1. クリエイターズバンク ホーム
  2. 特集一覧
  3. キネマの屋根からバンジージャンプ
  4. vol.05「ハート・ブルー」

キネマの屋根からバンジージャンプ vol.05「ハート・ブルー」

キネマの屋根からバンジージャンプ vol.05「ハート・ブルー」

ハート・ブルー

映画のあらすじ

◇ 2009年のアカデミー賞に於いて6部門を制し、史上初の女性によるアカデミー監督賞を手にしたキャスリン・ビグローが、それから遡ること18年前に製作したアクション映画。
 舞台は過ぎ去りし夏の面影が残るカリフォルニア。この海沿いの街で、レーガンをはじめ、カーターやジョンソンといった歴代元大統領のラバーマスクを被った犯人グループによる銀行強盗が多発する。犯行時間はたった90秒、銃撃などによる流血は一切なく、まるで「卒業パーティーの夜の生娘のように」悠然と行方をくらませる手口はまさにプロフェッショナル。ベテラン刑事のアンジェロ・パパス(ゲイリー・ビジー)と新しく赴任してきたFBIのエリート捜査官ジョニー・ユタ(キアヌ・リーヴス)は防犯カメラの映像にあった犯人の日焼け痕に目をつけ、サーファーに焦点を合わせて捜査を開始する。ユタは囮捜査のために始めたサーフィンをキッカケに知り合ったタイラー(ロリ・ペティ)を介してサーファーグループと接近することに成功し、そこで出会ったボーディ(パトリック・スウェイジ)率いるサーファー集団との自由とスリルを求める生活に身を投じていく。やがてタイラーと恋に落ち、FBI捜査官という素顔との狭間で一人葛藤するユタ。さらには、自分と相反する生き方をするボーディとの間にも奇妙な友情が芽生え始めていたのだが・・・。ベル・ビーチに直撃する50年に一度といわれる大波の中へと消え行くパトリック・スウェイジに男子どもは心躍らせ、その姿を背中に感じながら警察バッヂを海に投げ捨てるキアヌ・リーヴスに女子たちは胸焦がす。

通り過ぎる、夏

 九月も折り返した頃の海は、どことなくセツナイ。それは決してネガティヴなイメージのものではなく、風情があるという意味での切なさではあるのだが、ついつい感傷的になってしまう。小麦色に日焼けした美女で賑わう、あの七、八月の騒々しい海辺が魅惑的なのは重々承知だったが、ここ数年は海の家も畳んでしまったようなセンチメンタル120パーセントの「夏の終わりの海」の方に何故だか 惹かれてしまう自分がいる。「ヘヘッ。気づけば俺も大人になっちまったのかな・・・」なんて過ぎ去りし夏の残像に酔いしれて夕暮れの海を眺めているうちは、まだまだ子供なのかもしれないが。なにわともあれ、真夏の超大作や肝試し感覚のホラー映画に飽きた方々は、この一本で秋の訪れを感じていただきたい。

「究極のものが欲しけりゃ、究極の代価を」

 この作品は、キアヌ・リーヴスとパトリック・スウェイジによるW主演といった形をとっているが二人の関係性は明確なまでに相反している。キアヌ演じるのは、学生時代フットボール選手としてならした体力を武器に、優秀な成績でエリートFBI捜査官の道を突き進むジョニー・ユタ。対して銀行強盗グループのリーダーであり、サーファー達のなかでも一目置かれる自由奔放な男ボーディをパトリック・スウェイジと言わば二人は敵対関係ともいえる相関図になる。しかし、物語が進むにつれて不思議と二人が同じ色に混ざり合いつつあるのを感じずにはいられない。立場や生い立ちは違えども互いにどこか認め合い、次第に惹かれ合っていく姿は特殊な友情模様を生み出していて清々しい。一見「男の友情ドラマ」と聞くと過剰に暑苦しいものを連想してしまいがちであるが、今作は女性であるキャスリン・ビグロー監督メガホンを取ったことにより、それが程よい男臭さに仕上がっている。

 ボーディ一味による銀行強盗は3年間で27件にも及ぶが、その全てが無血の完全犯罪。銀行側としても保険がおりるので実質上の被害は無いに等しく、この元大統領らによる銀行襲撃は彼らなりの秩序に守られた実にスマートな犯罪だった。それもこれもユタの登場により、少しづつ歯車が狂い始めるまでの話。物語が終盤に進むにつれて、ごく普通の悪党へと成り下がっていく過程が実に刹那的で哀しい。「究極のものが欲しけりゃ、究極の代価を」まだ歯車が噛み合っていた頃、夜の浜辺に焚かれた炎に照らされたボーディが口にしたその言葉は一年後に現実となる。南氷洋から冬の嵐が北上することにより生まれる嵐によって、半世紀に一度だけ訪れるという伝説のビッグ・ウェーブに乗ることに人生の全ての照準を合わせていたボーディは逃亡生活の末、オーストラリアのベル・ビーチに嵐の到来に合わせてやってくる。FBIを配備し、待ち構えていたユタによって一度はかけられたボーディへの手錠も、最終的にはユタの独断によって外される。

