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Comment着物の下の聰子の體を、自分は隅々まで知っている。その肌のどこがまっ先に羞恥に紅らみ、どこがしなやかに撓み、どこが、その中に白鳥が捕われているかのように、羽ばたきの顫動を透かして見せるかを知っている。どこが喜びを愬え、どこが悲しみを愬えるかを知っている。知悉しているものすべてが、おぼろに微光を放って、聰子の體を着物の上からも窺わせるのだが、今、心なしか聰子が袂でいたわっている腹のあたりにだけは、彼のよくは知らぬものが芽生えている。十九歳の清顯には、子供というものへの想像力が缺けていた。それは暗い熱い血と肉にひしと包まれた形而上的な何かだった。
(三島由紀夫「春の雪」)
油彩 キャンバス
116,7cm×91,0cm
2013年
大正時代の貴族社会を背景に、年上の女性と侯爵家の若き嗣子との悲劇的な恋の経緯を描いた恋愛小説がモチーフです。
背景の鳥は貴族社会、画面左で血の涙を流している鳥は、侯爵家の若者です。女性の腹部には矢が向けられています。
第80回記念旺玄展に入選した作品です。
着物の下の聰子の體を、自分は隅々まで知っている。その肌のどこがまっ先に羞恥に紅らみ、どこがしなやかに撓み、どこが、その中に白鳥が捕われているかのように、羽ばたきの顫動を透かして見せるかを知っている。どこが喜びを愬え、どこが悲しみを愬えるかを知っている。知悉しているものすべてが、おぼろに微光を放って、聰子の體を着物の上からも窺わせるのだが、今、心なしか聰子が袂でいたわっている腹のあたりにだけは、彼のよくは知らぬものが芽生えている。十九歳の清顯には、子供というものへの想像力が缺けていた。それは暗い熱い血と肉にひしと包まれた形而上的な何かだった。
(三島由紀夫「春の雪」)
油彩 キャンバス
116,7cm×91,0cm
2013年
大正時代の貴族社会を背景に、年上の女性と侯爵家の若き嗣子との悲劇的な恋の経緯を描いた恋愛小説がモチーフです。
背景の鳥は貴族社会、画面左で血の涙を流している鳥は、侯爵家の若者です。女性の腹部には矢が向けられています。
第80回記念旺玄展に入選した作品です。
published : 2014/05/30