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精霊の森

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精霊の森

by Tome館長

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    novel.fc2.com/novel.php?mode=t...

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    ねばつく粘菌の小川をまたいで
    マイマイハタオリの仕事の邪魔をしないように

    私はそおっと精霊の森に忍び込んだ。


    日の光はセロファンの木の葉に濾過され、
    不思議な色に空気を染め、

    オチムシャグモの大きな巣を虹色に輝かせていた。


    モライツグミの乞う声があちこちから聞える。


    精霊の宝なんか、私はいらない。

    宝は森のどこかに隠されている
    と村の古老たちは伝説を語るけど、

    宝はちっとも隠されてなんかいなくて

    この森の端から端まで全部が全部、
    もの凄い宝だということ、

    とっくに私は知ってるから。


    いつか私が死んだって
    立派なお墓なんかいらない。


    この精霊の森の土に

    できるだけ目立たないように
    こっそり埋めて欲しい。

    そうしてもらえれば
    こんな私でも、そのうち

    きれいな宝石の一欠片くらいにはなれるだろうから。


    茂みを分け入ると、広い場所に出た。

    数千年も生き続けている太くて大きなノラの木の幹に
    ハナクラゲが花粉を擦り付けている姿が見えた。


    この浮遊する花虫の気持ち、よくわかる。

    私も近寄り、
    ゴツゴツした煉瓦のような幹に耳を押し当て

    ノラの木の掠れたつぶやき声を
    じっと息を殺して聴いていたかった。


    でも今日は、日暮れ前までに薬草と薬石を
    たくさんたくさん集めなくては。


    森の奥深く

    アニュイの池へ続く精霊の小道を
    私は急いだ。
     

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    ねばつく粘菌の小川をまたいで
    マイマイハタオリの仕事の邪魔をしないように

    私はそおっと精霊の森に忍び込んだ。


    日の光はセロファンの木の葉に濾過され、
    不思議な色に空気を染め、

    オチムシャグモの大きな巣を虹色に輝かせていた。


    モライツグミの乞う声があちこちから聞える。


    精霊の宝なんか、私はいらない。

    宝は森のどこかに隠されている
    と村の古老たちは伝説を語るけど、

    宝はちっとも隠されてなんかいなくて

    この森の端から端まで全部が全部、
    もの凄い宝だということ、

    とっくに私は知ってるから。


    いつか私が死んだって
    立派なお墓なんかいらない。


    この精霊の森の土に

    できるだけ目立たないように
    こっそり埋めて欲しい。

    そうしてもらえれば
    こんな私でも、そのうち

    きれいな宝石の一欠片くらいにはなれるだろうから。


    茂みを分け入ると、広い場所に出た。

    数千年も生き続けている太くて大きなノラの木の幹に
    ハナクラゲが花粉を擦り付けている姿が見えた。


    この浮遊する花虫の気持ち、よくわかる。

    私も近寄り、
    ゴツゴツした煉瓦のような幹に耳を押し当て

    ノラの木の掠れたつぶやき声を
    じっと息を殺して聴いていたかった。


    でも今日は、日暮れ前までに薬草と薬石を
    たくさんたくさん集めなくては。


    森の奥深く

    アニュイの池へ続く精霊の小道を
    私は急いだ。
     

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published : 2010/09/11

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