「神の救いを(ヴァイア・コン・デイオス)」

 ユタの惜別の言葉に、無言で応えるボーディ。黄色のサーフボードと共に荒れ狂う海の中へ吸い込まれていく連続強盗犯に背を向けて、浜辺を去るFBIのエリート捜査官。慌てふためく他の捜査官を尻目にユタが警察バッヂを海へ投げ捨てるクライマックスシーンは悶絶モノ。やや突飛な言い方をするのであれば、このクライマックスシーンだけでも観る価値のある映画と言っても過言ではないほどにシビレさせてくれる。しかし人によっては、この男汁たっぷりの場面をクサイ演出だと一蹴する者もいるに違いない。いや、むしろそっちの感想を抱く者のほうが多い可能性もある。でも、思う。わかりやすくて何が悪い?世の中が気難しい映画ばかりでは、映画なんてものは崩壊してしまうだろう。
 そもそも、どちらかといえば『ハート・ブルー』という映画は、ここ最近流行の練りに練られ入りくんだシナリオとは無縁の単純な筋書きと言えるかもしれない。見応えのあるカーチェイスや銃撃戦は随所にあるものの、基本的には派手なCG等で魅せるエンターテインメント作品でもない。では何故、ここまで魅力ある映画に仕上がっているのかを考えると、ひとえにジェームズ・キャメロンの存在が大きい。当時、既に『ターミネーター』や『ランボー』等の所謂アクション大作を手掛けていた彼が製作総指揮をとったことで、作品自体の雰囲気を壊さないバランスで娯楽的要素がグッと増し、映画がより" 映画らしく "なっているように思う。後に『ハート・ロッカー』のような社会派ドラマを撮るキャスリン・ビグローと『タイタニック』や『アバター』などの娯楽大作で知られるジェームズ・キャメロン。『ハート・ブルー』とは元夫婦である二人の個性が良い塩梅で融合した科学反応的秀作ではなかろうか。

カメラ・アングルで描く"友情"

 作品の根底にあるユタとボーディによる敬意にも似た友情は、ダイナミックなカメラ・アングルを駆使したサーフィンやスカイ・ダイビングを通して観客に伝わってくる。やたら台詞押しで説明がましくされるよりも、それはずっと明確でスムーズに我々の心に響いてくる。

 キャスティングも効いている。主演二人の組み合わせも見事にハマッているが、ユタに喧嘩をふっかけるチンピラサーファー役をレッド・ホット・チリ・ペッパーズのアンソニーとフリーが熱演しているのも注目。妙にリアルな演技がキラリと光る。他にもサーフィン映画の金字塔『ビッグ・ウェンズデー』に出演していたゲイリー・ビジーがベテラン刑事アンジェロ役でイイ味を出しているのも感慨深い。張り込み中に腹ごしらえをしようとしている隙に犯行を許してしまうシーンはなんとも間が抜けているが、このゲイリー・ビジーの演技を観て劇中に出てくるミートボール・サンドを無性に食べたくなった人も多いはず。勿論、ニ個食い必至。その際は、どうぞレモネードも忘れずに。

 この映画を観終えたら、喧騒の消えた海辺に足を伸ばしてみるのも一興。きっと、夏の終わり特有の甘酸っぱい潮風がアナタを迎えてくれるはず。

《注意》 くれぐれも海にゴミは捨てないように。 警察バッヂもまた然り。

ビッグ・フィッシュ 特別版 [DVD]

ハートブルー アドバンスト・コレクターズ・エディション [DVD]

キアヌ・リーブス (出演), パトリック・スウェイジ (出演), キャスリン・ビグロー (監督) | 形式: DVD

夏の終わりの海が似合う映画BEST★5

イル・ポスティーノ

イル・ポスティーノ実在したチリの偉大な詩人パブロ・ネルーダがナポリ島に身を寄せた史実をモデルに、詩人と純朴な青年との友情を描いた感動作。祖国を追われ、ナポリ沖合いの小さな島に滞在することになったパブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)は、そこで郵便配達人のマリオ(マッシモ・トロイージ)と出会う。海辺の街でゆったりとした時間が流れる中、二人は詩を通して立場や年齢を超えた友情を築いていくというストーリー。撮影時、心臓病に侵されていた主演のマッシモは、予定していた心臓移植手術を延期してまで撮影に望んでいた。クランク・アップの12時間後に41歳の若さで旅立ったマッシモと劇中に同じく天に召されるマリオを重ねて、胸が締め付けられる。

