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想創形造家

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文学・文芸 > その他

君に贈る言葉

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君に贈る言葉

by CANBEESANTA

  • iコンセプト

    『きっと天使は舞い堕ちて来る』

    君の誕生を祝して贈る言葉

  • iコメント

     誕生日おめでとう。8月19日(水)の朝、君の人生パズルに大事なピースが置かれたね。それはパパと君とを繋ぐ線の先を描いていくだろう。

    『きっと天使は舞い堕ちて来る』そんな題名の絵。身体のあちこちを破壊され乾からび、目玉が飛び出し、骨と肉塊が継ぎ接ぎだらけの性別不能の天使像だ。濃紺と緋色に分断された背景に見える形はその頃に起きた争いの地の国境線。水彩の擦れた色とりどりの文字はありとあらゆる神仏の名前だ。 画家になりそこねたパパの思い出のピース。その天使の脚のあいだに浮かぶブッダの周りに君の誕生の記録と名前を添えておいた。君の名前は大天使=ガブリエルからもらったものだ。君が君であることに必要な名前=君と世界を繋ぐ君のパズルの最初のピースになるものだ。

    『大きな古時計』君の生まれた頃流行っていたパパの十八番の子守唄代わりの唄だ。その頃のパパときたら、追いかけてくる日常とせめぎ合う願いのあいだで右に左に行ったり来たり、とても大きな振り子にぶら下がって落ち着けない時間を刻んでいた。 パパの半分に満たない君をいつも抱えてその振り子を止めて心の均衡を保っていたんだ。自分らしさを見失わないようにパパの苛立ちを止めてくれたのは君だ。永遠が小さなお尻をゆりかごに乗せているみたいだった。

     天使の像らしくない絵の醜悪さは目を覆ってはいけないこの世界の一面だ。どんな宗教も主義や倫理も平和を願いながら争いをなくすことも出来ない。いろんな場所で新たな貧困と欲望が生れ、廃墟と死者の山は築かれる。殺生のない生はなく死のないところに再生はない。そんな世界を見渡す愛と希望と感謝を持ち続けることが生きてゆくということに他ならない。大事なのは信じること。見えなくても出来なくてもすべてのことは信じることから生まれる。君の周りのすべてが君がいるからこそあることを忘れないように。そしていちばんたいせつなことはすべて君自身の中にある。君は君の信じる君であり続けてほしい。月が月であるように太陽が太陽であり続けるように君は君の光で君の周りを照らして下さい。君はパパの光でもあるから。

     一歳の誕生日にローストチキンを片手に握りしめ、歯のない口でなんとか齧りつこうとしていた君。公園の芝生に足をとられ転んで顔じゅう芝生だらけにして笑っていた君。両手をひろげて風を切りながらパパに向かってきた君。ジャガイモをガガイモと発音していた君は、今はもうパパの記憶の中にいるだけ。君が癇癪をおこして泣き続けるときはいつも古くて新しいこの子守唄をハミングしていたんだ。90年前と同じように嬉しいことも悲しいことも想い出になるだけ。 君の心がつぶれそうになったときはこの唄がきっと君を癒してくれるだろう。

     祝祭の日に降り注ぐ光に天使の影は見えなくていい。悲しいかな、世界は混沌にみちているし、問題が過去のもとのなるたびに新たな心配事が付け加わる。君は昨日起こってしまったことより今なにをすればいいかについて、君が今生きていることの意味を問い続けてほしい。 人生は欠けたピースを探し続けることだ。どんなに手を伸ばしても届かないこともある。答えはどこにもない。そんなときはたくさんの涙を流せばいい。それからひとつづつ今あるものを数えてほしい。君の中にあり、すべての人が手にできないものがたくさんあることに気づくはずだ。お金で手に入れることの出来ないものが増えれば増えるほど君の人生は豊かになり、優しいものになる。ときに道徳、規範や通念から逸脱した悪意に満ちた誘惑や蛮行がもたらされることもあるが、君の正直さがそれらから君自身を守ってくれるだろう。疲れ果てて涙も涸れてしまったときに宿る微かな光を消さないように。「悲嘆に暮れる人々にこそ祝福あれ」そんな願いを込めた天使像だ。暗闇のなかで天使に光をあてれば、君を少しだけ癒す秘密を発見できるだろう。

     君が生まれ持ったものが少しづつ決められた数を減らしながら君の成長を待っていた。今朝それが最初のひとつを作り終えないまま外界へ出てきた。君の中に限りある誕生を待つものがある。パパの手持ちのピースも多くない。未完のままパズルが完成され、いつ君に鐘の音を聞かせ天国へ昇れるかもわからない。でも大丈夫。君はもうパパがいなくても平気さ。時計がとまっても、時が歩みを止めないことを知っているし、世界と繋がった君が次に描く線もやがてはっきりとした形として見えてくるだろうから。そして天使はきっと君の上に舞い堕ちて来るだろう。

