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キネマの屋根からバンジージャンプ vol.02「ブルース・ブラザース」

キネマの屋根からバンジージャンプ vol.02「ブルース・ブラザース」

ブルース・ブラザース

映画のあらすじ

イリノイ州にある刑務所から3年間の刑期を終えて出てきたジェイク(ジョン・ベルーシ)と彼を出迎えにあがった弟のエルウッド(ダン・エイクロイド)。警察の競売でタダ同然で手に入れた払い下げパトカーの新ブルース・モービルで出所後真っ先に向かったのは、二人が育った孤児院だった。そこで母親代わりのシスター"ペンギン"から財政難で税金の5000ドルが払えず立ち退き問題に直面している事実を知らされる。「5000ぐらい明日届けてやる」そう言い放つジェイクに対し「悪い事をして手に入れたような不浄の金は受け取らない」と追い返すシスター。まっとうな金の稼ぎ方がわからず行き詰まったジェイクとエルウッドは孤児院の管理人であるカーティス(キャブ・キャロウェイ)の助言もあり、とりあえず身を清めようと教会へ行くのだが・・・。
かつての仲間を口説き落としながら、なんとかバンドを再結成。目指すは5000ドル一括返済を賭けたブルース・ブラザース・バンドによる一夜限りのライヴショー。行く先々でトラブルを起こし、地元警察にナチ党やカントリー・バンドの面々、はたまた謎の女(キャリー・フィッシャー)にまで追われる二人の運命やいかに。楽器店の店主として出演しているレイ・チャールズをはじめ、ジェームス・ブラウンにアレサ・フランクリンらによる超豪華なアーティスト共演も見所のひとつ。監督には『史上最高のプロモーション・ビデオ』として名高いあのマイケル・ジャクソン「スリラー」のメガホンをとったジョン・ランディスを起用。まさに上質のミュージカルとコメディ、さらにアクションまでもを網羅した珠玉のエンターテインメント。

弱いものにはめっぽう弱く 強いものにはすこぶる強い

 年が明けても、相変わらずな我がニッポン。テレビをつければ物騒な事件に政治と景気の暗いニュースばかり。そんな停滞ムードをかき消すような問答無用の楽しい映画を観たい!って人は多いはず。それならば、あの兄弟がいます。あの二人ならきっと解消してくれるでしょう。イエス・タップダンシング・キリスト様!てな訳で新春一発目は『ブルース・ブラザース』っきゃない。

  『黒いソフト帽にサングラス。弱いものにはめっぽう弱く、強いものにはすこぶる強い。遂に出現スーパー・ロックヒーロー!』このキャッチコピーを引っさげてアメリカNBCの人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」から飛び出した"ジョリエット"・ジェイク・ブルースとエルウッドの凸凹兄弟。彼らは例え寝ている間にバズーカで寝床をフッ飛ばされようとお構い無し。瓦礫の中から起き上がるとスーツの汚れを手で払い「9時だ、仕事に行こう」なんて具合に何事もなかったかのようにひょうひょうとしているのが面白い。この映画は派手な爆破やカーアクションは多数あれど、誰一人として死ぬようなことはない。スクリーンに無駄に血は流さずも、全編に渡りカッコいい音楽を流すことで観客を楽しませてくれる。そんな素敵な作品です。

生粋のエンターテインメント

 普段我々が目にする広告には巧妙に「DEATH(死)」や「SEX(性)」といったキーワードが刷り込まれているといったケースが多いのは有名な話。それは、この二つのイメージは消費者の潜在意識に直結しやすく、購買意欲を掻き立てる効果があるとされているからだ。とあるウィスキーの広告では、なみなみ注がれたロックグラスの中で琥珀色の液体と混じりあう氷の陰影が、よく目を凝らすと男性器や骸骨のフォルムに見えるといったものも存在した。サブリミナル効果といったら大袈裟だが、映画に関しても「DEATH(死)」や「SEX(性)」というキーワードが興行的に成功するうえで密接なのは明白だろう。頭に思い浮かぶ作品どれを挙げても誰かしらの「死」であったりベッドシーン等の性的な描写が必ずといっていいほど劇中にある。どちらも人間にとって切り離せない重要なテーマである故に、あるとないとでは映画に与える深みが格段と違ってくるのだから当然といえば当然なのだが。それにも関わらず、この『ブルース・ブラザース』には「DEATH(死)」や「SEX(性)」といった二つの要素が見当たらない。敢えてなのか結果論なのかはさておき、これらを省いても尚、観客をこれだけ魅了できる大人向けの映画というのは実に希少だと思う。生粋のエンターテインメント性がそこにはある。