ハート・ブルー
ハート・ブルー

キアヌ・リーヴスが黒のサングラス姿で「ネオ」と呼ばれる遥か昔、サンドラ・ブロックがハンドルを握る時速50マイルの暴走バスで躍動する3年ほど前、彼はジョニー・ユタだった。中国雑技団ばりのアクロバティックなスタイルで弾丸を避けるキアヌより、声にならない声で咆哮しながら空に向かって弾丸撃ちまくるキアヌの方がなんてったってカッコイイ。


あの夏、いちばん静かな海。
あの夏、いちばん静かな海。

海岸脇のゴミ収用所から持ち帰った折れたサーフボードをキッカケに、聴覚障害者である茂(真木蔵人)がひたむきにサーフィンに打ち込み上達していく姿と、それを見守る恋人・貴子(大島弘子)との純愛を綴った青春映画。それまでバイオレンス映画を得意とする印象の強かった北野武監督の評価をさらにグッと押し上げたであろう今作は、サヨナラ、サヨナラで御馴染みの映画評論家の淀川長治が生前「日本映画の中で一番好き」と唸ったことでも有名。「ファッキンジャップくらい分かるよバカヤロー!」的な世界の北野しか知らないゆとり世代が生んだアンビリバボー的若者らを銃や血しぶきでなく、詩的な映像の美しさで黙らせるであろう名作。余計な物を全て削ぎ落としたような美しくも果敢ない世界観はさすが。

グラン・ブルー
グラン・ブルー

素潜りのプロであるジャック・マイヨール(ジャン=マルク・バール)とエンゾ・モリナリ(ジャン・レノ)。海に取り憑かれた二人の男と美人保険調査員のジョアンナ・ベイカー(ロザンナ・アークエット)が織りなす人間ドラマをリュック・ベッソンが描いた海洋ロマン。フランスで社会現象を巻き起こし、日本でも口コミで人気を博した名作。なんだかよくわからんけどミニシアター系映画を貪った蒼き時代に乾杯。


ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア
ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア

「天国じゃ、みんなが海の話をするんだぜ」脳腫瘍のマーチン(ティル・シュヴァイガー)と骨肉腫のルディ(ヤン・ヨーゼフ・リーファス)は共に余命いくばくか。海を未だかつて目にしたことが無かったルディは、死ぬ前に一目でも海を見てみたいと願う。そこで病室が同部屋だった二人は意気投合し、大量のレモンと塩、それにテキーラの瓶を片手に病棟を抜け出すことにする。たまたま盗んだ車にはギャングの大金が積んであり、その金で高級スーツを仕立てるわ、ホテルのスイートに宿泊するわの旅の道中大盤振る舞い。二人は死ぬまでに叶えたい夢をリストアップし、マーチンは「ママにキャデラックを贈る」ルディは「二人のオンナと寝る」という夢を掲げ、逃避行の合間にそれぞれの夢を達成していく。確実に死が迫る中、もはや何も怖くない二人はギャングや警察に追われながらも海を目指し突き進むのだが・・・。本国ドイツで大ヒットを記録したアクション・ロード・ムービー。

今月のシネマDE英会話

あ〜、とうとう夏が終わっちまったね。
でも、窓の外じゃ相変わらず諦めのワルい蝉どもが鳴いてるゼ。
そいじゃ、蝉どもに負けずにレッスンといこうかね。
今回は上記のコラムにもでてきた最高にクールでイカした台詞だ!

If you want the ultimate,
you gotta be willing to play the ultimate price.

【究極のものが欲しけりゃ、究極の代価を】

どうだい?こんな台詞をさらっと言える男になりたい、ダロ?
ま、俺はどちらかっつーと「蝦で鯛を釣る」って方が向いてるけどな。

文・イラスト:ゲンダ ヒロタカ 1980年、東京生まれ横浜育ち。専門学校でデザインを学んだ後、単身ロンドンへ留学。その後、映画好きが昂じて映写技師として映画館に勤務、現在はフリーライターとして活動中。

キネマの屋根からバンジージャンプ記事一覧へ

特集ページ一覧へ

v注目のコンテスト

powered by コンペディア

vオススメのギャラリー

powered by ミーツギャラリー

k k