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Comment数年前に描いた昔ばなしですが、今のサイズに変えて公開していただきました●^^●
長く行方不明だった瓜子姫のその後の物語りが見つかったので
投稿します(*´▽`*)
その後の瓜子姫とあまのじゃくの物語り
瓜子姫サイド
ーあの時、初めて恋に落ちた
アマノジャクに柿の木に吊るされて
苦しくて
もうだめだと思った
冷たいものが唇にふれ
のどをうるおし
ぼんやりとかすんだ意識が浮上する
(私、生きてる?)
最初に目に入ったのは青い空と優しい瞳の青年
「瓜子姫、大丈夫ですか?」
水を差し出す彼に胸が熱くなる
「瓜子姫!」おばあさんに抱きしめられ
青年の姿が隠れてしまい思わず手を伸ばすけれど
「待て!」叫び声にさえぎられて空しく中を泳ぐ
ドタバタと荒々しい足音が響き
青年もそちらへ向かってしまう
その背中を目で追いながら
心が絶望で真っ黒に染まる
あの人は侍の格好をしていた、ということは
これから嫁ぐ殿様の従者だろう
でも私はあの人に
生まれて初めての恋をしてしまった
それはなんと残酷なことだろう
決してかなわぬ恋なのに
ーおじいさんとおばあさんに愛され従順に育った瓜子姫は
流されるままに殿様に嫁ごうとしていた
今までの自分は従順な人形と同じだったと
初めての恋に気が付かされたー
「その子を殺してはいけない」
凛とした青年の声が聞こえる
その時初めて姫はみんなが追っていたのが
自分をだまして柿の木に吊るしたアマノジャクだと知る
「殿、しかしこいつは瓜子姫に化けた邪悪な鬼ですよ!」
(殿?)
「この子は女の子だ、鬼じゃない」
ブルブル震えるアマノジャクは女の子の姿には見えなかったけれど
彼にそういわれて
アマノジャクをもう一度よく見ると
ボロボロの着物で震えるか弱い女の子の姿が
今の姿と2重に見えた
あれからひと月
瓜子姫は無事に殿の元に嫁いできて
落ち着いた暮らしをしていた
風が吹き抜けていく部屋は
殿の好みで開け放たれているから
「元気にしているかしら」
自分をだましたアマノジャクのことが思い出されてならない
あれはもう一人の自分という気がした
おじいさんとおばあさんに
拾われないで育った場合のもう一人の自分だと
そんな気がしてならなかった
「会いに行きましょうか?」
殿が気持ちを察したように優しく微笑む
軽装に着替え二人は里村へおりた
自由が好きな殿はこんな風に
今までもお忍びで里山を気軽に散歩していたという
あの日も侍に変装して妻を迎えに従者の列に混ざっていたと
いたずらな口調で言った
「大切な人を他人に任せられないからね」
あの初恋の侍が殿だったと知った幸せを
一生忘れないと瓜子姫は思った
アマノジャクサイド
(知らない)
知らないからただ黙り込む
それ以外どうすればいいかわからない
おばあさんが優しくしてくれる
おじいさんも優しくしてくれる
自分はこの温かいものを知らない
記憶の底にある幼いころから
人に憎まれ追われてきた
自分が異形だからだとやがて知った
自分を守るため恐ろしい姿に身を変えて
憎まれ憎み生きてきた
だからこそ
自分と同じ異形の生まれ
瓜から生まれた少女のうわさを聞いて
「誰からも愛され都の殿に嫁ぐ恵まれた少女」に
自分がなり替わってやろうと思った
あの日殺されそうになった自分は
助けられ
おじいさんとおばあさんに引き取られた
恐ろしい姿は
やがて異形の少女の姿に戻る
赤い赤い目を
おばあさんはきれいだと言ってくれる
憎まれることしか知らなかった
温かいものを自分は知らない
優しくされたときどうすればいいかを
知らない
あふれた温かいものが
いつまでも頬を流れ落ち
優しい風が吹き抜けていった
お終い
福娘童話集様昔話「瓜子姫」+その後の瓜子姫とあまのじゃく
by ゆめみ愛
数年前に描いた昔ばなしですが、今のサイズに変えて公開していただきました●^^●
長く行方不明だった瓜子姫のその後の物語りが見つかったので
投稿します(*´▽`*)
その後の瓜子姫とあまのじゃくの物語り
瓜子姫サイド
ーあの時、初めて恋に落ちた
アマノジャクに柿の木に吊るされて
苦しくて
もうだめだと思った
冷たいものが唇にふれ
のどをうるおし
ぼんやりとかすんだ意識が浮上する
(私、生きてる?)
