵は気づかず、それを近所の悪ガキが発見しドラム缶からガス噴出、地中に染み込んだガスによって墓地から死体が・・・と、高圧電流で一斉撃退というラストに至るまでシナリオから演出もツッコミどころ満載のザッツB級ホラーフィルム。初代より観客の評価は低めだったが、ちぎれて転がったゾンビの手が中指を立てたり、マイケル・ジャクソンのスリラー風ゾンビが徘徊してたりと古き良き80年代のニオイ漂う安っぽいコメディ感は以外と楽しめる。無線機で助けを求める主人公らに対し、人間になりすまして応答するゾンビというワンシーン。怪しんだ主人公らの「アメリカ合衆国の現大統領は?」の問いに「H・トールマン」と数十年前の大統領名を返答しバレるなんていう馬鹿馬鹿しさがなんとも良かったりする。

プラネット・テラー in グラインドハウス

グラインドハウスとはB級映画ばかりを2〜3本立てで上映していたアメリカの映画館のこと。そんなグラインドハウス的B級映画にオマージュを捧げ、わざと映像のブレやフィルムに傷やノイズを入れ込んだロバート・ロドリゲス監督による遊び心満載のアクション・ホラームービー。あらすじは生物兵器DC2の噴出により、テキサスの田舎町が一夜にしてゾンビに浸食されていくという定番中の定番モノだが、主人公のチェリー・ダーリン(ローズ・マッゴーワン)のキャラクター設定が超絶。ゾンビに食いちぎられて失った右脚に義足代わりのマシンガンを装着して、これでもかとゾンビどもを撃ちまくる姿は凄まじいの一言に尽きる。ゴーゴーダンサーならではの身体の柔らかさと身のこなしで次々とゾンビを撃破でハッピーエンド。細かい設定やら理屈なんかを一切無視して、この映画はとにもかくにも楽しんだもん勝ち。ブルース・ウィリスの怪演光るマルドゥーン中尉をはじめ、タランティーノ演じる強姦兵士や睾丸を採取するマッド・サイエンティストのアビー(ナヴィーン・アンドリュース)などアクの強い個性派が目立つ中、マーリー・シェルトンのガーターベルトに注射器を仕込んだ看護婦姿が一際にセクシー。

今月のシネマDE英会話

夏バテ気味だけど、張り切っていこうゼ。
今回のレッスンはこれだ。

“Do you believe everything you hear on TV? ”
【誰がテレビなんか信じるかよ?】

パニックと化した市民に対し「必ず自宅に待機し、
近親者の訪問も控えましょう」と警鐘を鳴らすテレビの中の
ニュースキャスターに向かってエドが放った一言。
まさにマスコミによる情報操作が溢れ、
何を信じればいいのかも解らなくなってしまった
現代を風刺したような名台詞、ダロ?

ま、なんだかんだ言っても、俺はテレビっ子だけどな。
それじゃ、また次回。

文・イラスト:ゲンダ ヒロタカ 1980年、東京生まれ横浜育ち。専門学校でデザインを学んだ後、単身ロンドンへ留学。その後、映画好きが昂じて映写技師として映画館に勤務、現在はフリーライターとして活動中。

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