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Commentラプンツェルは、世界に二人と無いくらいの美しい少女になりました。少女が十二歳になると、魔女は或る森の中へ、少女を閉じ籠めてしまった。その塔は、梯子も無ければ、出口も無く、ただ頂上に、小さな窓が一つあるぎりでした。魔女が入ろうと思う時には、塔の下へ立って、大きな声でこう言うのです。
「ラプンツェルや!ラプンツェルや!
お前の頭髪を下げておくれ!」
「ラプンツェルや!ラプンツェルや!
お前の頭髪を下げておくれ!」
というと、上から頭髪がさがって来たので、王子は登って行きました。
ラプンツェルは、まだ一度も男というものを見たことがなかったので、今王子が入って来たのを見ると、初めは大変に驚きました。けれども王子は優しく話しかけて、一度聞いた歌が、深く心に沁み込んで、顔を見るまでは、どうしても気がやすまらなかったことを話したので、ラプンツェルもやっと安心しました。
「ねえ、ゴテルのお婆さん、何うしてあんたの方が、あの若様より、引き上げるのに骨が折れるんでしょうね。若様は、ちょいとの間に、登っていらっしゃるのに!」
「まア、この罰当たりが!」と魔女が急に高い声を立てた。「何だって?私はお前を世間から引離して置いたつもりだったのに、お前は私を瞞したんだね!」
こう言って、魔女はラプンツェルの美しい髪を攫んで、左の手へぐるぐると巻き付け、右の手に剪刀を執って、ジョキリ、ジョキリ、と切り取って、その見事な瓣髪を、床の上へ切落としてしまいました。そうして置いて、何の容赦もなく、この憐れな少女を、砂漠の真中へ連れて行って、悲みと嘆きの底へ沈めてしまいました。
「お前は可愛い人を連れに来たのだろうが、あの綺麗な鳥はもう巣の中で、歌っては居ない。あれは猫が攫ってってしまったよ。今度は、お前の眼玉も掻るかもしれない。ラプンツェルはもうお前のものじゃア無い。お前はもう、二度と、あれにあうことはあるまいよ。」
こう言われたので、王子はあまりの悲しさに、逆上せて、前後の考えもなく、塔の上から飛びました。幸いにも、生命には、別状もなかったが、落ちた拍子に、茨へ引掛かって、眼を潰してしまいました。
イラストボード ペン など
B4
ラプンツェルは、世界に二人と無いくらいの美しい少女になりました。少女が十二歳になると、魔女は或る森の中へ、少女を閉じ籠めてしまった。その塔は、梯子も無ければ、出口も無く、ただ頂上に、小さな窓が一つあるぎりでした。魔女が入ろうと思う時には、塔の下へ立って、大きな声でこう言うのです。
「ラプンツェルや!ラプンツェルや!
お前の頭髪を下げておくれ!」
「ラプンツェルや!ラプンツェルや!
お前の頭髪を下げておくれ!」
というと、上から頭髪がさがって来たので、王子は登って行きました。
ラプンツェルは、まだ一度も男というものを見たことがなかったので、今王子が入って来たのを見ると、初めは大変に驚きました。けれども王子は優しく話しかけて、一度聞いた歌が、深く心に沁み込んで、顔を見るまでは、どうしても気がやすまらなかったことを話したので、ラプンツェルもやっと安心しました。
「ねえ、ゴテルのお婆さん、何うしてあんたの方が、あの若様より、引き上げるのに骨が折れるんでしょうね。若様は、ちょいとの間に、登っていらっしゃるのに!」
「まア、この罰当たりが!」と魔女が急に高い声を立てた。「何だって?私はお前を世間から引離して置いたつもりだったのに、お前は私を瞞したんだね!」
こう言って、魔女はラプンツェルの美しい髪を攫んで、左の手へぐるぐると巻き付け、右の手に剪刀を執って、ジョキリ、ジョキリ、と切り取って、その見事な瓣髪を、床の上へ切落としてしまいました。そうして置いて、何の容赦もなく、この憐れな少女を、砂漠の真中へ連れて行って、悲みと嘆きの底へ沈めてしまいました。
「お前は可愛い人を連れに来たのだろうが、あの綺麗な鳥はもう巣の中で、歌っては居ない。あれは猫が攫ってってしまったよ。今度は、お前の眼玉も掻るかもしれない。ラプンツェルはもうお前のものじゃア無い。お前はもう、二度と、あれにあうことはあるまいよ。」
こう言われたので、王子はあまりの悲しさに、逆上せて、前後の考えもなく、塔の上から飛びました。幸いにも、生命には、別状もなかったが、落ちた拍子に、茨へ引掛かって、眼を潰してしまいました。
イラストボード ペン など
B4
published : 2009/03/28