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露の窓

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露の窓

by Tome館長

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    都内に勤めていた頃
    憂鬱の種は通勤電車だった。

    行きも帰りも満員で座れない。

    朝は会社に着く前に疲れ
    さらに疲れた夜も立ち続け。

    とにかく人が多すぎると思った。
    頭の中でどれほど同乗者を殺したことか。


    それはともかく
    ある冬の朝の通勤電車。

    いつものようにドアに押し付けられていた。

    外は寒いのに車内は蒸し暑いくらいで
    ドアの窓は結露して白く曇っていた。

    露が集まって雫になって垂れたり
    通勤客の手や額が触れたりして
    下手糞なラクガキのようにも見えた。

    そのひとつにインスピレーションが湧いた。

    指先で窓を擦って描き加えさえした。

    首の長い女性が腰を曲げ両手を地に着いたポーズで
    鬣(たてがみ)をなびかせた馬の形にも見えた。


    会社に着いてからペン画に仕上げ
    それから数年後に油彩画に展開し
    さらに十年後にはFlash動画にまで使った。


    数少ない満員電車の
    不快でない思い出のひとつ。
     

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露の窓

by Tome館長

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    都内に勤めていた頃
    憂鬱の種は通勤電車だった。

    行きも帰りも満員で座れない。

    朝は会社に着く前に疲れ
    さらに疲れた夜も立ち続け。

    とにかく人が多すぎると思った。
    頭の中でどれほど同乗者を殺したことか。


    それはともかく
    ある冬の朝の通勤電車。

    いつものようにドアに押し付けられていた。

    外は寒いのに車内は蒸し暑いくらいで
    ドアの窓は結露して白く曇っていた。

    露が集まって雫になって垂れたり
    通勤客の手や額が触れたりして
    下手糞なラクガキのようにも見えた。

    そのひとつにインスピレーションが湧いた。

    指先で窓を擦って描き加えさえした。

    首の長い女性が腰を曲げ両手を地に着いたポーズで
    鬣(たてがみ)をなびかせた馬の形にも見えた。


    会社に着いてからペン画に仕上げ
    それから数年後に油彩画に展開し
    さらに十年後にはFlash動画にまで使った。


    数少ない満員電車の
    不快でない思い出のひとつ。
     

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published : 2010/06/18

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