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サウンド・音楽 > サウンドアート
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おれはひとり、夜道を歩いていた。
最寄駅から帰宅の途中だった。
おれのいくらか前方に、やはりひとり
若い女が歩いていた。
暗くてはっきりとは確認できないが
ハイヒールの靴音がアスファルトに響く。
やがて不意に、女が振り返った。
そこは街灯の光が十分に届かぬ場所で
女の表情を含め、顔は見えない。
おそらく、顔を見られたくないために
そのような場所を女は選んだのであろう。
また、その時、おれは逆に
ちょうど街灯の真下の位置にいた。
やはり、そのようになるタイミングを
あの女は見計らっていたに違いない。
再び女は歩き始めたが
心なしか、さきほどよりも靴音が大きく
また小刻みになったような気がする。
それに釣られるかのように
おれも少しばかり足を速めたかもしれない。
すると、おれを痴漢と思い込んだのか
女の靴音が明らかに速くなった。
(冗談じゃない)
文句を言ってやりたいような気持ちになり、
おれは前を行く女に追いつこうとした。
それに気づいたのだろう。
ほとんど女は駆け足になった。
(ふざけるな!)
おれは腹が立ち、
むきになって走り始めた。
女も走る。
よくもまあ、ハイヒールなんか履いて
そんなに速く走れるものだ。
呆れつつも感心はするが
健全な男の足に敵うはずはない。
おれは獲物を狙う獣の気分になり、
とうとう女のすぐ背後にまで迫った。
走りながら片手を伸ばし、
女の白いブラウスの襟えりをつかむ。
そして、そのまま引き下ろした。
ブラウスの生地が破れ、
絹を引き裂く女の悲鳴があがった。
おれは、その声に聞き覚えがあった。
それは、たとえ死んでも
決して聞いてはならない声だった。
引き裂く
by Tome館長
おれはひとり、夜道を歩いていた。
最寄駅から帰宅の途中だった。
おれのいくらか前方に、やはりひとり
若い女が歩いていた。
暗くてはっきりとは確認できないが
ハイヒールの靴音がアスファルトに響く。
やがて不意に、女が振り返った。
そこは街灯の光が十分に届かぬ場所で
女の表情を含め、顔は見えない。
おそらく、顔を見られたくないために
そのような場所を女は選んだのであろう。
また、その時、おれは逆に
ちょうど街灯の真下の位置にいた。
やはり、そのようになるタイミングを
あの女は見計らっていたに違いない。
再び女は歩き始めたが
心なしか、さきほどよりも靴音が大きく
また小刻みになったような気がする。
それに釣られるかのように
おれも少しばかり足を速めたかもしれない。
すると、おれを痴漢と思い込んだのか
女の靴音が明らかに速くなった。
(冗談じゃない)
文句を言ってやりたいような気持ちになり、
おれは前を行く女に追いつこうとした。
それに気づいたのだろう。
ほとんど女は駆け足になった。
(ふざけるな!)
おれは腹が立ち、
むきになって走り始めた。
女も走る。
よくもまあ、ハイヒールなんか履いて
そんなに速く走れるものだ。
呆れつつも感心はするが
健全な男の足に敵うはずはない。
おれは獲物を狙う獣の気分になり、
とうとう女のすぐ背後にまで迫った。
走りながら片手を伸ばし、
女の白いブラウスの襟えりをつかむ。
そして、そのまま引き下ろした。
ブラウスの生地が破れ、
絹を引き裂く女の悲鳴があがった。
おれは、その声に聞き覚えがあった。
それは、たとえ死んでも
決して聞いてはならない声だった。
published : 2013/06/12