1万8000人の登録クリエイターからお気に入りの作家を検索することができます。
WORKS
サウンド・音楽 > ミュージック
9
View3
Fav1
Commentこの星の空には鳥がいない。
まったく一羽もいない。
その空の下、この地上にはトカゲみたいな爬虫類タイプの動物がいる。
一角獣みたいな哺乳類としか思えない動物もいる。
さらに、海なのか湖なのかわからないが 水中にはサカナらしきものが泳いでいる。
けれど、鳥はいない。
一羽もいない。
少なくとも、この星に緊急着陸してから 我々は一度も見ていない。
羽のある動物は過去に絶滅したか、または進化することがなかったのだろう。
あるいは こんな陰鬱な色の空を見上げても、
なかなか飛びたい気持ちになれなかったのかもしれない。
それとも、意志のようなものが空にあり、生き物の受け入れを頑なに拒んでいるのだろうか。
その可能性も否定できない。
なぜなら、この星には翅のある虫さえいないのだ。
「まだ修理できないのか」
地を這う虫を踏みつけながら、我らが艦長が小言のような独り言を呟く。
「どうもエンジンの奴、動きたくないようですぜ」
おれは工具で肩を叩く。
「どっこも悪いとこ、見つからんのですよ」
「なのに点火しない」
「ええ。ウンともスンとも」
「どういうことだ」
おれは、お手上げのポーズ。
黙って空を見上げる艦長の横顔がひどく老けたように見えた。
おれの気のせいだろうか。
「食事、できたわよ」
ナンシーが呼んでいる。
この星の肉も果実も水も、そんなに悪くないような気がする。
慣れてしまえば、宇宙食よりマシだ。
空さえ見上げなければ この星だって、まんざら悪くない。
この気の滅入るような暗い空さえ見上げなければ・・・・