  そして、この映画を語るうえで欠かせないのがブルース・モービルとパトカーによるシカゴの街やショッピングモールでのカーチェイス。もはや3Dなんてモノまで席巻しはじめた現代の映画界において、高度なCG技術などは見慣れた産物。そこにあってCGに頼らない迫力のカーチェイスは見応え抜群、実写だからこそ味わえる圧倒的臨場感は息を飲むのも忘れてしまいそうだ。パトカーは州警察から60台、市警42台、救急車は17台に4台の装甲車と3機のヘリコプター。さらに国家公務員の警備員が150人と市の警官が60人に400人の軍隊を動員し、350丁の拳銃と150本の警棒が用意されたラストシーンは圧巻。ジョン・ランディス監督は「許可の問題的にも制作費の面においても、時代が時代だったからこそ実現できた」と当時を振り返る。

"We are on a mission from God." 俺たちは神の使命を帯びている

 ジェームス・ブラウン扮するクレオファス牧師の説教の最中に突如、神からの啓示を受け「バンドだ!」と覚醒するブルース兄弟。「俺たちは神の使命を帯びている」という言葉で全てをまかり通そうとするスタンス然り、その"四の五の言わずに黙って楽しみやがれ"的な力技で観客をねじ伏せてくる脚本のセンスがなんとも痛快である。
ブルース兄弟によってシカゴの街はてんやわんや。最初から最後までバンドメンバーは振り回されっぱなし。それでも最終的には目的をしっかり遂げて、さながら江戸っ子ばりに「宵越しの銭は持たねぇ」と全てを清算してスカッと見事にハッピーエンド。刑務所に始まり刑務所で終わるのも爽快。まさしく礼に始まり礼に終わる日本の武道、芸道にも通ずるスタイル。・・・いや、この喩えは違うか。とにもかくにも、全てを振り出しに戻し、囚人服で"監獄ロック"をシャウトする姿は最高にカッコいい。

  ほぼ同キャストが揃った続編にあたる『ブルース・ブラザース2000』も決して悪くはないが、やはりジェイクの不在は大きかった。劇場公開の2年後、人気絶頂の中でこの世を去ったジェイクことジョン・ベルーシ。生前の彼はジェイクのキャラクターそのままに私生活でも破天荒な人物だったと友人達は口を揃える。それでいてどこか憎めないというイメージはまさにジェイクそのものだった。そして、この脚本を手がけたのは何を隠そう、もう一人の主人公エルウッドことダン・エイクロイド本人。この二つの才能が融合し生まれた1980年の奇跡こそが『ブルース・ブラザース』それなのだ。
まだ観たことがないって人は絶対に観るべき一本。既に観たことがある人は、改めてエンターテインメントとは何たるかを再認識できる一本。
何が飛び出すかわからない、まるで玩具箱をひっくり返した様な映画です。

ブルース・ブラザース [DVD]

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アレサ・フランクリン (出演), レイ・チャールズ (出演), ジョン・ランディス (監督) | 形式: DVD

思わず踊りたくなる映画BEST5

世界中がアイ・ラヴ・ユー
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人生の悲喜こもごもを歌って踊ることで、物事の大きい小さいに左右されず華やかに浮き彫りになってくる。言うならば『人生を豊かにしてくれる映画』といったところ。 エドワード・ノートンやドリュー・バリモアにナタリー・ポートマンからジュリア・ロバーツ等々の豪華キャストによる吹き替えなしの歌や踊りも話題となった今作だが、なんといってもセンスある台詞の応酬が見所。ウディ・アレンが味付けすることによってピリっと皮肉の効いたユーモア満載のミュージカル・コメディとなっている。まさに思わず踊りたくなる、このランキングの1位に相応しい名作。