     君の誕生の日に寄せて

      パパより

  • iライセンス

    表示-非営利-改変禁止

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君に贈る言葉

by CANBEESANTA

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    『きっと天使は舞い堕ちて来る』

    君の誕生を祝して贈る言葉

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     誕生日おめでとう。8月19日(水)の朝、君の人生パズルに大事なピースが置かれたね。それはパパと君とを繋ぐ線の先を描いていくだろう。

    『きっと天使は舞い堕ちて来る』そんな題名の絵。身体のあちこちを破壊され乾からび、目玉が飛び出し、骨と肉塊が継ぎ接ぎだらけの性別不能の天使像だ。濃紺と緋色に分断された背景に見える形はその頃に起きた争いの地の国境線。水彩の擦れた色とりどりの文字はありとあらゆる神仏の名前だ。 画家になりそこねたパパの思い出のピース。その天使の脚のあいだに浮かぶブッダの周りに君の誕生の記録と名前を添えておいた。君の名前は大天使=ガブリエルからもらったものだ。君が君であることに必要な名前=君と世界を繋ぐ君のパズルの最初のピースになるものだ。

    『大きな古時計』君の生まれた頃流行っていたパパの十八番の子守唄代わりの唄だ。その頃のパパときたら、追いかけてくる日常とせめぎ合う願いのあいだで右に左に行ったり来たり、とても大きな振り子にぶら下がって落ち着けない時間を刻んでいた。 パパの半分に満たない君をいつも抱えてその振り子を止めて心の均衡を保っていたんだ。自分らしさを見失わないようにパパの苛立ちを止めてくれたのは君だ。永遠が小さなお尻をゆりかごに乗せているみたいだった。

     天使の像らしくない絵の醜悪さは目を覆ってはいけないこの世界の一面だ。どんな宗教も主義や倫理も平和を願いながら争いをなくすことも出来ない。いろんな場所で新たな貧困と欲望が生れ、廃墟と死者の山は築かれる。殺生のない生はなく死のないところに再生はない。そんな世界を見渡す愛と希望と感謝を持ち続けることが生きてゆくということに他ならない。大事なのは信じること。見えなくても出来なくてもすべてのことは信じることから生まれる。君の周りのすべてが君がいるからこそあることを忘れないように。そしていちばんたいせつなことはすべて君自身の中にある。君は君の信じる君であり続けてほしい。月が月であるように太陽が太陽であり続けるように君は君の光で君の周りを照らして下さい。君はパパの光でもあるから。

     一歳の誕生日にローストチキンを片手に握りしめ、歯のない口でなんとか齧りつこうとしていた君。公園の芝生に足をとられ転んで顔じゅう芝生だらけにして笑っていた君。両手をひろげて風を切りながらパパに向かってきた君。ジャガイモをガガイモと発音していた君は、今はもうパパの記憶の中にいるだけ。君が癇癪をおこして泣き続けるときはいつも古くて新しいこの子守唄をハミングしていたんだ。90年前と同じように嬉しいことも悲しいことも想い出になるだけ。 君の心がつぶれそうになったときはこの唄がきっと君を癒してくれるだろう。

     祝祭の日に降り注ぐ光に天使の影は見えなくていい。悲しいかな、世界は混沌にみちているし、問題が過去のもとのなるたびに新たな心配事が付け加わる。君は昨日起こってしまったことより今なにをすればいいかについて、君が今生きていることの意味を問い続けてほしい。 人生は欠けたピースを探し続けることだ。どんなに手を伸ばしても届かないこともある。答えはどこにもない。そんなときはたくさんの涙を流せばいい。それからひとつづつ今あるものを数えてほしい。君の中にあり、すべての人が手にできないものがたくさんあることに気づくはずだ。お金で手に入れることの出来ないものが増えれば増えるほど君の人生は豊かになり、優しいものになる。ときに道徳、規範や通念から逸脱した悪意に満ちた誘惑や蛮行がもたらされることもあるが、君の正直さがそれらから君自身を守ってくれるだろう。疲れ果てて涙も涸れてしまったときに宿る微かな光を消さないように。「悲嘆に暮れる人々にこそ祝福あれ」そんな願いを込めた天使像だ。暗闇のなかで天使に光をあてれば、君を少しだけ癒す秘密を発見できるだろう。

     君が生まれ持ったものが少しづつ決められた数を減らしながら君の成長を待っていた。今朝それが最初のひとつを作り終えないまま外界へ出てきた。君の中に限りある誕生を待つものがある。パパの手持ちのピースも多くない。未完のままパズルが完成され、いつ君に鐘の音を聞かせ天国へ昇れるかもわからない。でも大丈夫。君はもうパパがいなくても平気さ。時計がとまっても、時が歩みを止めないことを知っているし、世界と繋がった君が次に描く線もやがてはっきりとした形として見えてくるだろうから。そして天使はきっと君の上に舞い堕ちて来るだろう。

     君の誕生の日に寄せて

      パパより

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published : 2014/09/15

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