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四次元の泡

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四次元の泡

by Tome館長

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    【 奇妙な部屋 】


    なんとなく奇妙な部屋なのである。

    どこが奇妙なのかよくわからないので
    なおさら奇妙な感じがする。


    壁と床と天井があって、家具もある。
    普通の部屋のはずだが、どこか違う気がする。

    そう言えば、出入り口らしきものが見当たらない。

    ところが突然、ドアが開いて誰か入ってきた。

    こんなところにドアがあるとは・・・・・・


    そうか。思い出した。

    忘れていたのだ。
    ここから私も入ってきたというのに。


    ドアが閉まると、出入り口は再び消えてしまった。

    もう記憶としてしか残っていない。

    もし忘れてしまったら・・・・・・


    この部屋の中には様々な人たちがいる。

    ソファーの上で逆立ちしてる人。
    壁を黙々と叩き続ける人。

    床を舐める人。
    立ったまま裸で抱き合ってる人たちもいる。

    何人いるのか数え切れないほどいる。
    つまり、それだけ部屋が広いわけだ。


    広い部屋なのに、なぜか窓はひとつしかない。

    そして、その窓の向こう側には風景がない。

    この部屋のある建物のすぐ隣に別の建物があり、
    その壁面によって窓は塞がれているらしい。

    その別の建物も
    その壁面すら見えないのだが、

    風景が見えない以上、
    そう考えるのが自然なのである。


    私は一度だけ目撃したことがある。

    この窓から黒くて長い腕が部屋に侵入するのを。

    その腕の先にあるクモの脚のような毛深い手は
    ソファーに座っていた人の頭を鷲わしづかみにした。

    そして、その人をそのまま窓から連れ去った。

    結局、その人は二度と戻って来ることはなかった。


    このような腕の出現は稀まれにあると言う。

    それを目撃したことがある人なら

    あるいはソファーに座らず、
    逆立ちするようになるかもしれない。


    私は、ソファーは勿論のこと、
    なるべく窓に近づかないよう注意している。

    それでも、なかなか安心はできない。

    なぜなら
    ぼんやり壁際で考え事などしていると、

    こっそり窓の方から近寄って来ていたりするから。


    そんな時、どうしても私は思ってしまう。

    やはり奇妙な部屋なのだな、と。
     

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    【 奇妙な部屋 】


    なんとなく奇妙な部屋なのである。

    どこが奇妙なのかよくわからないので
    なおさら奇妙な感じがする。


    壁と床と天井があって、家具もある。
    普通の部屋のはずだが、どこか違う気がする。

    そう言えば、出入り口らしきものが見当たらない。

    ところが突然、ドアが開いて誰か入ってきた。

    こんなところにドアがあるとは・・・・・・


    そうか。思い出した。

    忘れていたのだ。
    ここから私も入ってきたというのに。


    ドアが閉まると、出入り口は再び消えてしまった。

    もう記憶としてしか残っていない。

    もし忘れてしまったら・・・・・・


    この部屋の中には様々な人たちがいる。

    ソファーの上で逆立ちしてる人。
    壁を黙々と叩き続ける人。

    床を舐める人。
    立ったまま裸で抱き合ってる人たちもいる。

    何人いるのか数え切れないほどいる。
    つまり、それだけ部屋が広いわけだ。


    広い部屋なのに、なぜか窓はひとつしかない。

    そして、その窓の向こう側には風景がない。

    この部屋のある建物のすぐ隣に別の建物があり、
    その壁面によって窓は塞がれているらしい。

    その別の建物も
    その壁面すら見えないのだが、

    風景が見えない以上、
    そう考えるのが自然なのである。


    私は一度だけ目撃したことがある。

    この窓から黒くて長い腕が部屋に侵入するのを。

    その腕の先にあるクモの脚のような毛深い手は
    ソファーに座っていた人の頭を鷲わしづかみにした。

    そして、その人をそのまま窓から連れ去った。

    結局、その人は二度と戻って来ることはなかった。


    このような腕の出現は稀まれにあると言う。

    それを目撃したことがある人なら

    あるいはソファーに座らず、
    逆立ちするようになるかもしれない。


    私は、ソファーは勿論のこと、
    なるべく窓に近づかないよう注意している。

    それでも、なかなか安心はできない。

    なぜなら
    ぼんやり壁際で考え事などしていると、

    こっそり窓の方から近寄って来ていたりするから。


    そんな時、どうしても私は思ってしまう。

    やはり奇妙な部屋なのだな、と。
     

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published : 2013/02/24

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