フル・モンティ
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イギリス北部にあるシェフィールド。かつて鉄鋼業で栄えたこの街も、今では時代の波に飲まれ衰退していた。失業中のガズ(ロバート・カーライル)は息子の養育費が払えず共同親権を奪われそうな状況に頭を悩ます日々。ひょんな事をキッカケに男性によるストリップ・ショーで一攫千金を目論んだガズは親友のデイヴ(マーク・アディ)をはじめ、同じように取り柄のない中年男を面接などによって集める。社交ダンスが趣味の元上司ジェラルド(トム・ウィルキンソン)。自殺志願者だったロンパー(スティーヴ・ヒューイソン)。ブレイクダンス経験者だが年齢がいきすぎている黒人ホース(ポール・バーバー)。歌も踊りも苦手だが下着の中にあるモノだけは立派なガイ(ヒューゴ・スピアー)。そんな愛すべきダメ男6人によるショー当日までの奮闘劇をユーモラスに描いたヒューマン・コメディ。 時にはホロリとさせる場面もあり、どこか勇気も貰えてしまうブリティッシュ・フィルムの秀作。「You Can Leave Your Hat On(その帽子はそのままで) 」を選曲したクライマックスの演出がなんともニクい。

ブルース・ブラザース
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ドライのトーストにまるごと4羽のフライドチキンとコーク!もし飲食店でそんな注文があればブルース・ブラザースに間違いない。時代錯誤と紙一重のファッションセンス。そしてR&Bやソウルミュージックといった黒人音楽をカーアクションとスラップスティックコメディに掛け合わせるといった斬新な発想。これこそが30年以上経った現在でも、この映画が色褪せない要因だろう。多くの著名なミュージシャンがカメオ出演のカテゴリーを超越して顔を揃えている他、エルウッドにナンパされる役が世界でミニスカート旋風を起こしたモデルのツィッギーであったり、ラストシーンで5000ドルを受理する納税課の受付係が若かりし頃のスティーブン・スピルバーグであったりと思わずニンマリ。

ムーラン・ルージュ
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19世紀末、華の都パリはモンマルトルに実在するキャバレー『ムーラン・ルージュ』を舞台にニコール・キッドマン扮する高級娼婦のサーティーンとユアン・マクレガーが演じる貧乏作家クリスチャンの燃え上がる恋をミュージカル仕立てに描いた傑作。 マドンナからデヴィッド・ボウイにポリス、エルトン・ジョン、さらにはビートルズと様々な70〜80年代のヒット曲を大物アーティストらがカヴァーしまくりの128分。豪華なセットや衣装による鮮やかな色彩、そして映画を彩る多くの楽曲が目にも耳にも楽しい作品となっている。W主演二人の予想以上の美声と歌唱力にも驚愕。

サタデー・ナイト・フィーバー
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1970年代後半、ディスコ・ムーブメントを世界中に巻き起こした伝説的な一作。普段はブルックリンのペンキ屋で働くトニー(ジョン・トラボルタ)の生き甲斐は土曜の夜に仲間とディスコへ繰り出すこと。ダンスにかけては天才的なトニーだったが、代わり映えのない繰り返しの日々に嫌気がさしていた。そんなある晩、ディスコで出会った年上の女性に心惹かれて・・・というあらすじ。17年後に『パルプ・フィクション』でみせたアダルトな雰囲気の踊りもクールだったが、やはりビー・ジーズによる主題歌に身を委ね軽快にダンスする若き日のトラボルタは一見の価値あり。因みに続編としてシルヴェスター・スタローンが手がけた『ステイン・アライブ』は大ゴケし【史上最悪の続編】に選ばれた。合掌。

今月のシネマDE英会話

オィッス。久しぶり!こないだ知り合いに"DE"はフランス語だから
『シネマDE英会話』ってのはおかしいってクレームがあったよ。
そりゃ確かにそうだな。 ・・・ま、堅い話はナシでいいじゃないか。
さっそくレッスンはじめるぜ!
今回はジェイクとエルウッドが追っ手の目を盗んでステージを抜け出し、
106マイル離れたシカゴまで税金を収めに向かうべく
車に乗り込んだ時の台詞だよ。

"It's 106 miles to Chicago.
We've got a full tank of gas and half a pack of cigarettes.
It's dark and we're wearing sunglasses. "

"Hit it."
【シカゴまで170キロ、ガスは満タンでタバコは半箱、
暗闇にサングラス】
【行け】

これは二人用の台詞なので、まず相方探しからだな。
ペアで練習してくれ。
ワンポイントアドバイスとしては"Hit it"の時に人差し指を前方に突き出せば、より一層ジェイクっぽさが滲みでてgoodだよ。地名と距離さえ変更すれば、様々なシチュエーションで使えるから憶えておいて損はないはず、ダロ?

文・イラスト:ゲンダ ヒロタカ 1980年、東京生まれ横浜育ち。専門学校でデザインを学んだ後、単身ロンドンへ留学。その後、映画好きが昂じて映写技師として映画館に勤務、現在はフリーライターとして活動中。

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