最初に目に入ったのは青い空と優しい瞳の青年
「瓜子姫、大丈夫ですか?」
水を差し出す彼に胸が熱くなる
「瓜子姫!」おばあさんに抱きしめられ
青年の姿が隠れてしまい思わず手を伸ばすけれど
「待て!」叫び声にさえぎられて空しく中を泳ぐ
ドタバタと荒々しい足音が響き
青年もそちらへ向かってしまう
その背中を目で追いながら
心が絶望で真っ黒に染まる
あの人は侍の格好をしていた、ということは
これから嫁ぐ殿様の従者だろう
でも私はあの人に
生まれて初めての恋をしてしまった
それはなんと残酷なことだろう
決してかなわぬ恋なのに
ーおじいさんとおばあさんに愛され従順に育った瓜子姫は
流されるままに殿様に嫁ごうとしていた
今までの自分は従順な人形と同じだったと
初めての恋に気が付かされたー
「その子を殺してはいけない」
凛とした青年の声が聞こえる
その時初めて姫はみんなが追っていたのが
自分をだまして柿の木に吊るしたアマノジャクだと知る
「殿、しかしこいつは瓜子姫に化けた邪悪な鬼ですよ!」
(殿?)
「この子は女の子だ、鬼じゃない」
ブルブル震えるアマノジャクは女の子の姿には見えなかったけれど
彼にそういわれて
アマノジャクをもう一度よく見ると
ボロボロの着物で震えるか弱い女の子の姿が
今の姿と2重に見えた
あれからひと月
瓜子姫は無事に殿の元に嫁いできて
落ち着いた暮らしをしていた
風が吹き抜けていく部屋は
殿の好みで開け放たれているから
「元気にしているかしら」
自分をだましたアマノジャクのことが思い出されてならない
あれはもう一人の自分という気がした
おじいさんとおばあさんに
拾われないで育った場合のもう一人の自分だと
そんな気がしてならなかった
「会いに行きましょうか?」
殿が気持ちを察したように優しく微笑む
軽装に着替え二人は里村へおりた
自由が好きな殿はこんな風に
今までもお忍びで里山を気軽に散歩していたという
あの日も侍に変装して妻を迎えに従者の列に混ざっていたと
いたずらな口調で言った
「大切な人を他人に任せられないからね」
あの初恋の侍が殿だったと知った幸せを
一生忘れないと瓜子姫は思った
アマノジャクサイド
(知らない)
知らないからただ黙り込む
それ以外どうすればいいかわからない
おばあさんが優しくしてくれる
おじいさんも優しくしてくれる
自分はこの温かいものを知らない
記憶の底にある幼いころから
人に憎まれ追われてきた
自分が異形だからだとやがて知った
自分を守るため恐ろしい姿に身を変えて
憎まれ憎み生きてきた
だからこそ
自分と同じ異形の生まれ
瓜から生まれた少女のうわさを聞いて
「誰からも愛され都の殿に嫁ぐ恵まれた少女」に
自分がなり替わってやろうと思った
あの日殺されそうになった自分は
助けられ
おじいさんとおばあさんに引き取られた
恐ろしい姿は
やがて異形の少女の姿に戻る
赤い赤い目を
おばあさんはきれいだと言ってくれる
憎まれることしか知らなかった
温かいものを自分は知らない
優しくされたときどうすればいいかを
知らない
あふれた温かいものが
いつまでも頬を流れ落ち
優しい風が吹き抜けていった
お終い
published : 2020/02/22